UNHAS設立20周年:人道支援活動の飛行機とヘリコプターが地上からのアクセスが困難な場所に着陸
晴れた朝、コンゴ民主共和国北東部、北キブ州の小さなベニ空港の荒れた滑走路を、UNHASのダッシュ8の小さな白い機体が土煙を巻き上げながら滑走し、紛争が起きている地域に希望を運びます。
ダッシュ8は単なる定期便ではなく、まさにライフラインです。国連WFPが管理する国連人道援助航空サービスの20年にわたる活動を象徴する存在です。
乗客のカロンゴ・ルワビカンガさんにとって、UNHASは唯一の移動手段です。「このフライトがなければ、支援を届けることが困難な場所での活動は限られたものとなるでしょう」と話すルワビカンガさんは、近隣のイトゥリ州で医療や衛生の改善、性暴力の防止、平和の推進に取り組むコンゴのNGOアクション・アントレッドのコーディネーターです。
ルワビカンガさんの仕事は大変なものです。コンゴ民主共和国の東部では、長年の戦闘によって何百万人もの人々が住まいを追われています。UNHASのフライトは、人道支援物資やルワビカンガさんのようなスタッフが搭乗しており、彼らは通行できない道や崩落した橋を越え、急激に高まる混乱にもかかわらず、変化をもたらしています。
「UNHASは、私たちの活動でどうしても乗り越えなければならない隔たりを埋め、他に空路での移動ができない地域に活動範囲を拡大できる唯一の手段です」とルワビカンガさんは言います。
国連WFPがUNHAS運航を任されてから20年、活発な人道支援航空サービスにより、130機を超える機体が3大陸21カ国に人命救助の支援を届けています。
UNHASは、昨年だけで600団体の38万5,000人以上の人道支援スタッフと4,500トンの救援物資を、民間企業では対応が難しい遠隔地や紛争地に輸送しました。
「2004年にUNHASが就航したことは、人道支援に携わるすべての人にとっての勝利でした」と話すのは、当時UNHASの活動を指揮した国連WFPの上級職員、ラミロ・ロペス・ダ・シルバです。 「人道的状況は複雑で、定期就航便はありませんでした」
ロペス・ダ・シルバは、UNHASが2年後に中央アフリカ共和国で活動を開始したときのことを特に覚えています。活動がうまくいったのは「航空部門のスタッフのプロ意識の高さを証明するものだ」と言います。「そして、人道支援団体をより広く支援していく国連WFPの取り組みの証でもあります」と話します。
一日に約60機のUNHASの飛行機とヘリコプターが空を飛び回り、最も支援を必要としている地域に重要な支援を届けています。活動を継続するためには支援者の協力が必要です。
「他の輸送手段が存在しない地域では、UNHASがなければ世界の人道支援活動の多くが停止してしまうでしょう」と話すのは、中央アフリカでの赴任経験がありUNHASをよく知る、米国国際開発庁(USAID)人道支援局(BHA)のテイラー・ギャレット上級顧問です。
ギャレット氏は、UNHASへの投資は費用対効果が高いだけでなく、BHAとそのパートナーが支援する地域の生活を向上させるために不可欠だと考えています。そうすることで、「UNHASの活動と私たち人道援助団体としての使命」を全うできる、と言います。
一方で現在、米国をはじめとするドナーの手厚い支援にもかかわらず、資金が不足しており、人道援助航空サービスが最も必要とされている地域での今後の活動が深刻に脅かされています。UNHASが現在就航する17カ国の路線やサービスを縮小することなく、国連WFPが今後6カ月間これまでどおり運航するためには、5,500万米ドルが必要です。
「支援者からのさらなる寄付が必要です。新たに寄付を得ることができなければ、イエメン、モーリタニア、中央アフリカ共和国、ナイジェリア、ニジェールといった国では2024年3月以降、活動が継続できなくなります」と、国連WFPの航空部門責任者のフランクリン・フリンポンは、世界で最も食料不足が深刻で脆弱な国々を挙げて言います。「その結果、何百万人もの人々に緊急援助が届かない状況に陥る可能性があります」
空から希望を届ける
