国連WFPの概要

[2022年6月24日更新]
国連WFPについて
国連WFPは、120以上の国と地域で1億1,550万人以上の人びとの生活を救い、変化をもたらすために活動しています。
紛争、干ばつ、洪水、地震、ハリケーン、不作、さらには現在世界的に発生している新型コロナウイルスの世界的大流行など、緊急時には真っ先に現場に駆けつけ、食料やその他の支援を行います。
同時に、持続可能な開発にも焦点を当て、長期的な食料の確保/入手を管理するための支援とスキルを各国政府に提供しています。
ノーベル平和賞
2020年10月に国連WFPがノーベル平和賞を受賞したことは、飢餓をなくすためには平和が重要な役割を果たしていること、そして食料こそが平和を実現するツールであるという国連WFPの主張が評価されたものです。
紛争と不安は、飢餓の主要な要因です。国連WFPが支援している人びとの多くは、紛争を逃れ、土地や家、仕事を放棄せざるを得ない状況にあります。
今回の受賞により、国連WFPは世界の8億人以上の飢餓人口に対してより強い励ましの声を届け、彼らが必要としている食料支援を行う機会を増やすことができます。
基本データ
- 国連WFPの資金はすべて自発的な寄付によって賄われており、2021年には96億米ドルが集まりましたが、それでも必要額には52億米ドル足りません。
- 国連WFPが支援した人々のうち50%は女性や女の子です。
- 国連WFPには21,800人以上のスタッフが勤務しており、そのうち87%以上が現場で働いています。
世界の飢餓
すべての人が食べられるだけの食料が生産されているこの世界で、世界人口の約10%にあたる8億1,100万人もの人びとが毎晩空腹のまま眠りについています。
紛争と気候変動という2つの災厄に見舞われ、さらに新型コロナウイルスの世界的大流行によって、この10年近くの間に飢餓に苦しむ人びとの数は徐々に増加しています。
一方で、食料価格の高騰も起きています。2022年初頭、国連WFPが支払う食料の価格は2019年に比べて30%上昇し、配送にかかるコストも月4,200万米ドル増加しました。
その後、ウクライナで紛争が勃発。現在、国連WFPは2019年よりも1カ月あたり7,360万米ドル、実に44%増の活動費の上昇に直面しています。
栄養不足の人びとの数が最も多いのはアジアで4億1,800万人ですが、割合で見るとアフリカが最も多く、21%となっています。
これは、最新の「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると、アジアやラテンアメリカ・カリブ海諸国の2倍以上の割合です。

飢きんの脅威
2022年、飢きん宣言の一歩手前である食料不安の「緊急」段階にある人は、45の国に5,000万人いると言われています。
現在、最大の脅威に直面しているのはイエメン、南スーダン、エチオピア北部、ナイジェリアです。また、アフガニスタンでは今後数ヶ月の間に危機的な食料不足に陥る人が過去最高となり、一部の人びとが飢餓で死亡する深刻なリスクに直面する見通しが出ています。
国連WFPは、飢きんを回避するため、おもに救命のための食料・栄養支援を行うための資金を緊急に必要としています。このような飢餓に対するニーズが高まっているにもかかわらず私たちが行動を起こさなければ、さらに多くの命を失うことになるでしょう。
飢饉の予防についてこちらもご覧ください。
国連WFPのコア・テーマ―緊急対応*と備え
国連WFPは、紛争、気候変動、パンデミック、その他の災害による緊急事態において最前線で活動する機関です。
また、国連WFPは物流クラスターと緊急通信クラスターの主導機関として、幅広い人道コミュニティを代表して大規模な緊急事態への対応を調整しています。
さらに、緊急事態への備えにも力を入れており、パートナーと協力して早期に警告を発信し、迫り来る災害の影響を軽減するためにコミュニティを支援しています。
国連WFPは1日に最大で5,600台のトラック、30隻の船、100機の飛行機を動かし、食料やその他の支援を届けています。
(*以下の「近年の緊急事態」の項も参照してください。)

気候変動
