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知花くららさん ヨルダンのシリア難民支援現場を訪問
, WFP日本_レポート

2014年10月末、国連WFP日本大使でモデルの知花くららさんがヨルダンを訪れ、国連WFPのシリア難民への緊急支援活動を視察しました。知花さんにとって、緊急支援活動の視察は初めてです。

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夜明けとともに、首都アンマンを出発し、車で1時間半ほどのアズラック難民キャンプへ向かいます。ヨルダンには60万人以上のシリア難民が暮らしています。

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訪れたアズラック難民キャンプは、ヨルダンに2つあるシリア難民キャンプの一つ。2014年4月に開設し、訪問当時は1万2千人のシリア難民が住んでいました。砂漠地帯にあるため寒暖の差が厳しく、到着した朝は寒さに震えましたが、日中はとても暑くなりました。

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知花さん「キャンプのある場所は、周りに何もありません。難民の方々はこれまでとは違う環境の中で生活しているのだと感じました。」

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まず出会ったのは、この難民キャンプにシリアから到着したばかりの18人のシリア難民。中には、武装組織の襲撃から逃れてきた家族もいました。5人の子どもを連れてきた一家のお母さんは、「自宅の裏庭が爆撃されたり、武装組織が村にやってきて『戒律に従わない』と村人を鞭で打ったりしたのを見てこわくなり、わずかな服だけをもって逃げてきました。すべてを失ってしまいましたが、ここに逃げてくることができてほっとしました。」と語っていました。(注:難民のプライバシー保護のため画像の一部を加工しています。)

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到着したばかりの難民に、国連WFPはキャンプ内の住居に落ち着くまでの食糧として、水、クラッカー、豆やツナの缶詰、お菓子、ドライフルーツなどの軽食を配っていました。

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難民キャンプ内は白いプレハブの住居が並んでいます。

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キャンプに住むシリア難民一家のご自宅を訪問しました。

シリアの首都・ダマスカスの郊外で青果店を営んでいたご夫婦と、4人の子どもの6人家族です。シリアから避難してきた経緯をたずねました。

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「戦闘がどんどん激しくなり、パンは50倍に値上がりしました。4歳の息子は情緒不安定になり、ドアのノック音などちょっとした物音でも怯えるようになりました。もう限界だと思い、服だけを持ち、バスでヨルダンに逃れてきました。夫の親戚は全く連絡が取れず、安否不明です。このキャンプでは家も食べ物もあって良くしていただいていますが、先行きが見えません。私たちの人生は、今は、この小さな部屋がすべてなのです。」と、ご夫婦は話していました。

プレハブの住居内にはわずかな生活用品が置かれていました。

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知花さん「今、ここしか僕たちの生活場所はないという言葉が印象的でした。先が見えない不安定な生活につらい思いをされていると同時に、日一日を生きていくという彼らの思いを強く感じました。」

キャンプに住む難民には、毎日、一人一日あたり4枚ずつ、焼きたてのパンが配給されます。シリア人にとってパンは食事に欠かせないもので、味にもこだわりがあるそうです。

国連WFPはヨルダンの2か所の難民キャンプで、毎日計25万枚のパンを配給しています。

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キャンプに住むシリア難民に対し、国連WFPは食糧の現物ではなく、食糧と引き換えることのできる券やデビットカードを配っています。この券やカードを、難民キャンプ内にあるスーパーマーケットに持って行くと、食糧を買うことができます。支給額は、一人一か月あたり、3千円相当。食糧引換カードの場合は、毎月、相当額が電子マネーとしてチャージされます。

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難民キャンプ内のスーパーマーケット。ヨルダン資本のチェーン店です。

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スーパーは日本と同じような品ぞろえで、何でも売っていました。

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肉、野菜、卵、乳製品、など品ぞろえ豊富です。難民は生鮮食料品も含め、好きな食材を買うことができ、「家庭の味」を難民キャンプでつくるなど日常生活を取り戻すことができます。酒、菓子などの嗜好品は買えませんが、基本的な食材はすべて、この券やカードを使って買うことができます。

知花さん「食糧の現物の配給だと、それ以外の物は手に入りません。食べ物の選択の自由は、以前と変わらない生活を送るために、すごく必要なことだと思いました。」

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食糧引換券やカードを使って、レジで決済します。難民がスーパーで買い物をすることで、難民を受け入れているヨルダンの経済活性化にもつながります。

知花さん「難民キャンプの中にヨルダンの企業が入っているので、ヨルダン側にも雇用が生まれ、ウィンウィンの関係で、とてもポジティブな流れだと感じました。」

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この制度を国連WFPは「デジタル食糧支援」と呼んでいます。

