スーダンで土を使わず植物を栽培
国連WFPは女性に力を与え、また2030年までに飢餓のない世界をもたらすために水耕栽培を用いています
マリアム・アダム・モハメッドは家族とともに何年も前にダルフール紛争から逃れるためにサーフ・オムラ村から安全を求め、離れざるを得ませんでした。長い旅路の末、マリアムたちはベライル難民キャンプにたどり着きました。それ以来、このキャンプに住んでいます。
マリアムの8人の子どもの中には、ここで生まれた子どもたちもいます。当然のことながら、その子たちは母親の出身地の村よりも、キャンプに慣れ親しんでいます。マリアムが両親、兄弟姉妹や親戚に会うために村に戻ったのは1度だけです。
安全な場所
べライル難民キャンプには28,000人が暮らしています。その中には国内避難民と4,000人の南スーダン難民が含まれています。一旦は地元に帰還した人々もいますが、2013年の紛争の激化で多くの人がキャンプに戻ることを余儀なくされました。同じキャンプに戻ってきたものの、スーダンが2つの国に分離したため、今回は国内避難民ではなく難民になったのです。
国連WFPは従来の食料支援の枠を超え、キャンプに住む女性に活動に参加してもらう手段を見出しています。今では100名以上の女性が新しい「水耕栽培プロジェクト」の恩恵を受けています。
国連WFPは土壌や余分な水分を必要とせずに植物を栽培できる、この革新的で環境にやさしいプロジェクトをキャンプで試験的に運用しています。女性たちのグループは、基本的なニーズに応え生活を改善する助けにもなると信じて、積極的にプロジェクトに参加しています。飼料は共同で栽培され、家畜に与えられます。
このプロジェクトによってマリアムのように家で家畜を育てる女性に安全な環境を提供できます。飼料を集めるためにキャンプの外に出る必要がなくなることで、窃盗、強姦、誘拐などの犯罪に巻き込まれる危険を避けることができるのです。また、毎年7月から12月にかけての収穫量が減る時期に発生する、放牧地に関する争いを避けることもできます。
「このプロジェクトはコミュニティを団結させ変革させることに役立ちました。栽培を行うために皆で協力してトレーを清掃し水やりをしています。お互いに家畜の健康についてのアドバイスを共有することもあります」とマリアムは言います。
また、水耕栽培プロジェクトによって、家畜に乾燥したソルガムの茎やピーナッツの葉や草に代わる、より健康的な飼料を与えることができます。「充分な餌を食べて健やかに育った山羊から搾った、高品質のミルクを子どもに与えることができます。それに家畜を良い値で売り、現金を得ることもできます」
女性たちは栽培プロセスの最初から最後までチームとして協力します。まず、2日間バケツで種を水に浸し、次に発芽させるために地面に広げ、飼料として栽培するためにトレーに移します。栽培プロセスには約9日かかります。
飢餓ゼロを目指しイノベーションを行う
この水耕栽培プロジェクトを立ち上げたのは国連WFPのイノベーション・アクセラレーター部門です。イノベーション・アクセラレーター部門は、厳しい生活環境に置かれ食料不足に苦しんでいるコミュニティに支援を提供する機会を生み出しています。多くの人は自立した持続可能な暮らしを送ることができません。不安定な状況が長期化する中で、少しでも人生が通常通りであると思わせてくれる最低限のことに制限があるのです。
ベライル難民キャンプでの試験運用の成功に基づき、国連WFPはスーダンの他の地域にもプロジェクトを広めようと計画しています。対象は避難民問題が長期にわたり解消していない、乾燥した地域です。国連WFPは引き続き弱い立場に置かれた人々を支援し、具体的な手段でコミュニティ内での耐性を高める方法を提供することができます。
当プロジェクトによって、マリアムのように単に生き残るだけでなく、尊厳と目的を持って暮らしを再建したいと考えている女性たちが希望を持つことができます。
また、今まで飼料を市場で購入することに使っていたお金が節約でき、キャンプの外に自生している飼料を集める代わりになる安全な方法を提供し、また家畜をより健康にすることで市場価値を高めることができます。