国連WFPの概要
[日本語版更新:2023年1月19日]

国連WFPについて
国連WFPは、120以上の国と地域で1億4,000万人以上の人びとの生活を救い、変化をもたらすために活動しています。紛争、干ばつ、洪水、地震、ハリケーン、不作、さらには現在世界的に発生している新型コロナウイルスの世界的大流行など、緊急時には真っ先に現場に駆けつけ、食料やその他の支援を行います。同時に、持続可能な開発にも焦点を当て、長期的な食料の確保/入手を管理するための支援とスキルを各国政府に提供しています。
基本データ
- 国連WFPの資金はすべて自発的な寄付によって賄われており、2022年には、過去最高の140億米ドルが集まりました。
- 国連WFPが支援した人々のうち50%は女性や女の子です。
- 穀物や豆、油などの食料が1,000kgあれば、1日当たり約1660人を支援することが出来ます。これは、1日に必要なビタミンとミネラル、そして必要最低限の摂取カロリーである2,100キロカロリーを満たしています。
- 国連WFPには22,300人以上のスタッフが勤務しており、そのうち87%以上が現場で働いています。
世界の飢餓
世界人口の10%以上にあたる、最大で8億2,800万人もの人びとが毎晩空腹のまま眠りについています。急性食料不安は未だかつてないほど高まっており、2019年の1億3,500万人から、過去最高の3億4,900万人に増加しました。最も深刻な影響を受けている15カ国では、3,000万人以上の子どもたちが急性栄養不良に苦しんでいます。
紛争や経済への打撃、異常気象、肥料価格の高騰などの要因が組み合わさり、飢餓に苦しむ人びとの数は徐々に増加しています。新型コロナウイルスによる経済失速や、ウクライナ戦争により、物価は上昇し、世界中で多くの人々が食料を得ることが難しくなっています。同時に、肥料価格の高騰が、トウモロコシ、米、大豆、小麦の生産量の低下を招いています。
こうした価格の高騰は、WFPの活動にも影響を与えています。2022年初頭、国連WFPが支払う食料の価格は2019年に比べて30%上昇し、配送にかかるコストも月4,200万米ドル増加しました。
ウクライナでの紛争勃発以来、国連WFPは2019年よりも1カ月あたり7,360万米ドル、実に44%増の活動費の上昇に直面しています。
栄養不足の人びとの数が最も多いのはアジアで4億1,800万人ですが、割合で見るとアフリカが最も多く、21%となっています。
これは、最新の「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると、アジアやラテンアメリカ・カリブ海諸国の2倍以上の割合です。(併せてご覧ください:世界的な食料危機)

飢きんの脅威
2022年、飢きん宣言の一歩手前である食料不安の「緊急」段階にある人は、49の国に4,900万人いると言われています。
最新の「ハンガーホットスポット―FAO‐WFPの急性食料不安に対する早期警告」 によると、アフガニスタン、エチオピア、ソマリア、南スーダン、イエメンの97万の人々が、壊滅的な食料不安に現在陥っている、あるいは今後直面する可能性があります。これは、5年前と比較した際、10倍以上に上ります。更なる飢餓や死を防ぐためには、人道的な行動が極めて重要になります。
国連WFPは、飢きんを回避するため、おもに救命のための食料・栄養支援を行うための資金を緊急に必要としています。このような飢餓に対するニーズが高まっているにもかかわらず私たちが行動を起こさなければ、さらに多くの命を失うことになるでしょう。
ソマリアでは、今後数か月間の人道的な行動が飢きんを回避できるかどうかの鍵を握ります。エチオピア北部では、飢きん調査委員会(2021年7月)が、飢きんの危険性を軽減するために、人道支援が不可欠であると確認がなされました。国連WFPは、飢きんを防ぐため、上記の地域における食料支援、栄養支援の規模を拡大しています。
飢きんとの戦いについてはこちらもご覧ください。
国連WFPのコア・テーマ
緊急対応*と備え
国連WFPは、紛争、気候変動、パンデミック、その他の災害による緊急事態において最前線で活動する機関です。
また、国連WFPは物流クラスターと緊急通信クラスターの主導機関として、幅広い人道コミュニティを代表して大規模な緊急事態への対応を調整しています。
さらに、緊急事態への備えにも力を入れており、パートナーと協力して早期に警告を発信し、迫り来る災害の影響を軽減するためにコミュニティを支援しています。