干ばつや洪水などの気候による影響は、農作物を枯らし、市場を混乱させ、道路や橋を破壊します。
国連WFPは各国政府や人道支援団体と協力して、増え続ける災害に最前線で対応しています。同時に、人道支援を必要とする人びとの数を減らすための措置を講じています。
国連WFPは、「予測型現金支援」を展開し、弱い立場に置かれた家庭に現金を提供することで、気候災害に先立ち、食料の購入や家の補強など、困難に立ち向かう回復力を高めるための対策を講じる手助けをします。この手法は、2019年7月にバングラデシュで発生した集中豪雨の前に活用されました。
- 2021年は、47カ国1,220万人が国連WFPの気候リスク管理ソリューションを受け、そのうち14カ国270万人が気候保険によって保護されました。
母子栄養支援
持続可能な開発をするには、栄養不良が根絶され、将来の世代が活躍できるコミュニティの存在が必要不可欠です。
国連WFPは近年、緊急支援をはじめ、ビタミンやミネラルの欠乏、体重過多や肥満を含むあらゆる形態の栄養不良に対処することに焦点を当てています。
妊娠から2歳の誕生日までの1,000日間を対象としたプログラムを通じて、栄養不良の初期の段階から取り組みを行っています。幼い子ども、妊娠中・授乳中の女性、HIV感染者を対象に、健康的な食事を提供しています。
- 2021年は2,350万人(主に子どもや妊娠中・授乳中の女性、女の子)が栄養失調の治療や予防のための国連WFPの支援プログラムを利用しました。これは、2020年に比べて36%大きい数値です。
学校給食
国連WFPは、学校給食を実施している最大の人道支援組織です。
学校給食は、子どもたちの栄養状態や健康状態を改善するとともに、子どもたちの人生を変える可能性のある教育を受ける機会を増やします。
さらに、学校給食は地元の食材を使って作られるため、何百万人もの小規模農家から食料を調達し、彼らの収入を増やし、地域経済を活性化しています。
国連WFPとユニセフは、何百万人もの弱い立場にある子どもたちのために、力を合わせ新たなプロジェクトを開始しています。
このプロジェクトでは、学校給食、栄養、虫下し、水・衛生などを取り入れた、学童の栄養と健康のための統合的なアプローチを採用する政府の支援に焦点を当てます。
- 2021年、新型コロナウイルスの世界的大流行により就学が大きく乱れたにもかかわらず、国連WFPは1,550万人の子どもたちに栄養のある食事、学校給食・持ち帰り給食を提供しました。

小規模農家
世界の食料のほとんどを生産する小規模農家は、飢餓ゼロの世界を実現するために不可欠な存在です。
国連WFPの農家支援は、ビジネススキルのトレーニングから市場への道を開くところまで、持続可能な食料システムを構築するためのさまざまな活動を行っています。
- 国連WFPとパートナーは2021年、44カ国 947,000人以上の小規模農家を支援しました。
- 国連WFPは2021年に27カ国の小規模農家から117,000トン(5,190万米ドル相当)の食料を調達し、彼らの生活に貢献しました。
自立支援
国連WFPの「労働の対価としての食料支援」プログラムは、長期的な食料の確保/入手の見通しを改善するとともに、平和にむけた環境を整えるのに役立ちます。
このプログラムでは、人びとが食料や現金を受け取り、当面の食料需要を満たすことで、気候変動への耐性を高めたり、市場へのアクセスを向上させたりするためのコミュニティの資産や生計手段を獲得するまでの時間を確保します。
- 2021年の「コミュニティ基盤構築のための食料支援」プログラムを通じて、870万人に食料支援を行いました。

現金支援
国連WFPは、人道支援団体の中で最大の現金支援組織です。
現金は、支援する人と受け取る人両者にとってより良い価値を提供します。支援を受け取る人にとっては食料の選択肢と食生活の多様性が増し、さらに地元の小規模企業の生産、小売、金融部門を活性化させます。
2021年には、現金、バリューバウチャー、コモディティバウチャーを通じて、23億米ドルが4,180万人に送金されました。
能力開発
