南マダガスカルで学校給食から広がる笑顔と希望
国連WFPは、南マダガスカルで干ばつの被害地域に住む30万人の子どもたちに学校給食支援を実施しました。
ヴォロナ・ラリヴォソン
良く晴れたある日、11歳のセヴェリンと彼女のクラスメートは、南マダガスカルのツォンゴボリー村にある学校の食堂で楽しい時間を過ごしていました。
しかし、島国マダガスカルのこの地域では、干ばつに見舞われると人々はその日の食事が食べられる保証がなくなり、最も影響を受けるのは子どもたちです。収穫期直前の最も食料が足りなくなる時期「リーンシーズン」の間は、学校の欠席率が最も高くなります。子どもたちは両親が食料を探す手伝いをしなければならなかったり、住んでいる村と学校の距離が約10㎞にも及ぶため、食べられなければそこまで歩く気力を失い、家に留まらざるを得なくなります。
2018年と2019年の収穫期には、害虫と変則的な降雨による被害が発生し、米とトウモロコシの収穫に深刻な打撃を与えました。それにより、南マダガスカルの9地域に住む90万人もの人々が急速に食料不足に陥り、緊急人道支援を要する状態になりました。

セヴェリンは両親と二人の弟と暮らしています。南マダガスカルに住む多くの貧しい家庭同様、彼女の両親は子どもたちを食べさせることに苦労していますが、幸い、セヴェリンはツォンゴボリー小学校に通い、国連WFPによる毎日の給食支給を受けることができています。
多くの人が待ち望んでいる給食支援は、まだこの地域では43%の小学校での実施に留まっています。マダガスカル現地政府、ノルウェー、ロシアの各政府、そしてマスターカード社の支援により、1,000校の30万人の小学生たちが、穀物や豆、ビタミンやミネラルで栄養強化された油を使った温かい給食を味わっています。
学校給食は子どもたちと家族にとって重要
「食料はここでは豊かな資源ではありません。"kere"(飢餓の意)の期間には、人々は1日1食という状況にも陥ります。子どもたちが学校で食べられることは、子どもたちと家族にとって大変大きな意味を持ちます」 と、ツォンゴボリー小学校の料理人、アステラ・クリスティンは話します。
ツォンゴボリー村では、女性はキャンディーやピーナッツを販売したり、他の家族の衣類を洗濯するなどの小商いにより、1日あたり0.54米ドルほどの収入を得ています。男性はたいてい漁師や肉屋として働いています。両者の収入を合わせても、家族の日々の食事を賄うことは到底できません。
学校給食の支給により、親たちは子どもたちを学校に通わせるようになり、その結果、初等教育における入学率と出席率の増加に繋がっています。
「ランチタイムを逃さないよう、早めに登校する子どももいます」
2019年にマスターカードと国連WFPが行った「費用対効果分析」によると、南マダガスカルで給食支援未実施の学校では出席率が84%であるのに対し、支援実施校での出席率は94%に上ることが分かりました。

「学校給食がその日の主な食事になる子どももいます。通学すれば最低限、昼食を食べられることを親たちは知っています」とアステラ・クリスティンは言います。「午後のクラスに参加する子どもたちはお昼に給食を食べますが、給食を逃さないよう、早めに登校する子もいます」
パートナーシップにより向上する学校給食支援
同国の農業・畜産業・水産業の地域管理課および国連食糧農業機関(FAO)、 国際農業開発基金(IFAD)とのパートナーシップにより、学校給食はより豊かなものとなりました。
アムボヴォムベ地区では、国連の3つの機関とパートナー団体により、農地のある20のモデル校で学校菜園が設置されました。農業組合が果物や野菜を育て、小規模な畜産活動を行っており、新鮮な食材を学校給食に供給できるようになりました。これらは国連WFPが提供する食料を補完する食材となっています。

「私たちは生産物の一部を学校に売り、残りを給食支援発展のために寄付しています」と農夫のトムボは話します。
「学校菜園は、パートナー団体との良い協働状態を反映しており、また、子どもたちの健康や授業への集中力、学習能力に好影響をもたらしています」と、ベアボ小学校校長のエマ・ラザナムパラニーは言います。
学校菜園プロジェクトでは、FAOが農業組合に種やマイクロ灌漑キットを支給し、技術指導を行いました。IFADは組合の立ち上げやプロジェクト運営など、管理的な面について支援を行いました。
生活を変えるイノベーション
アムパニヒー地区とトゥレアール地区の12校で、国連WFPは学校が多様な食料を購入するための現金支援を導入しています。

携帯電話会社エアテルとの協働により、現金は地元の選ばれた業者や学校食堂管理委員会に支給されます。コミュニティへの現金支援により、人々は魚や青菜、野菜、肉、果物など多様な食料を購入する柔軟性が持てるようになりました。現金支援は地元経済の活性化にも役立っています。
「クラスの友達と会えて、勉強できて、給食も食べられて、楽しい毎日です」とセヴェリンは言います。得意な教科はフランス語で、将来の夢は医師になることです。
「子どもたちが学校へ通うこと、栄養を得ること、学校を卒業することは大切です」と、ノルウェーの国際開発審議官、アクセル・ヤコブセン氏は、最近のサカベラ小学校とツォンゴボリー小学校訪問時に述べています。
