ケニアの女性たち、村の貯蓄グループでビジネスを立ち上げ、地位の向上を目指す
ある日の午後、ケニアの女性たちが輪になって座っています。中央には金属製の箱。3つの錠前があること以外は工具箱のようです。ポケットサイズの記録帳が床に散乱し、お金の所有者が何度も入れ替わります。部外者にとっては、行われているプロセスを理解するのは難しいですが、彼女たちはそれぞれのステップを心得ています。
ナイロビから北へ車でおよそ6時間、ここサンブル郡にある60の女性主体の村の貯蓄貸付組合が、最近マララルという町で会合を行いました。それぞれ15人から25人のメンバーで構成され、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)の支援を受けているこれらのグループは、この保守的な地域で女性たちが経済的に豊かになるための最初の、そして重要なステップを提供しています。
女性のための教育
「私は娘たちの教育に力を入れてきました。そうしなければ、彼女たちは学校にも行かなかったでしょう」売り上げ記録を数えながらこう語るのは、36歳のステラ・アカイさん。7人の子どもを持ち、サンブル郡の貯蓄グループの非公式な「母親」でもあります。
ケニア北部の他の地域と同様に、ここでは女子教育は優先事項ではありません。女性は財産を所有することはできますが、夫の陰でそうしない限り、財産から利益を得ることはできません。
アカイさんはこの状況を変えようとしています。国連WFPの訓練と支援を受けた彼女は、2021年以来、サンブル郡で35の貯蓄グループを作り、それぞれのグループのメンバーを維持し、何百人もの女性に彼女のスキルを伝えてきました。
「毎週これらの会合で貢献できることが、私のエネルギーの源です」とアカイさんは言います。「私は各グループの進捗状況を注意深く監視します。私の存在が彼女たちに、これから自分たちが歩む道に対しての自信を与えていると思います」
今日、他の多くのケニアの女性たちもアカイさんと同じ道を歩んでいます。国連WFPはこれまでに、11の郡でおよそ3,000の貯蓄グループを支援し、アカイさんのようなトレーナーを養成し、女性たちをさらに支援してくれる地方自治体へと結び付けてきました。メンバーの約85%を女性が占めており、ケニア全土で女性たちに変化をもたらす強力な手段となっています。
あり方を変える
「村の貯蓄グループは、農村女性の経済的エンパワーメントのあるべき姿を再構築しています」こう語るのは、フィリス・カリウキ国連WFP気候リスク・金融包摂専門員。「これらのグループは貯蓄やクレジットという形で金融へのアクセスを提供することで、農村女性の経済的格差を埋め、家族内での平等な意思決定を促進しています」
この制度では、サンブル郡のグループメンバーは1回の会合で1株から5株、1株あたり0.07米ドル相当を購入します。そのお金は、10%の金利をつけて返済しなければならない融資のための共同ポットに入ります。年末にすべての貸付金を回収すると、メンバーは最後のポットを分け合い、また同じサイクルを繰り返します。
「やり方はシンプルです。教育を受けていない人でも簡単に始められます。ひとたび成果を目にした人たちが、このコンセプトを理解し、定着するのです」とアカイさんは話します。
昨年だけで、サンブル郡のメンバーは約3,100万ケニア・シリング(約22万米ドル)の貯蓄と利益を実現しました。これは、幸運にも仕事を見つけた人でも1日3米ドルしか稼げないこの地域では、かなりの金額です。
その収益は、メンバーが小規模事業を立ち上げたり、土地を購入したり子どもを学校に通わせるなど、他の優先事項へ投資することができるようになりました。
「国連WFPは現在、養蜂のような新しい生計の立て方のトレーニングをグループに提供しています。また、同時に農産物の市場を開拓する手助けをしています」こう語るのは、チャールズ・ソンゴク国連WFPサンブル事務所長。「彼女たちは今、自分たちには資本があり、必要なのは投資する収益性の高いバリューチェーンだけだと言っています」
娘たちを見守りながら
アカイさんはこれらの成果を目の当たりにしてきました。2016年に2番目の妻として結婚した彼女は、10代の娘たちが、アカイさんが受けたのと同等の学校教育を受けられるようにするために、別居を選びました。
国連WFPは、アカイさんが以前、貯蓄と融資のスキームを利用した経験があることから、新しい組合を設立するためのトレーニングと報酬を提供しました。元性労働者やアルコール中毒者が、地元のグループの中から知的で若いビジネスウーマンに成長していくのを見ることほど、アカイさんが誇りに感じる時はありません。
国連WFPからの収入でアカイさんは家畜を購入し、それを肥育して販売するとともに、野菜を栽培し販売することで利益を得ています。そして少しずつ小さな区画の土地に投資し続け、彼女の娘たちも所有者として登記されるようにしています。
「もし今日、私に何かあったら、この財産はすべて夫のものになります。その後に私の娘たちがどうなるか、全く分かりません」とアカイさんは話します。
ローズ・レカイラブさんもまた、自分の娘たちの将来を気にかけています。42歳の農家で野菜売りをしている彼女は、サンブル郡での貯蓄運動に参加している約1,000人の地元女性の一人です。アカイさんと同じように、彼女は融資制度を利用して野菜ビジネスを立ち上げ、その後、この地域の主要産業である家畜の売買を始めました。
レカイラブさんの長女が高校を卒業したとき、彼女はローンを申し込み、長女のために食品の売店を開き、これはのちに小さなレストランに成長しました。
「大学の学費を支払うお金がなかったから、私は娘のために小さなビジネスを始めたのです」と彼女は話します。現在23歳のレカイラブさんの娘は、町で一番大きなレストランを経営しています。
「これは農村女性にとって画期的な出来事です」とフィリス専門員は言います。この「ムーブメント」は、古くからの考えを解体し、女性たちが障壁を打ち破ろうとする原動力となっています。
国連WFPの総合的な気候適応支援活動は、ドイツ、オランダ、ノルウェー、民間ドナー、および英国の寛大な支援によって実現しました。