国連WFPは、その国別戦略計画を通じて、国の政策やプログラムを維持するために極めて重要な役割を担う、官・民・市民社会のさまざまな関係者に、国連WFPのスキルや知識を伝えています。
国連WFPは、災害リスクを管理し、食料の確保/入手を向上させるため、政府や他のパートナーの能力を高めるとともに、気候やその他の脅威に対する早期警報・準備システムにも投資しています。
- 国連WFPは、エチオピアの政府職員を対象に、洪水リスクゾーンのマッピングや災害後の作物の被害状況の把握などにドローンを活用するためのトレーニングを行っており、国連WFPの支援がなくてもドローンを活用できるよう職員の能力開発をサポートしています。
- バングラデシュでは、NGO「身体的弱者のための社会的支援とリハビリテーション」のスタッフに、コミュニティベースの栄養プロジェクトを実施するためのトレーニングを行いました。
デジタルイノベーション
国連WFPのデジタルトランスフォーメーションとは、2030年までに飢餓をゼロにするという目標を実現するために、新しいテクノロジーやデータを取り入れることです。
ミュンヘンを拠点とする国連WFPのイノベーション・アクセラレーターは、飢餓を根絶するための新しいソリューションを試験的に導入し、有望なイノベーションを拡大するために2015年に発足しました。わずか 5 年間で、世界中の 80 を超えるプロジェクトをサポートし、14 のイノベーションが拡大して 370 万人に到達しました。
- ヨルダンでは、ブロックチェーン技術を導入し、10万人以上のシリア難民が、現金や紙の伝票、クレジットカードの代わりに虹彩認証を使って地元の店で食料品を購入できるようにしました。
- H2Growは、飢餓に脅かされている人びとが、土の代わりに塩分を含んだ水溶液を使って、過酷な環境下で自分の食べ物を育てることを可能にするイノベーションで、世界7カ国で展開されています。アルジェリアの砂漠では、200台以上の水耕栽培ユニットが動物の飼料を生産し、ヤギのミルクや肉の生産量を増やしています。これにより、何千人ものサハラ砂漠の難民の食料の確保/入手が向上しています。
近年の緊急事態
ウクライナ
国連WFPは、ウクライナ国内および近隣諸国の紛争から逃れてきた人々に食料支援を行うための緊急支援を開始しました。ウクライナ国内において最大310万人を支援する予定です。
国連WFPは、ウクライナ国内への食料支援物資の配送と、国境を越えてやってくる難民を支援するため、近隣諸国の多くの地域でオペレーションと支援拠点を立ち上げています。
また、国連WFPは、物流クラスターと緊急通信クラスター主導国連機関としても活動しています。
アフガニスタン
アフガニスタンは世界最大の人道危機となりつつあり、人口の半分以上にあたる2280万人が深刻な食料不足に直面しています。そのうち870万人は、緊急事態レベルの食料不足に陥っています。
ただでさえ厳しい状況に、干ばつ、増加し続ける避難民、公共サービスの崩壊、深刻化する経済危機が追い打ちをかけ、事態はさらに悪化しています。
国連WFPは2022年に2,400万人に食料を届けることを目標としていますが、そのためには26億米ドルが必要となります。
エチオピア北部
1年以上にわたる紛争により、エチオピア北部の人々はより深刻な飢餓状態に追い込まれています。ティグライ地方の食料安全保障は危機の始まり以来急落し、現在ティグライ地方の人口の約40%(200万人)が深刻な食料不足に陥っています。
国連WFPは2021年3月以降、エチオピア北部全体で約400万人に食料・栄養支援を行っています。
イエメン
国連WFPは資金の不足により、800万人分の食料配給量の削減を余儀なくされています。
イエメンでは、戦闘の激化に加え、経済の悪化が続いており、削減のタイミングとしては最悪の状況です。
国連WFPの食料支援はイエメンの家庭にとって生命線であり、過去数年間はなんとか飢きんを食い止めることができています。
しかし、今すぐに寄付が集まらなければ、国連WFPの活動をさらに大幅に縮小する必要があり、援助を受けられない家庭が発生する恐れがあります。
イエメンへの緊急支援についてはこちらをご覧ください。
南スーダン
