南スーダンの少女に生きる力を与える学校給食
南スーダンでは、男子よりも女子の方が教育から排除されやすい状況にあります。国内のいくつかの地域では、初等教育年齢の女子の75%以上が学校に通っていないと言われています。
紛争、貧困、早婚、10代の妊娠、文化的・宗教的見解などが、少女たちの将来を妨げる教育上の不平等を引き起こす要因となっています。
実際、ユニセフの推計によると、南スーダンの少女は、中等教育を修了するよりも、出産時に死亡する確率の方が高いそうです。
国連WFPの学校給食支援は、南スーダンの1,100の学校で50万人の子どもたちに毎日温かい食事を提供しています。この支援は、就学率の向上に貢献し、親が子どもたちを学校に通わせるための不可欠な保護手段です。
特に、若い母親を貧困に陥れ、健康を害する可能性のある早婚を防ぐためにも、学校給食は重要な役割を果たします。
このような南スーダンの少女たちが直面している課題に対し、古い価値観に立ち向かい、教育を受け続け、専門資格を取得する決意を固めている少女たち、マーリンとアチョルのストーリーを以下に紹介します。
「私は医者になりたい」
マーリンは、ジュバにある孤児院と小学校に通う、内気で控えめな16歳の生徒です。
文化的に保守的な国では、女の子は教育から遠ざけられがちで、医学を学ぶこともままなりませんが、内気な彼女の胸の中には、医者になるという確固たる決意が秘められています。
「私の叔母が病気になったとき、診療所に連れて行かれましたが、きちんとした診療が受けられずに亡くなりました」と、マーリンは言います。
「その時、私は医者になるための勉強をして、人びとの命を救おうと決心したのです」
叔母の4人の子どもは孤児となり、現在はマーリンとその家族と一緒に暮らしています。
「母親が適切な診療を受けていれば、私のいとこたちが孤児になることはなかったでしょう」と、彼女は言います。
マーリンの父親は、彼女のキャリア志向にとても協力的です。「父親が持参金を得るために早く結婚をさせられた女の子を私はたくさん知っています」と彼女は話します。
「でも私の父は違います。兄と私を平等にサポートし、学校での私の成績ほめてくれます」
南スーダンでは、科学分野でのキャリアを目指している女の子はマーリンだけではありません。
「私はエンジニアになりたい」
ジュバの東ムニキ小学校に通う18歳のアチョルは、自分のキャリアに対する明確な希望を持っています。
「私の家には医者や弁護士はいますが、エンジニアはいません。なので私はエンジニアになりたいのです」
12人兄弟の5番目である彼女は、開発や建設が盛んなこの国で、エンジニアと言えば男性の職業と考えられていることを知っています。
「女性の目は細部にまで行き届くので、エンジニアリングには最適です」とアチョルは言います。
「現在、建設現場では男性ばかりが活躍していますが、私は建設現場で働く女性になりたいのです」
アチョルの父親も彼女のキャリア選択を支持しています。
彼は、娘が学校を卒業する前に娘に結婚を迫る親に対してメッセージを送ります。
「若い女の子に結婚という重荷を背負わせるのは気が引けるし、彼女たちを学校に通わせてあげれば、将来きっとあなたの自慢の娘になるでしょう」
少女に勉強を続けさせるために
少女たちの学校への出席を促すための追加的な試みとして、国連WFPは64の学校の8,000人の少女に、10kg の穀物と 3.5 リットルの植物油からなる持ち帰り用の食料配給を毎月提供しています。
対象となるのは、3年生から8年生までの学校に在籍している女子生徒です。
これは、この年齢の女子生徒が学校を退学するリスクが最も高いことが統計で明らかになっているからです。
対象となるためには、授業の80%以上に出席していることが条件となります。
「学校給食を受けるようになってから、生徒たちの国家試験の合格率が向上しました」と、ジュバのメイヨー女子小学校の教頭、メアリー・サント・ラドさんは言います。
「新型コロナウイルスによる混乱にもかかわらず、優れた結果がもたらされることを期待しています」
2020年3月、新型コロナウイルスの世界的大流行により学校が閉鎖されたことで、国連WFPの学校給食支援は中断されました。
南スーダンの子どもたちが学校の再開を待つ中、国連WFPは最も深刻な食料難に見舞われた郡に住む23,000人の子どもたちに持ち帰り用の食料を提供することで、世界的大流行が子どもたちの健康と栄養に与える影響を軽減するよう努力しています。
国連WFPの南スーダンでの学校給食支援は、中国と日本の政府、欧州委員会開発協力総局(DG DEVCO)、ドイツ国際協力機関、KFW、ドイツ開発銀行、USAIDの人道支援局からの寛大な資金援助によって支えられています。