ジンバブエの飢餓:エル・ニーニョ現象がピーナッツバター生産者の生活を脅かすが、希望までは奪えない
廃品置き場の片隅の、古いバスの錆びたフレームと1958年型シボレー・デイリーの壊れた残骸の隣で、エディス・ンデベレさんは薪で熱した金属製のドラム缶を慎重に回しながら、中で炒られるピーナッツから目を離しません。
南西部のマタベレランド州にあるジンバブエ第二の都市ブラワヨ市で、彼女は炒ったピーナッツから、お客様が好む濃厚でクリーミーなピーナッツバターを製造しています。
「とても早くできるようになりました」国連WFPの都市起業家支援プログラムを通じて手に入れた焙煎ドラムのおかげで、調理時間は30分で済むようになりました。「以前の機械では1時間もかかり、薪をすべて使い果たしてしまいます」とンデベレさんは言います。
「私のお客様はピーナッツバターの値上げを受け入れてくれません」
ピーナッツバターは栄養価が高く、価格も手ごろなため、栄養不良が深刻化しているジンバブエの家庭の中で主要な食品の一つとなっています。都市部では、最低限必要な栄養を摂取できている子どもはわずか10.4%にすぎません。
次から次へと危機がこの国を襲う中、このようなビジネスは意欲的な女性たちの収入格差を埋め、不変のものとなり得ます。
2023年、国連WFPは、ンデベレさんが参加した自立支援プログラム(スイス開発協力庁が資金を提供)の下で、ジンバブエの10,000以上の家族を支援しました。
訓練プログラムだけでなく、国連WFPとそのパートナー組織は、異常気象に対処するための「予測行動」を数多く実施しています。エル・ニーニョ現象を緩和するための活動の中には、干ばつに見舞われた畑に水を供給するためのボーリング孔を掘ることや、農家が干ばつに強い種子品種をより多く調達できるように支援することなどがあります。
国連WFPは、北マテベレランドの5つの地区で計画された53のボーリング孔の半分近くを掘削しました。気象災害の後に緊急食料支援を受ける可能性のあるコミュニティのために、太陽光発電ポンプを使って栄養価の高い作物を栽培するための畑づくりを支援するためです。
これらのボーリング孔で、畑がより暑い状況に耐えられる可能性が高くなり、都市部で生活するンデベレさんのような生産者の生活基盤も安定します。
彼女がここ数年で成し遂げたすべての進歩が、現在危機にさらされています。4月、政府はマラウイとザンビアとともに国家緊急事態を呼びかけました。これらの国々は、エル・ニーニョ現象によって引き起こされた惨状への対応に苦慮しています。エル・ニーニョ現象は、すでに気候変動によって破壊的な異常気象に悩まされている南部アフリカに追い打ちを掛けます。
エル・ニーニョ現象は東太平洋の海水温が上昇することで7年おきに発生します。ジンバブエでは2023年半ばからエル・ニーニョ現象の発生が遅くなり、その年の11月と12月に予想された雨が降らなかったため、今年の1月と2月には多くの家畜が死に、収穫が激減しました。
畑が焦土と化したことで2023~24年夏季の収穫が77%減少、ピーナッツの生産は98%減少し、ほぼ出荷停止状態に陥りました。
「私はエル・ニーニョ現象に2度襲われたような気がします。1度目は身体的に、2度目は経済的に」とンデベレさんは言います。「去年の今頃は1トンのピーナッツがあったのに、今は1袋(25kg)しかありません。人びとはピーナッツバターを欲しがっていますが、それを買う余裕はありません」
「ピーナッツの価格は2倍になっています。中間業者がたくさん絡んでいて、価格を押し上げています」と彼女は付け加えます。
「私の商売は天候と収穫量に大きく依存しています。干ばつは私のお客様にも影響を与え、彼らの購買力を下げます。ピーナッツバターの値上げをしたくても受け付けてもらえません」
政府によると、都市部の170万の人びとが食料不安に陥っています。インフレで必要不可欠な食料が手の届かないものになる中、その日の稼ぎで飢えをしのいでいます。
本来なら5月から8月にかけて最も忙しい時期ですが、ンデベレさんは通年雇っている2人の女性のうち、今年は1人にしか給料を払う余裕がありません。それも全額ではありません。
現金支援
パンデミックの最中、ンデベレさんは4人の子どもを育てることに苦労していましたが、国連WFPからの現金支援で運命を好転させ、彼女自身のブランドのピーナッツバターを作ることができました。
「今では他の人を助けることができるので、幸せな気分です」とンデベレさんは言います。「トレーニングセッションで学んだことを、一緒に働いている人たちにも教えました」
当初はバケツ2杯ほどでしたが、良い月には、ンデベレさんはバケツ10杯分のピーナッツバターを生産できるようになりました。バケツ1杯で40瓶のピーナッツバターが製造できます。これらのピーナッツバターは、国連WFPとパートナー組織であるダン・チャーチ・エイドが主催した研修会で彼女が出会った2人の女性が経営する地元の店で、1瓶1米ドルに相当する値段で販売され始めました。(現在は1瓶1.5米ドルです)
生活費の高騰にもかかわらず、ンデベレさんは脳性麻痺の息子プリーチャーくんを障がい者学校に通わせてきました。しかし、ようやく手に入れたこの支援が危機に瀕しています。
女性のためのトレーニング
ンデベレさんは、ブラワヨ市で女性起業家グループの会長を務めています。
国連WFPから受けている自立支援のためのトレーニングと技術支援が、大きな変化をもたらしていると彼女は言います。
ンデベレさんは、他の女性を雇うことや税金を払っていることから、意欲的なビジネスウーマンに知識を共有することまで、地域社会に変化をもたらそうとしています。
「私たちは女性同士、どうやって生計を立てていくかを教え合っています」と、彼女は業者や商売人のグループを通じて毎週参加している会合について語ります。「たとえ少額でも、私は四半期ごとに税金を払うことができます。少なくとも、私は微力ながら、この国を変えることができるのです」
彼女の夢は農場を持つことです。「もし自分だけの畑があれば、ゼロからピーナッツを育てたいと思います」と彼女は語ります。
しかし今のところ、彼女は自分のビジネスを再建することに集中しています。そして、彼女の子どもたちにより良い未来を提供するために、焙煎したてのクリーミーなピーナッツバターの瓶に1つずつラベルをきれいに貼り付けます。