パレスチナ危機が続く中、忘れ去られようとしている緊急事態:飢餓ホットスポット報告書が警告
最新の「Hunger Hotspots(飢餓ホットスポット)」報告書は、世界がイスラエルとパレスチナの紛争に注目をしている間に、見落とされてしまう危険性のある重要な緊急事態について警鐘を鳴らしています。
レポートでは「最も警戒レベルの高い」カテゴリーに追加されたパレスチナに加え、食料安全保障の深刻な悪化と飢餓の可能性が最も高い国として、ブルキナファソ、マリ、南スーダン、およびスーダンが挙げられています。
国連世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)が共同で発表した報告書によると、22の国や地域からなる18の飢餓ホットスポットにおいて、緊急人道支援が必要とされています。
「悲痛な事実を明らかに」
「今回のレポートで挙げられた国々のリスクは憂慮すべきものです。これ以上の人命の損失を防ぐために迅速に行動しなければ、何が起こるかという悲痛な事実を明らかにしています」と国連WFPのパク・キョンナム緊急事態局長は話します。「これまで以上に、食料安全保障の悪化を防ぐためには、緊急対応と備えの両方が不可欠です。」
報告書は、紛争の急激な激化により、2023年11月から2024年4月までの期間中に、パレスチナで深刻な食料不安が悪化する可能性が高いと警告しています。主な勧告として、国際連合事務総長による停戦の嘆願と、ガザ地区への支援物資の輸送を促進するためのアクセスを支持しています。
5月に発表された前回の報告書では、パレスチナにおける紛争のように、さまざまな紛争で民間人を標的にする傾向が強まり、そのような戦術をとる主体が増えているとの警告がありました。紛争は世界的な飢餓の主な要因のひとつです。ブルキナファソ、マリやニジェールでのクーデターから、チャドなどの近隣諸国に影響を及ぼすスーダンでの紛争まで、サヘル地域では不安定性と暴力が急増し続けています。2023年7月から9月にかけて、サヘル地域は紛争による世界の死者数の22%を占めました。
スーダンにおける人口移動は憂慮すべきレベルで続いてる
スーダンにおける人口移動の規模とペースは憂慮すべきレベルで続いており、現地の食料生産とアクセスを混乱させ、2023年9月中旬の時点で約560万人に影響を及ぼしています。このうち120万人は国境を越えて近隣諸国に余儀なく避難しており、その数は4カ月間で約6倍に増加しています。報告書の提言には、命を救うための食料支援と栄養支援の提供を増やすこと、緊急人道支援を必要としているスーダンの人びとへのアクセスを改善する努力を続けることが含まれていました。
南スーダンでは、不十分な農作物生産、高い主食価格、スーダンからの帰還民の増加を支える資源の不足が、危機的な食料不安の継続につながると予想されています。
アフガニスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、ハイチ、パキスタン、ソマリア、シリア・アラブ共和国、およびイエメンの8カ国は非常に高い懸念のある国として強調されています。 これらはすべて、危機的な急性食料に直面している、あるいは直面すると予測されている人びとの数が多い国です。紛争、気候関連の災害や経済不振など、国によって異なる要因が、今後数ヶ月の間に生命を脅かす状況を激化させると予想されています。
非常に懸念の高い飢餓ホットスポットでは、資金不足による強制的な支援削減が食料不安の状況を悪化させています。たとえばアフガニスタンでは、大規模な資金不足のため、1000万人の人びとへの支援を削減せざるを得なくなりました。ハイチ、パレスチナ、ソマリア、シリア・アラブ共和国、イエメンなども支援削減の影響を受けています。
「何百万人もの人びとが飢餓に、そして餓死寸前にまで追い込まれる可能性があります」
「今回の歴史的な資金不足は、これから迫り来る危機に影響を与えることは避けられません。国連WFPや他の人道支援団体が必要な資金を受け取らなければ、何百万人もの人びとが飢餓に、そして餓死寸前にまで追い込まれる可能性があります。行動を起こさない代償は、最も脆弱な人びとにとって破滅的な結果となります。人びとが気候変動、紛争、経済的ショックによりよく備えられるよう、防災とレジリエンスの活動に投資することが今までになく重要です」とキョンナム緊急事態局長は続けます。
資金調達が遅れている一方で、COVID-19パンデミックの長引く影響や、ウクライナの戦争が世界のサプライチェーンや食料価格に及ぼす波及効果などの要因もあり、人道的ニーズは依然として高い状態です。
飢餓ホットスポットである中米のエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアの「ドライ・コリドー」地域やマラウイでは干ばつが予想され、エルニーニョの天候パターンによって大きな打撃を受けると予想されています。
「極端な気象事象や災害がますます蔓延し、深刻化している」
「極端な気象事象や災害がますます蔓延し、深刻化している中、気候関連の影響を受けるリスクの高い国を忘れてはなりません」とキョンナム緊急事態局長は言います。「現在予測されているエルニーニョの影響や、各地域で予測されるハリケーン、洪水、干ばつも含まれます。」
「気候関連の影響は予期せず、予測できないことが多いですが、報告書にある警告は、緊急事態への対応だけでなく、最終的に人命を救い、コストを抑える予測型対策のためにも利用できます」とキョンナム緊急事態局長は付け加えました。
緊急対応策に加え、報告書は、新たな人道的ニーズが顕在化する前に、短期的な防護策を講じるという、国連WFPの予測型対策の重要性を強調しています。たとえば「ドライ・コリドー」地域では、ハリケーンの接近をいち早く知らせる早期警戒メッセージの提供や、迅速な配送を可能にする物資の戦略的な配置などが挙げられます。
マラウイでは、種まき期に先立って干ばつに強い種子や密閉式の穀物貯蔵袋を配布しており、南スーダンでは、予測に基づく現金支援を実施し、洪水によって避難しなければならなくなった場合などに、家族への影響を軽減できるようにしました。
18 の飢餓ホットスポットすべてにおいて、今すぐに支援の拡大が必要です
2023年5月版の飢餓ホットスポット報告書以降、パレスチナに加え、チャド、ジブチ、ニジェール、およびジンバブエが飢餓ホットスポットの国・地域リストに追加されました。その要因には、紛争、食料価格の高騰や気候の影響などが含まれます。
人びとの生活を守り、食料へのアクセスを向上させるためには、18 の飢餓ホットスポットすべてにおいて、今すぐに支援の拡大が必要です。これは、安全で迅速な支援を妨げる地域の不安定性、官僚的な障害、アクセス上の制約などの課題があるにもかかわらず、急性食料不安と栄養不良のさらなる悪化を回避するためには極めて重要です。