知花さん「一人一人の尊厳が保たれるシステムで、とても画期的だと思いました。『買い物が出来て嬉しい、子供たちにご飯を作ってあげられる』と言うお母さんたちの話を聞き、人の笑顔につながる支援なのだと思いました。」

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難民キャンプ内には学校があり、6歳から17歳までの生徒が学んでいます。午前中は女の子、午後は男の子が通う二部制です。ここで、国連WFPは栄養豊富ななつめやしのスナックバーを軽食として配っています。

知花さん「煮炊きされた温かいものが給食として提供されていると思っていたので、このスナックバーを見て少し驚きましたが、子ども達に話を聞くと、甘いものがもらえることがすごく嬉しいとのことでした。子どもたちが、このスナックバーを手に嬉しそうにしている姿をみて、こういう支援も良いなと思いました。」

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知花さん「戦火を逃れた経験が子ども達にもたらす影響を考えると、私たちの想像を超えるものがあると思います。胸が締め付けられる思いです。皆、明るく見えますが、爆撃を避けて逃げ、食糧もなく何週間も歩いてきたことを思うと、苦しくなりました。」

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知花さん「特に、女子の児童労働や早婚は大きな問題です。学校に通うことで、それらを防ぐことができるかもしれません。学校に通うことを国連WFPが食糧支援でサポートできるのであれば、これからも是非続けていきたいと思いました。」

次の日は、首都アンマンの街中にアパートを借りて住んでいるシリア難民一家を訪問しました。実は、シリア難民の多くは、難民キャンプではなくこのようにヨルダンの地域社会の中で避難生活を送っています。写真はアンマンの街並みです。

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この一家は、夫婦に8人の子どもたちがいる10人家族で、アパートを借りて暮らしています。家賃も払わなければならないため、夫や年上の子どもが働きつつ、国連WFPの支援も受け、食糧引換カードに電子マネーの送金を受けていました。しかし、国連WFPは資金難に直面しており、訪問時、一家のお母さんは、支援が打ち切られる、もしくは減らされるかもしれないという不安を感じていました。

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知花さん「『国連WFPの支援が打ち切られたらどうなりますか?』と質問したら、家賃が払えなくなり、シリアに帰らざるを得なくなるかもしれません、と話されていました。一生懸命逃れて命が助かったのに、またあの戦火の中に戻らなくてはいけないのかと考えると、今、この子達の笑顔を守らなくてはいけないと強く感じました。」

12歳の娘さんの夢は、物理か科学の先生になること。

知花さん「いつか彼らが国に戻り、新たな国づくりが始まる時のために、今、彼らが健康でいること、そして、子ども達は学校に行き、教育を受けておくことが必要だと思います。空白の期間をなくすことで、新たな希望につながると信じています。食糧支援を通じて彼らの大きな未来につながればいいなと思っています。」

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一家の末っ子は生後6か月でヨルダン生まれ。この子が祖国の土を踏めるのはいつになるのでしょうか。

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ヨルダン視察を振り返って、知花さんはこう語っています。

知花さん「今回は、私がかねてから希望していた緊急支援活動の現地視察でした。現在進行形の難しい問題がありますが、現在進行形だからこそ、救わなくていけない命があります。日本にはたくさんの家のドアがあり、そのドアの数だけ家族がいます。同じように、難民60万人以上という数字の数だけ生活があり、人生があり、命があります。私たちは、これから何をするべきなのかと改めて考えさせられた視察でした。」

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知花さんのヨルダン訪問後、国連WFPは資金難から、一時、シリア難民への支援を中断しました。その後、再開しましたが、支援規模を縮小せざるを得ない状況が続いており、難民は受けられる支援が減っています。

最後に知花さんからメッセージをいただきました。

知花さん「今回、シリア難民の支援現場を訪れて、ずっと考えていたことがあります。私は沖縄出身ですが、沖縄戦を生き抜いた祖父がつぶやいた、『命(ぬち)どぅ宝』(命こそ宝)という言葉をずっと思い出していました。国境を越えて逃れてきた難民の命が助かったことは素晴らしいこと。助かった命は、これから大きな未来へとつながるのだと思います。一人一人の未来に向かって私たちができることを、たとえ小さなことであっても、始めることができるといいなと感じました。子ども達の笑顔を守るために、ぜひ皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。」

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国連WFPの活動は、すべて任意の寄付金で成り立っています。シリア難民は、今後も支援を必要としています。皆様のご協力をよろしくお願いします。一人あたり一日一ドルの費用で、避難生活を送るシリア人に食糧を支援することができます。