国連WFPは1日に最大で5,600台のトラック、30隻の船、100機の飛行機を動かし、食料やその他の支援を届けています。
(*以下の「近年の緊急事態」の項も参照してください。)

気候変動
干ばつや洪水などの気候による影響は、農作物を枯らし、市場を混乱させ、道路や橋を破壊します。
国連WFPは各国政府や人道支援団体と協力して、増え続ける災害に最前線で対応しています。同時に、人道支援を必要とする人びとの数を減らすための措置を講じています。
国連WFPは、「予測型現金支援」を展開し、弱い立場に置かれた家庭に現金を提供することで、気候災害に先立ち、食料の購入や家の補強など、困難に立ち向かう回復力を高めるための対策を講じる手助けをします。この手法は、2019年7月にバングラデシュで発生した集中豪雨の前に活用されました。
- 2021年は、47カ国1,220万人が国連WFPの気候リスク管理ソリューションを受け、そのうち14カ国270万人が気候保険によって保護されました。
母子栄養支援
持続可能な開発をするには、栄養不良が根絶され、将来の世代が活躍できるコミュニティの存在が必要不可欠です。
国連WFPは近年、緊急支援をはじめ、ビタミンやミネラルの欠乏、体重過多や肥満を含むあらゆる形態の栄養不良に対処することに焦点を当てています。
妊娠から2歳の誕生日までの1,000日間を対象としたプログラムを通じて、栄養不良の初期の段階から取り組みを行っています。幼い子ども、妊娠中・授乳中の女性、HIV感染者を対象に、健康的な食事を提供しています。
- 2021年は2,350万人(主に子どもや妊娠中・授乳中の女性、女の子)が栄養失調の治療や予防のための国連WFPの支援プログラムを利用しました。これは、2020年に比べて36%大きい数値です。
学校給食
国連WFPは、学校給食を実施している最大の人道支援組織です。
学校給食は、子どもたちの栄養状態や健康状態を改善するとともに、子どもたちの人生を変える可能性のある教育を受ける機会を増やします。
さらに、学校給食は地元の食材を使って作られるため、何百万人もの小規模農家から食料を調達し、彼らの収入を増やし、地域経済を活性化しています。
国連WFPとユニセフは、何百万人もの弱い立場にある子どもたちのために、力を合わせ新たなプロジェクトを開始しています。
このプロジェクトでは、学校給食、栄養、虫下し、水・衛生などを取り入れた、学童の栄養と健康のための統合的なアプローチを採用する政府の支援に焦点を当てます。
- 国連WFPは、80か国以上で学校給食を支援しています。そのうち、50か国以上において、1,500万人の子供たちに学校給食や軽食を直接提供しています。

小規模農家
世界の食料のほとんどを生産する小規模農家は、飢餓ゼロの世界を実現するために不可欠な存在です。
国連WFPの農家支援は、ビジネススキルのトレーニングから市場への道を開くところまで、持続可能な食料システムを構築するためのさまざまな活動を行っています。
- 国連WFPとパートナーは2021年、44カ国947,000人以上の小規模農家を支援しました。
- 国連WFPは2021年に27カ国の小規模農家から117,000トン(5,190万米ドル相当)の食料を調達し、彼らの生活に貢献しました。
自立支援
国連WFPの「労働の対価としての食料支援」プログラムは、長期的な食料の確保/入手の見通しを改善するとともに、平和にむけた環境を整えるのに役立ちます。
このプログラムでは、人びとが食料や現金を受け取り、当面の食料需要を満たすことで、気候変動への耐性を高めたり、市場へのアクセスを向上させたりするためのコミュニティの資産や生計手段を獲得するまでの時間を確保します。
- 2021年の「コミュニティ基盤構築のための食料支援」プログラムを通じて、870万人に食料支援を行いました。

現金支援
国連WFPは、人道支援団体の中で最大の現金支援組織です。
現金は、支援する人と受け取る人両者にとってより良い価値を提供します。支援を受け取る人にとっては食料の選択肢と食生活の多様性が増し、さらに地元の小規模企業の生産、小売、金融部門を活性化させます。
2022年には、30米億ドル以上が、現金あるいはバウチャーの形で、72か国以上の人々に送金されました。
能力開発
国連WFPは、その国別戦略計画を通じて、国の政策やプログラムを維持するために極めて重要な役割を担う、官・民・市民社会のさまざまな関係者に、国連WFPのスキルや知識を伝えています。
