ジンバブエ 飢餓の瀬戸際で
国連WFPは重大な食料危機に陥る寸前のジンバブエで、レジリエンス(災害に強い地域社会づくり)の構築に力を注いでいます
「我々の支援がなければ、人々は飢餓への道を歩み続けるだろう」 国連WFP事務局長デイビッド・ビーズリーは、最近のジンバブエ視察後に言いました。「これまで支援してきた中で見たことのない干ばつに直面しているのです」
極度な干ばつにより、今年3月にジンバブエを襲った前例のない巨大なサイクロンによる爪痕はさらに悪化し、6月に175%以上のインフレを引き起こした経済危機も深刻化しています。それにより、250万人ものジンバブエの人々が主食を購入できない状況に陥っています。その結果、550万人以上(国の人口の約1/3)に上る人々が、来年までに人道支援を必要とすることになります。この危機に対処するため、国連WFPは収穫の少ない期間の支援に1億7,300万米ドルを必要としています。
ジンバブエの大きな気候変動は、これまで何年も頻繁な干ばつと洪水をもたらしており、2019年は両方の災害がこの国を襲っています。将来の気温上昇により、作物の収穫や水の確保が脅かされることが予測され、農家やコミュニティは、食料生産と収入の危機の増大に対し、適応し、管理していくことが必要となっています。
国連WFPが最悪の事態を回避し、人々が充分な食料を確保できるよう試みている対策の一つに、彼らが気候変動に立ち向かうための能力の構築があります。2018年から、国連WFPはマシンゴ地区での総合的なレジリエンスアプローチの実施を開始しました。気候変動に対する農家の脆弱性を強化する活動として、分水嶺レベルでの土壌・水質保全設備の建設や、栄養を考えた菜園の開設に加え、収穫を増やし、土壌劣化を減らし、干ばつに耐性のある種を普及させる環境保全型農業についての研修などを行っています。
国連WFPは、気候変動によるリスクの管理について、この地区の2,000以上の世帯を支援するため、今年、取り組みの範囲を拡大しています。各コミュニティは3年間にわたり支援を受けることとなり、ここでの総合的アプローチは国内の他の地域にも拡大していく上でのモデルケースとなっています。
多くのコミュニティメンバーのように、シェブヴテ出身の49歳の農家アンドリアスも干ばつで甚大な影響を受けました。彼は栄養を考えた菜園づくりに熱心です。「収穫した野菜は学校に販売しており、さらに収入が得られるようこの菜園の拡大に期待しています」
支援を通して、農家たちは最大の脅威、干ばつから守られる天候インデックス保険を受け取ります。この保険は、降水量が極度の干ばつ状態に相当するレベルまで落ち込んだ時に支払われ、彼らが作物にかけた投資が無駄にならないよう保証します。
「私たちは、もう以前のように干ばつに全てを奪われてしまうことはありません」
また、この総合的アプローチは、農家たちがコミュニティの貯蓄およびローン制度を通して貯蓄を増加することを奨励します。この制度により、彼らは干ばつとは関係のない他の問題や作物の不作にも対処できるようになり、ようやく国連WFPの支援がなくても保険料を自分たちで賄えるようになりました。これは繁盛する保険市場を作り出すため鍵となる要素であり、小規模農家に持続的な影響を与えています。
貯蓄グループの活動は、他の活動にも相乗効果をもたらしており、特に女性たちは大きな恩恵を受けました。「国連WFPの支援を通して、生活に必要なスキルを学びました。私たちはもう以前とは違います。私たちは力を得たと感じています」マビンゴ地区の貯蓄グループメンバーであるプライズ・チパレの言葉です。
人々は、収穫物を市場に出すための支援に加え、自分たちの農業をビジネスとして行っていくためのトレーニングを受けます。このような努力により、活動開始から1年後には、国連WFPは6,5トン以上のホワイトソルガムを農家から購入することができています。
「本プロジェクトにより、これらのコミュニティはもう私たちの支援を必要としなくなるでしょう」 マシンゴ視察時、ビーズリー事務局長は述べています。「国連WFPはジンバブエの他のコミュニティに食料を供給するため、今は彼らから食料を購入することができているのです」
干ばつの脅威から守られる小規模農家が増えることで、ジンバブエは将来的な気候変動による打撃への備えをより強固にし、新たな食料危機を回避することができるでしょう。
国連WFPは、スイス開発協力機構 (SDC), アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)の助成を通して、ジンバブエでの総合的アプローチの実施を拡大しています。また、気候変動に対する適応と緩和の実践において発展途上国を支援する、「気候変動に関する国際連合枠組条約」により設置された多国間基金「緑の気候基金」からの助成金に感謝いたします。