紛争で疲弊するスーダン、増加する飢餓と失われる希望
昨年4月にスーダンで紛争が勃発して以来、アワド・アダムさんとナフィサさん夫妻は移動を強いられ続けています。夫妻は、首都ハルツームが銃撃戦に見舞われるなか、当時は平穏だった東アフリカの穀倉地帯であるゲジラ州へと南下しました。
12月には、ゲジラ州の中心都市マダニの避難所が砲撃を受け、アワドさん夫妻と8人の子どもたちは、着の身着のままで再び避難しました。
「私たちには何も残されていません」と、現在数千人の紛争避難民を受け入れている紅海の町ポート・スーダンのペンキのはがれた学校の教室で、妻と一緒にアダムさんは話してくれました。
「国連WFPが来てくれたので、支援を受けています」と、アダムさんは言います。
国連WFP、危機の中で混乱に陥るスーダンで食料支援を再開
現在スーダンでは、アワドさん夫妻を含む、1,000万人以上の人びとが家を追われ、世界最大の避難民の危機 となっています。国連WFP は他の人道支援機関とも協力し、深刻化するニーズに対応しています。
この1年間で、国連WFPの食料・栄養支援は、スーダン国内の約650万人と近隣諸国に避難した多くの人びとに届き、スーダンの18州のうち17州で毎月190万人近くが国連WFPの食料支援や現金支給を受けています。
しかし、ニーズは急増しています。全国で1,800万人近くの人びとが極度の食料不安に直面しており、そのうち500万人が緊急に対応の必要な飢餓の状況にあります。多くの人びとは生き残るために必死の手段を取らなければならず、さもなければ栄養不良で命を落とす危険もあります。
ハルツーム、ダルフール、ゲジラ州を含む紛争が激しい場所に閉じ込められた人びとは、最も厳しい飢餓状況に直面しています。安全保障上の脅威や道路封鎖のために、彼らに支援物資を届けることはほとんど不可能になりつつあります。国連WFPは、自由なアクセスがなければ、飢餓の大惨事を避けることはできないと警告しています。
「国連WFPはスーダンで食料を確保しており、最も必要としている家族に届ける準備ができています」と、エディ・ロウ国連WFPスーダン事務所代表は話します。「しかし、不必要なハードルが活動を遅らせ、緊急に支援を必要としている人びとに届けることを妨げています」
不安な未来
スーダンの多くの人びとと同様に、国連WFPの職員もかつては安全だった地域から避難することを余儀なくされており、多くの場合、彼らの移動は支援を行っている人びとと同じ道をたどることになります。友人や家族の家に身を寄せたり、あるいは仮設のシェルターに滞在しながら、スーダンの人道危機がこれ以上深刻化しないよう、日々業務に取り組んでいます。
「人びとは将来に不安を感じ、子どもの教育を心配し、家を心配しています」と、マダニで国連WFPの緊急対応をコーディネートしているカリム・アブデルモネイムは話します。
アワドさん夫妻と同じように、アブデルモネイム緊急支援調整官とその家族もハルツームから避難してきました。避難後に再びマダニから退避を強いられた後、現在、彼はカッサラ(ハルツームの東約500キロの町)にある国連WFPの事務所に滞在しています。彼の妻と子どもたちは国外の安全な場所に避難しました。
「私の持ち物は、バッグとノートパソコンとマットレスだけです。もう慣れましたね」と、アブデルモネイム緊急支援調整官 は言います。
スーダンの人びとは同じ国民同士が危機を乗り切る手助けをします。「彼らは食料と水や、眠るためのマットレスなどを提供してくれ、とても歓迎してくれました」と、アダムさんはポート・スーダンの住民について語ります。
現在彼らが住んでいる地元の学校の教室は、マットレスと家族のわずかな持ち物でぎゅうぎゅう詰めになっています。外では、作業員たちが植物油、塩、ソルガム、豆類などの栄養強化食品と国連WFPの食料を配っています。これは少なくとも1か月間は人びとが持ちこたえるのに十分な量です。
「緊急食料支援を始めたときから、この人たちがいかにこれを待ち望んでいたのかがわかりました」こう語るのは、ポート・スーダンで働くハフィズ・イブラヒム国連WFPプログラム・オフィサーです。
「私が最も恐れているのは、紛争がこの安全地域にまで広がることです。それはスーダンの人びとにとって本当に破滅的なことです」と彼は言います。
食べ物がすべてを解決するわけではありません。紛争はアワドさん夫妻の子どもたちを恐怖に陥れました。彼らの息子の一人がパニック発作を起こしました。夫妻は子どもたちの教育について心配しています。そしてナフィサさんは、ビジネスを立ち上げ、新たなスタートを切るためにはお金が必要だと言います。
二人はまた、ハルツームに戻るかどうかも定かではありません。
「安全が一番大切です。戻るのは怖いです」と、ナフィサさんは言います。
「多くの危機が新聞の紙面をにぎわし、資源の奪い合いが行われる中、地元の人びとは、自分たちのことが忘れ去られようとしていることを恐れています」とアブデルモネイム緊急支援調整官は言います。
「スーダンの人たちは、誰が自分たちの復興を手助けしてくれるのか心配しています。全世界が混乱状態にあるからです。希望を持ち続けるのはとても難しいです。しかし、紛争がいずれ終わることは歴史が示しています」
昨年のスーダンにおける国連WFPの対応は、カナダ、キプロス、チェコ共和国、欧州委員会人道支援・市民保護局(ECHO)、フランス、ドイツ、アイルランド、日本、クウェート、ルクセンブルグ、マルタ、ノルウェー、韓国、スロベニア、スウェーデン、スイス、国連中央緊急対応基金 (UN CERF)、アメリカ合衆国を含む国連WFPドナーの皆様からの寄付のおかげで可能になりました。