学校給食の普及は加速。それでもまだまだ不十分という現状。
新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)やウクライナ戦争による経済的な余波という打撃を受けた後、学校給食の普及は急速に回復し、現在、世界で給食を受けている児童の数は過去最高水準に達しています。
しかし、多くの政府が学校給食への取り組みを強化しているとはいえ、最貧国の一部はなお、資金調達に苦戦しています。ドナーからの資金提供は散発的なものにとどまっており、2030年までの実現を目指す、「すべての児童が学校生活で少なくとも1回は栄養価の高い食事をとる」という目標は、依然として遠いままです。
10月18日にパリで「学校給食連合」の第1回国際会合が開催される背景には、このように普及度に格差があるという現状があったのです。フランス主催で行われる2日間の会合には、各国および各地方自治体の首脳や議員、国連世界食糧計画(国連WFP)を含む主要推進者など、55カ国・地域から代表者が集まります。
国連WFPのカルメン・ブルバノ学校給食ユニット・ディレクターは「パリでの議論は、アジェンダを前進させること、つまり、世界のすべての子どもたちにリーチするために、プログラムの規模をいかに拡大するかという点になるでしょう」と述べています。
しかし、最貧国は、わずかな予算で膨大な開発援助需要を満たさなくてはならない状況に苦戦しています。「私たちにはまだ、この課題に対する資金調達の解決策がありません」とブルバノは話しています。
こうした問題は今週、「学校給食連合」で話し合われる予定です。2年前に設立されたこのネットワークは、90以上のメンバー国と100以上のパートナー組織が参加する規模に成長しています。
ブルバノによると、国連WFPの主要な目標は、今回のパリでの会合をきっかけに、各国政府やドナーが学校給食への投資に関心を持ち、G7やG20のような主要サミットで学校給食に関する目標が話し合われるようになること、各都市の首長や学者から新たな声が上がることで、議論が形成されていくことです。
それとともに不可欠なのが、国際金融機関などから新たな資金調達を引き出すことです。
この会合を控え、ブルバノは一つの重要な成果について指摘しています。「私たちは、子どもたちのウェルビーイング(心身および社会・経済的に健康であること)の問題を(グローバルな)話題として位置づけることができました。これほど多くの政府が何か一つのことで合意をみることは、非常に断片化された多国間主義の世界では、最近あまりないことです」。
飢餓の連鎖を断ち切る
現在、当局の学校給食予算は、ほんの数年前に比べて何十億ドルも増えており、低所得国だけでも給食費は15%となっています。
現在、世界中で学校給食の恩恵を受けている児童の数は約4億1,800万人と、コロナ禍以前の水準を3,000万人上回っています。それでも、まだ数百万人が学校給食を利用できていません。2030年までに学校給食を必要とする7億2,400万人の児童全員に給食を行き渡らせるという目標を実現するためには、大規模な取り組みが必要です。
ハイチの児童、ソロモン君は「僕が首相なら、子どもたちに1日3回、授業を始める前、休み時間、そして放課後家に帰る前に給食を出します。家に帰っても食べ物がなく、一日中おなかが空いたまま過ごすかもしれないから」と話しています。
ソロモン君のように、国連WFPの給食を食べている児童は74カ国(各国政府が推進を主導)で2,000万人います。学校給食支援の実施には複数の効果があり、農業、保健、栄養、教育などさまざまなセクターを支援しており、1米ドルの投資で9米ドル分の効果があります。
国連WFPが教育省と協力して160万人の子どもたちに学校給食を提供しているケニアでは、2024年の学校給食予算を今年(1,500万米ドル)の2倍以上の3,500万米ドルに増やす計画で、給食を提供する児童の数も、2030年までに現在の160万人から1,000万人に増やすという野心的な目標を掲げています。
ブルバノはケニアの学校給食戦略について、「地産地消率を高め、小規模農家が関われるようにしている」と述べ、これは、国連WFPの地域社会に根ざした、地元産の食材による学校給食の取り組みを反映したものだと説明しています。また、「米と豆だけでなく、子どもたちが食べる食料の多様性を高めている」そうです。
国連WFPが政府を支援し、100万人以上の児童に食料を供給しているホンジュラスでは、参加するすべての学校でクリーンエネルギーへの移行を進めようと当局が動き始めています。
国連WFPは、エチオピアの首都アジスアベバのような都市とも協力しています。アジスアベバは、独自の普遍的な学校給食を若い学生に提供しています。パリでの会合にはアダネク・アベベ市長も出席予定です。
ブルバノによれば、「学校給食はアジスアベバ市が運営していますが、私たちは技術的な支援と緊急時の守備的役割を提供しています」とのことです。
新たな取り組み
パリの会合では、各国が次々に給食への新たなコミットメントを発表し、ドナー国や他の学校給食連合参加国の賛同が雪だるま式に増えるのではないかとブルバノは見込んでいます。しかし、まだ格差は大きなままです。
国連WFPが特に緊密に協力している国々について、ブルバノは「最大の課題は低所得国であり、どうすれば学校給食の実施費用を捻出できるかということ」だと指摘しています。
「予算を削減している政府はあちこちにあり、特に脆弱国は、気候変動や災害の影響を一段と受けやすくなります」。
また、わずか7年で学校給食を普及させるには、大規模かつ長期的な資金拠出が必要になります。
ブルバノによれば、債務国が債権者に返済する代わりに、相互に合意した開発プロジェクトに投資する「デットスワップ」などの投資オプションが議題に上るとみられています。国連WFPはこれまでに、学校給食支援などの主要プログラムのために、こうした取り決め10件を交渉し、まとめてきました。金額にすると1億4,500万米ドル以上になります。
世界銀行や国際通貨基金(IMF)などから、新たに複数年融資を取り付けることも優先度の高い事項の一つです。
「最大の論点はここなのです」とブルバノは語ります。「学校給食支援の機運をいかに高め、他の意見も取り入れて、継続的に成長させるかということです」。