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「飢餓をゼロに」実現に貢献するネパールの学校給食

子どもたち、女性農家、そしてコミュニティ全体にもたらす学校給食。国連WFPの学校給食プログラムは、ネパール政府への移管が進められ、現在そのほとんどを現地の政府が引き継いでいます。
, Monica Upadhyay
WFP Programme Officer Akira Kaneko (L) faces stiff competition from these primary school kids at Shree Kakani Ganesh Primary School, in central Nepal. Photo: WFP/Srawan Shrestha
国連WFP日本人職員の金子彰さん(左)が小学校の児童と一緒にサッカーに参加する様子。ネパール中部のシュリー・カカニ・ガネーシュ小学校にて。Photo: WFP/Srawan Shrestha

ネパール中部のカカニ村にあるシュリー・カカニ・ガネーシュ小学校で、ぼろぼろのサッカーボールがフィールドの外に飛び出しました。12歳のキャプテン、ラヴィが立ち止まって耳をすますと、試合は一時中断。体育の授業の終わりを告げる学校のベルが鳴り響き、生徒たちに昼食の時間を知らせています。

「放課後のスポーツのエネルギー源になるから、給食は欠かさないんだ」とラヴィの親友ナビン(11歳)が言います。眼下の山々には家屋や段々畑が点在しています。
 

 

アジアで最も貧しい国のひとつであるネパールでは、何時間も歩いて学校に通う子、学校に行かない子も少なくありません。ネパールの5歳未満の子どもの4分の1以上が栄養不良に苦しんでおり、栄養不良の影響は成長してからも残る可能性があります。国連世界食糧計画(国連WFP)が支援する学校給食は、この状況を一変させる力を持っています。

学校給食は、幼い子どもたちが健康的なスタートを切ることを目指した広範な取り組みの一環でもあります。日本や米国などの政府の支援を受けた国連WFPの地産地消の学校給食事業のもと、ガネーシュ小学校の給食の原材料は地元の小規模農家から調達されています。ネパールでは、労働者の3分の2が農業に従事しています。

Ganesh primary school children in Nepal enjoy a hearty lunch, with the raw ingredients supplied by local farmers. Photo: WFP/Srawan Shrestha
ネパールのガネーシュ小学校の子どもたちは、地元農家から届けられた食材から作られたボリュームたっぷりの昼食を楽しんでいます。Photo: WFP/Srawan Shrestha

学校給食がネパールで始まってから半世紀近くが経過した現在、ネパール政府はこのプログラムをほぼ引き継ぎ、国連WFPは技術支援を行っています。地方自治体が連邦政府から学校給食の予算を受け取り、給食調理員の雇用、食材の調達、指揮監督など、学校給食運営の大部分を担っています。

 

「学校給食プログラムの運営を地域社会に根付かせることが、その持続可能性の鍵です」と国連WFPネパール国事務所のロバート・カスカ代表は話します。

給食のカレーとライスプディング

ガネーシュ小学校の校庭の隣には、ガスコンロと液化石油ガスのボンベを備えたトタン屋根の小さな小屋があり、給食調理員のプラティバ・タマンさんが一生懸命洗い物をしています。

「新しいキッチンのおかげで、薪を使わずにすむし、コンクリートの床は泥に覆われた地べたよりも汚れがつきにくいから、仕事がしやすくなったわ」とプラティバさんは言います。

 

彼女の鍋で煮込まれているのは、香ばしい米を牛乳と砂糖で煮た伝統的なライスプディング、キールです。黒目豆、タマネギ、ジャガイモで作った温かみのあるスパイスカレーと一緒に食べられます。野菜カレーはすでに煮込まれていて、もうお皿に盛る準備ができています。

Ganesh primary school cook Pratibha Tamang serves up dishes like blacked-eyed lentils and puffed rice, a favorite with the students. Photo: WFP/Srawan Shrestha
ガネーシュ小学校の給食調理員プラティバ・タマンさんは、黒目豆やパフライス(ポン菓子)など、生徒たちに人気の料理をふるまっています。Photo: WFP/Srawan Shrestha 



「料理は私にとっていつも楽しい時間です」とプラティバさんは話します。現在12歳と14歳になる彼女の2人の子供たちも、数年前までは学校で昼食を食べていました。 

 

「昨年8月から学校で調理された温かい給食を出すようになり、適切な手洗いと衛生設備が確保されるようになってから、体の不調を訴えたり欠席したりする生徒がぐっと減りました」と彼女は言います。

2022年、国連WFPは全国の約2,500校で25万人以上の子どもたちに学校給食を直接提供しました。国連WFPは徐々に地区の全国学校給食プログラムへの移行を進めており、地方自治体や学校が自ら食材を購入できるように現金を支援しています。

国連WFPがネパールの学校給食プログラムへの資金を削減するなか、ネパール政府は2017年から2022年の間だけでも、このプログラムへの予算をほぼ5倍に増やし、強化しています。 

Farmer Krishna Maya (L) has been supplying vegetables to  Ganesh primary school for the past three years. Photo: WFP/Srawan Shrestha
農家のクリシュナ・マヤさん(左)はこの三年間、ガネーシュ小学校に給食用の野菜を供給しています。Photo: WFP/Srawan Shrestha 

 一方、国連WFPは地産地消の学校給食を推進するため、政府や自治体への技術支援を続けています。この取り組みでは、ガネーシュ小学校の向かいの土地でタマネギ、カボチャ、ウリ、イチゴを栽培しているクリシュナ・マヤさんのような地元の農家から食材を調達しています。

「私たちは食料に乏しい厳しい地域に住んでいるので、所有する小さな土地で家族のための食料が十分に収穫できるよう懸命に働いています」と彼女は言います。

学校給食は農家の安定した収入源に

ネパールの農家の多くがそうであるように、クリシュナさんの耕作面積も1ヘクタール以下です。彼女は余った収穫物を女性組合を通じて学校に販売し、家族のために必要な収入を得ています。

「学校給食は地元農家に安定した市場を提供し、彼らの収入を増やし、地域経済を強化します」ガネーシュ小学校があるカカニ村のスマン・タマン議長は言います。 

生徒たちにとって「学校給食は、栄養価の高い食事と健康的な食習慣の大切さの意識を高める機会になります。女性にとっては、自らお金を稼ぎ、自分自身をもっと大切にすることに繋がります。」

国連WFPの調査結果でも、経済的ストレスが軽減された家庭では、ジェンダーに基づく暴力が減少することがわかっています。

School staff and families gather to watch the football match at Ganesh primary school on a Friday afternoon. Photo: WFP/Srawan Shrestha
金曜日の午後のガネーシュ小学校。サッカー観戦に集まる学校職員と生徒の家族たち。Photo: WFP/Srawan Shrestha 

「私に稼ぎがあることで、夫の肩の荷が下りました。」夫が農場労働者として別の女性農家、パルバティ・タマンさんは話します。「些細なことで言い争うことも少なくなりました。」

午後に学校が終わると、ガネーシュ小学校でサッカーの試合が再開されます。この日は金曜日なので、教師や他の学校職員も試合に参加します。彼らの家族や小さい子供たちもファンクラブに加わって応援します。

 

「ネパールはワールドカップに出場したことはありませんが、サッカーは間違いなく私たちの国民的スポーツです」とチームキャプテンのラヴィは言います。

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