国連WFPは、災害リスクを管理し、食料の確保/入手を向上させるため、政府や他のパートナーの能力を高めるとともに、気候やその他の脅威に対する早期警報・準備システムにも投資しています。
- 国連WFPは、エチオピアの政府職員を対象に、洪水リスクゾーンのマッピングや災害後の作物の被害状況の把握などにドローンを活用するためのトレーニングを行っており、国連WFPの支援がなくてもドローンを活用できるよう職員の能力開発をサポートしています。
- バングラデシュでは、NGO「身体的弱者のための社会的支援とリハビリテーション」のスタッフに、コミュニティベースの栄養プロジェクトを実施するためのトレーニングを行いました。
ノーベル平和賞
2020年10月に国連WFPがノーベル平和賞を受賞したことは、飢餓をなくすためには平和が重要な役割を果たしていること、そして食料こそが平和を実現するツールであるという国連WFPの主張が評価されたものです。
紛争と不安は、飢餓の主要な要因です。国連WFPが支援している人びとの多くは、紛争を逃れ、土地や家、仕事を放棄せざるを得ない状況にあります。
今回の受賞により、国連WFPは世界の8億人以上の飢餓人口に対してより強い励ましの声を届け、彼らが必要としている食料支援を行う機会を増やすことができます。
デジタルイノベーション
新しいテクノロジーとイノベーションは、2030年までに飢餓ゼロを達成するという国連WFPの活動の推進力となっています。
ミュンヘンを拠点とする国連WFPのイノベーション・アクセラレーターは、新しいアイデアを発掘し、プロジェクトを試験的に実施し、インパクトのあるイノベーションを拡大しています。国連WFPは、世界中の 100 を超えるプロジェクトをサポートし、現地の支援活動を通じて、16 のイノベーションが拡大しました。2021年には、67か国以上で、900万人がこうしたイノベーションによる支援を受けました。
- ヨルダン、バングラデシュでは、世界でも最大規模のブロックチェーン技術が導入されており、100万人もの人々が支援を受けました。
- H2Growは、砂漠や難民キャンプ、インフォーマルな都市居住区においても、安価で、新鮮な野菜の栽培や動物の飼料の生産を可能にする、水耕栽培のイノベーションです。21か国で展開されています。
- EMPACTは、デジタル技術の開発や、テクノロジー分野でのキャリア構築を潜在的に促進することで、避難民や食料不安を抱える若い世代を支援しています。2021年には、2万1,000以上の人々がトレーニングを受けました。
イノベーション・アクセラレーターは、国連WFPの国事務所、地域事務所と協力して、地域のイノベーションハブとなるユニットや、そのネットワークを世界中で構築しています。
近年の緊急事態
アフガニスタン
アフガニスタンは世界最大の人道危機となりつつあり、人口の半分近くにあたる1890万人が深刻な食料不足に直面しています。そのうち600万人は、緊急事態レベルの食料不足に陥っています。
ただでさえ厳しい状況に、干ばつ、増加し続ける避難民、公共サービスの崩壊、深刻化する経済危機が追い打ちをかけ、事態はさらに悪化しています。6月末に起こった地震によって、アフガニスタンへの支援の必要性は更に高まりました。国連WFPは2022年の冬に、1,800万人に食料を届けることを目標としています。冬の寒さが増す前に、緊急に食料を備蓄する必要があり、12月中に9億6,000万米ドルが必要となります。
アフガニスタンへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。
ブルキナファソ
ブルキナファソでは、政治等の不安定な情勢や、気候変動、食料価格高騰により、何百万人のもの人々が食料・栄養不足に陥るなど、多くの危機を迎えています。2022年のリーンシーズン(6月~8月)には、約350万人が食料不安に陥ると予想されました。COVID-19は、すでに脆弱な人々にさらに複雑な層を作り出しました。
コンゴ民主共和国
アフリカで2番目に国土の大きいコンゴ民主共和国では、依然として、世界最大規模の飢餓に直面しています。長引く紛争や疫病、気候変動などの影響で、2,600万人が急性食料不安を抱えています。コンゴ民主共和国の550万の国内避難民はアフリカで最も多い数であり、近隣諸国からも50万人の難民が流入しています。国連WFPは、2022年、食料配布や、栄養・現金支援、農作物の収穫後管理やマーケティングのトレーニングなどを通じて、8,600万人の人々を支援することを目標としています。