アフリカで2番目に大きな国土を持つコンゴ民主共和国ほど、UNHASの重要性を示す場所はありません。国土の3分の2以上が熱帯雨林に覆われ、道路インフラが脆弱か、まったく整備されていない地域もあり、空路でしかたどり着けない場所が多くあります。自然災害や紛争の際に人道支援団体が頼りにする唯一の航空サービスがUNHASです。
昨年5月、コンゴ民主共和国北東部の南キブ州カレヘ地区が大洪水に見舞われ、400人以上が命を落とし、何千もの家屋が倒壊し生活基盤が失われました。その際、UNHASはいち早く救援物資として、栄養強化ビスケットを空輸しました。
10代の子ども2人と家を洪水で失った50歳のシファ・アキリマリさんは、UNHASのヘリコプターが到着した日のことを鮮明に覚えています。
「このビスケットがあれば、今後のことが決まるまで、命をつなぐことができます」とシファさんは生き残った子どもや孫たちについて言います。
隣接するコンゴ民主共和国の北キブ州にある小さな町キルンバにUNHASは週2便を運航しています。支援スタッフのアルフォンス・キジトさんはこれをまさにライフラインだと表現します。この他には、州都ゴマから荒れ果てた危険な道を利用するしかなかったと言います。
ドイツのNPOヴェルトゥンガーヒルフェ(飢餓援助機構)で働くキジトさんは、「陸路だと時間がかかるだけでなく、スタッフを安全上、大きな危険にさらすことになります」と話します。
状況は他の多くの国でも同様です。さらに南に下ったマダガスカルでは、2023年初めにサイクロン「フレディ」により17人が死亡し、被害がありました。UNHASは支援スタッフを運び、状況の確認や必要な支援の提供を行いました。
「UNHASのフライトのおかげで、孤立地域に10カ所の保健センターを設置し、必要不可欠な医療用物資を届けることができました」と、フランスの人道支援団体、世界の医療団のマダガスカル現地コーディネーター、ホアキン・ノートルダムさんは語ります。
OCHAのモニア・イナシャカ も、UNHASのおかげで、マダガスカル東部のイコンゴで必要な人道的ニーズを確認できたと言います。「イコンゴには陸路では行けないため、UNHASのフライトは私たちが現地に入るために非常に重要でした」
アフガニスタンでは、ワールド・ビジョンで活動するブラジウス・ンディフォーさんが2022年に同僚とともにUNHASの飛行機で西部のヘラートや南部のカンダハールといった遠隔地に赴き、命を救う栄養支援や子どもたちを保護する活動を行ったと言います。
「ヘラートまでの陸路での移動はかなり困難で、15時間以上かかります」とンディフォーさんは言います。「安全上の状況から先に進めないこともあります。UNHASを使えば、1時間ちょっとで到着します。安全で最短の移動時間で、緊急事態や人道的ニーズに迅速に対応することができます」
このような話や他の多くの話は、協力に根ざした成功を物語っています。数多くの支援者、政府、国連機関、NGOが、状況を変えていくという共通の目標のもと、この命をつなぐ航空サービスの翼の下に集まっています。
「UNHASは、絶望と希望をつなぐ架け橋です」と国連WFPのフランクリン・フリンポンは言います。そして、「航空サービスを利用、支援する多くの人々の連携した取り組みにより、その成果を大きくすることができます。だからこそ、UNHASの活動を継続することがこれまで以上に重要なのです」と述べています。
この記事はコンゴ民主共和国のベンジャミン・アングアンディアが執筆したものです。
UNHASの長年にわたる活動は、オーストラリア、ベルギー、カナダ、チェコ共和国、デンマーク、欧州連合、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ギニア、ローマ教皇庁、国際通貨基金、イタリア、アイルランド、日本、韓国、ルクセンブルク、モナコ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、カタール、ルーマニア、サウジアラビア、シエラレオネ、スペイン、スウェーデン、スイス、アラブ首長国連邦、英国、国連機関、アメリカ合衆国、世界銀行、民間支援者などの寛大な寄付によって支えられています。