飢きんを知る:それは何か。そして私たちにできることは

飢きんとは何か。誰がその危機にさらされているのか?
飢きんは、世界の飢餓状況を監視する国際的な基準である「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」によって「極度の食料不足」と定義されています。これは、IPCの分類で最も深刻なレベルであるフェーズ5の極限状態を指します。ただし、すべてのIPCフェーズ5の地域が「飢きん」と宣言されるわけではありません。
飢きんは、食料不安の中でも最も深刻な状態であり、以下の3つの条件がすべて満たされた場合にのみ宣言されます:
・ 人口1万人あたり少なくとも2人(または子ども1万人あたり4人以上)が、飢餓・病気・栄養不良により毎日命を落としている。
・少なくとも20%の世帯が極度の食料不足に直面している。
・少なくとも30%の子どもが急性栄養不良に苦しんでいる。
飢きんは稀なものであり、予測可能で、適切な資源と政治的意思、行動を起こすことができれば防ぐことができます。特に幼い子どもたち、妊娠中や授乳中の女性、避難民といった弱い立場にある人々は、飢餓の緊急事態に最も大きなリスクを抱えています。
飢きんが正式に宣言されるころには、すでに多くの人々が飢えで命を落としており、その進行を食い止めるのは非常に困難になります。

飢きんが起きる原因は?
飢きんの原因はさまざまですが、いくつかの共通する要因があります。これらの要因を理解することで、WFPなどの組織は、適切に予測し、対応することができます。
- 紛争は深刻な食料不安の主な原因であり、時に飢きんへとつながります。人々を強制的に移動させ、生活手段を断ち、人道支援が人々に届くのを妨げることがあります。
- 自然災害や異常気象(干ばつ、洪水、サイクロン、感染症の流行など)も飢きんを引き起こす要因となります。
- 経済的要因も一因であり、たとえば食料価格の高騰、経済成長の停滞、貿易の混乱などが挙げられます。
- 最後に、人道支援が不十分であったり、支援の開始が遅れたり、連携が取れていなかったりすると、極度の飢餓状態にある人々が飢饉に陥る可能性があります。
-
ガザではアクセス制限により深刻な飢餓が広がっており、特に脆弱な存在である女性と子どもたちがWFPの食料支援を受けています。Photo: WFP/Ali Jadallah
現在、どこで飢きんが起きているのか?
2025年6月時点で、戦争で荒廃したスーダンで確認されています。最初に確認されたのは2024年8月、スーダン北ダルフール州のザムザム難民キャンプでした。それ以降、飢きんは国内の10地域に広がり、さらに17地域でも発生のリスクが高まっています。
ガザ地区では、推計47万人が壊滅的な食料不安に直面しており、7万1千人の子どもが急性栄養不良の緊急治療を必要としています。今後数か月以内に飢きんに陥るリスクが非常に高い状況です。
このほかにも、南スーダン、ハイチ、マリの一部地域も危機的状況にあります。これらの地域はいずれも、暴力やその他の衝撃的な事態によって深刻な影響を受けています。

飢きんの歴史
飢きんは決して新しい現象ではありません。過去の飢きんの痕跡は先史時代にまでさかのぼり、古代ローマから、近代ではアイルランド、ロシア、中国、エチオピアなど、あらゆる大陸にその記録が残されています。
21世紀に入り、過去のような大規模な飢きんはほぼ見られなくなりましたが、この致命的な現象は依然として続いています。過去15年間で、IPC(総合的食料安全保障分類)により飢きんと正式に認定された3か国:ソマリア(2011年)、南スーダン(2017年)、スーダン(2024年)です。その他にも、たとえば2020年の南スーダンのように、「飢きんの可能性が高い」と判断されたケースもあります。
飢きんは多くの命を奪うだけでなく、政治的、身体的、心理的な長期的な傷跡を残します。こうした過去の飢きんの教訓は、未来の飢きんを予測し、未然に防ぐための私たちの取り組みに生かされています。

WFPはどのように飢きんと闘っているのか?
飢餓、そしてその最も深刻な形である飢きんへの対処は、WFPのミッションの中核にあります。2024年だけでも、WFPは世界各国・地域で1億2400万人に命を守るための食料支援を届けました。これは、各国のドナー、人道支援パートナー、地域社会の協力によるチームワークの成果です。
人道支援が飢きんの発生を防ぎ、あるいは逆転させるうえで重要な役割を果たすことは、たとえば2022年のソマリアで実証されています。このときWFPとパートナーは迅速に支援体制を拡大し、大規模な餓死を回避することができました。
現在、スーダンでは紛争により深刻な飢餓が広がっており、WFPは毎月700万人への食料・栄養支援を実施するべく支援を強化しています。支援対象は、飢きんに直面している、あるいはそのリスクが高い地域のコミュニティを優先しています。これは、他の飢きんリスク地域においても、安全確保や資金などの条件が整えば、同様に実施されているアプローチです。
またWFPは、飢きんの引き金となる衝撃(ショック)に対する地域社会の予測力と回復力を高める活動にも取り組んでいます。たとえば、早期警報の提供、土地の再生、作物の栽培支援、新たなスキル習得などを通じて、長期的な備えを支えています。
さらにWFPは、紛争影響地域での平和促進や、「飢餓を戦争の武器として使わせない」ための世界的な発信力を生かした活動も展開しています。こうした取り組みは、2020年のノーベル平和賞受賞という形でも国際的に評価されました。

飢きんを終わらせることはできるのか?
政府や人道支援団体は、飢餓危機が壊滅的なレベルや飢きんへと陥る前に、それを予測し、未然に防ぐことができます。しかし、それには十分な資源、技術革新、協調的な行動、そして何よりも政治的意思が必要です。国連の持続可能な開発目標(SDGs)2は、「2030年までに飢餓をゼロにする」ことを掲げています。
WFPが活動し、データが得られる74か国では、推定3億4,300万人が急性の飢餓に直面しており、そのうち190万人は飢きん寸前の状態にあります。

私にできることは?
飢きんは止めることができます。しかしそれ以上に大切なのは、そもそも飢きんを起こさせないことです。一人ひとりの行動が、飢きんの防止や終息、そしてその認知拡大において大きな力となります。その証拠に、数多くの実例があります。たとえば、飢餓対策のための資金や認知を広げるチャリティーコンサートやイベントの開催、あるいはスーダンの地域炊き出しのような草の根の活動で、最も空腹に苦しむ人々に食料が届けられています。
あなたは今、「飢きんについて知る」という最初の一歩を踏み出しました。次は、家族や友人、地域社会に伝えることです。市民活動やオンラインを含め、あらゆる場で声を届けてください。
さらに、WFPへの寄付やボランティアへの参加、そして周囲にも参加を呼びかけることも、あなたにできる力強いアクションです。飢きんのない世界を実現するために、あなたの一歩が必要です。