コンゴ民主共和国への緊急支援についてはこちらもご覧ください。
エチオピア
紛争の影響を受けた、アファール州、アムハラ州、ティグライ州では、1,300万人もの人々が人道的な食料支援を必要としています。
国連WFPは、2022年、エチオピアの人々の命を救い、人生を変えるための活動をしてきましたが、支援のニーズは、活動に当てられる資金を上回り続けており、人道的な支援を必要とする何百万もの人々への食料配給が脅かされています。
国連WFPは今後6ヶ月間に1,100万人以上の人々に支援の手を差し伸べるために、4億7,000万米ドルを必要としています。
エチオピアへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。
南スーダン
南スーダンでは、最大170万人もの人々が飢餓に陥る危険性があります。国連WFPは、深刻な飢餓と戦う450万人を支援することを目指していましたが、資金が不足する状況において、食料支援の規模を縮小する必要性に迫られています。この危機的状況は、続く紛争、深刻な洪水、干ばつ、ウクライナ戦争による食料価格高騰によって悪化しています。
南スーダンへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。

シリア
紛争、避難民の発生、深刻な景気後退、シリア・ポンドの価値の下落といった複数の要因が、以前にも増して多くのシリア人を貧困と食料不安に陥れています。次の食事の当てがない人が1,200万人以上もおり、紛争が始まって以来、最悪の食料不安の状況を表しています。
そのような状況の中、国連WFPは資金不足のため、各家庭に配給する月々の支援食料の削減を余儀なくされています。
シリアへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。
ウクライナ
国連WFPは、ウクライナ国内および近隣諸国の紛争から逃れてきた人々に食料支援を行うための緊急支援を開始しました。主に現金支援や食料支援を通じて、毎月、ウクライナ国内の480万人の人々を支援することを目標としています。
国連WFPは、ウクライナ国内への食料支援物資の配送と、国境を越えてやってくる難民を支援するため、近隣諸国の多くの地域でオペレーションと支援拠点を立ち上げています。また、国連WFPは、物流クラスターと緊急通信クラスターの主導国連機関としても活動しています。
ウクライナへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。
イエメン
イエメンは、長引く紛争や、それによる経済危機、人道支援のための資金減少によって、大規模かつ危機的な飢餓に向かっています。更に、ウクライナ戦争の影響により、食料や燃料の価格が高騰しています。国連WFPは深刻な資金不足のため、支援食料の削減を余儀なくされています。
イエメンへの緊急支援についてはこちらもご覧ください。
キャンペーン
#StopTheWaste
#StopTheWasteは、食品ロスの世界的な問題と、それを防ぐために私たちができる簡単な解決策に焦点を当てた、変革のためのムーブメントです。世界では、人間が消費するために生産される食料の3分の1が失われ、無駄になっており、その量は年間約13億トンに上ります。食料の浪費による経済的コストは、毎年約1兆ドルに上ります。2030年までに飢餓をゼロにすることを目指している私たちにとって、これは明らかに解決しなければならない課題です。
2021年の資金調達
拠出金額の合計: 96億米ドル(過去最高)
必要な予算総額: 148億米ドル
国連人道支援航空サービス(UNHAS)
国連WFPアビエーションは、国連が定めた唯一の航空輸送サービスである国連人道支援航空サービス(UNHAS)を運営しています。
このサービスは、人道支援・開発コミュニティを、必要としている人びとに結びつけ、地球上で最も離れた危険な場所にも到達します。
また、治安の悪化や道路などのインフラの損傷により他の輸送手段が使えない場合や、他の民間航空会社が運航できないような場所でも、途切れることなく物資を届けることができます。
UNHASは、2020年に危機や緊急事態に直面している23カ国において、100機以上の航空機を運航し、400の定期的な目的地にサービスを提供しました。
同サービスは、医療避難サービスの提供、医療貨物やスタッフの輸送など、新型コロナウイルスへの世界的な対応をサポートしました。