南スーダンは、10年前に独立を宣言して以来、最高レベルの食料不安に直面しており、人口の60%が飢餓に苦しんでいます。
慢性的な暴力、異常気象、新型コロナウイルスによる経済的影響により、724万人が深刻な状態に陥っています。
南スーダンへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。
ナイジェリア北東部
ナイジェリア北東部では深刻な飢餓が続いています。
特に紛争の影響を受けているボルノ州、アダマワ州、ヨーベ州では240万人が食料不足に苦しみ、緊急支援を必要としています。
国連WFPはパートナーと協力し、170万人に救命のための食料・栄養支援を行っています。
ナイジェリアへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。
シリア
紛争、避難民の発生、深刻な景気後退、シリア・ポンドの価値の下落といった複数の要因が、以前にも増して多くのシリア人を貧困と食料不安に陥れています。
次の食事の当てがない人が合計1,240万人おり、紛争が始まって以来、最悪の食料不安の状況を表しています。
そのような状況の中、国連WFPは資金不足のため、各家庭に配給する月々の支援食料の削減を余儀なくされています。
シリアへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。

コンゴ民主共和国
コンゴ民主共和国では、長引く紛争や避難民の増加、病気、自然災害などにより、2,700万もの人びとが深刻な食料不足に陥っており、ニーズはますます高まっています。
これは、世界のどの国よりも高い数値です。コンゴ民主共和国の550万の国内避難民はアフリカで最も多い数であり、近隣諸国からも50万人の難民が流入しています。
衛生環境や医療環境の整っていない都市部の混雑した居住区やホストファミリーに押し込められた状態で暮らしており、毎日の食事の確保にも苦労しています。
国連WFPは、この状況に対し食料・栄養・現金支援を行っています。
コンゴ民主共和国への緊急支援についてはこちらもご覧ください。
サヘル地域
この地域では、紛争や気候変動のショック、新型コロナウイルスの影響や食料価格の高騰により、何百万人もの人々が深刻な食料危機に瀕しています。
ブルキナファソ、チャド、マリ、モーリタニア、ニジェールの5カ国では、110万人が飢きんに瀕しているほか、1050万人以上が危険なレベルの飢餓に直面しています。
国連WFPは、このような困難に直面しているサヘル地域の数百万人の人々の命綱となり、コミュニティの成長と繁栄に貢献しています。
サヘル地域への緊急支援についてはこちらもご覧ください。
キャンペーン
#StopTheWaste
#StopTheWasteは、食品ロスの世界的な問題と、それを防ぐために私たちができる簡単な解決策に焦点を当てた、変革のためのムーブメントです。世界では、人間が消費するために生産される食料の3分の1が失われ、無駄になっており、その量は年間約13億トンに上ります。食料の浪費による経済的コストは、毎年約1兆ドルに上ります。2030年までに飢餓をゼロにすることを目指している私たちにとって、これは明らかに解決しなければならない課題です。
2021年の資金調達
拠出金額の合計: 96億米ドル(過去最高)
必要な予算総額: 148億米ドル
国連人道支援航空サービス(UNHAS)
国連WFPアビエーションは、国連が定めた唯一の航空輸送サービスである国連人道支援航空サービス(UNHAS)を運営しています。
このサービスは、人道支援・開発コミュニティを、必要としている人びとに結びつけ、地球上で最も離れた危険な場所にも到達します。
また、治安の悪化や道路などのインフラの損傷により他の輸送手段が使えない場合や、他の民間航空会社が運航できないような場所でも、途切れることなく物資を届けることができます。
UNHASは、2020年に危機や緊急事態に直面している23カ国において、100機以上の航空機を運航し、400の定期的な目的地にサービスを提供しました。
同サービスは、医療避難サービスの提供、医療貨物やスタッフの輸送など、新型コロナウイルスへの世界的な対応をサポートしました。