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学校給食と教育が男女不平等の解消に寄与、カンボジア

女性教師の姿を見て、自分も教師になりたいという夢を持った少女の物語。
, Edward Johnson
高水準の学校給食支援を維持するため、日常的なモニタリングの一環として、センさんに聴き取りをする国連WFPスタッフ。 Photo: WFP/Edward Johnson
高水準の学校給食支援を維持するため、日常的なモニタリングの一環として、センさんに聴き取りをする国連WFPスタッフ。 Photo: WFP/Edward Johnson

1990年代初頭、カンボジア中部コンポントム県にある学校で、授業をきちんと受けられていなかったセンさんは、他の生徒についていくのが大変な状態でした。

休み時間になると、彼女は米麺やサトウキビジュース、家族が作ったアイスクリームを売っていたのです。

このことが、彼女の成績に影響を及ぼし、彼女は同級生からどんどん後れを取ることになりました。

その後、学校を中退し、フルタイムで家業を手伝うようになった彼女は、悔しい思いをしていました。これまでのように学校には行っているのに、それは授業に出席するためではなく、門のところでお菓子を販売するためだったからです。

ただ、すべてを失ったわけではありませんでした。数カ月、数年と校門での販売を続けているうちに、センさんは、自分が生徒として通学していたときよりも、学校に入っていく女性教師の数が増えていることに気付きました。

センさんは 「私も彼女たちのようになりたい」と思いました。「でも、私は試験に落ちた。どうしたら教職に就けるのだろう?」

30年後、センさんは教師となり、現在は、国連WFPが提供する無料で栄養価の高いおいしい学校給食を含め、学校に通い続けることの大切さを広めています。

センさんは自身が生徒だった頃を振り返り、「私は恥ずかしさで何も話せませんでした。自分は何もできないと思っていたからです」と語ります。

このことは、現在の彼女の価値観を形作っている教訓となっています。それとともに、給食には、親が娘を学校に通わせ、若者の学習意欲を引き出すためのインセンティブ(動機)としての価値があると彼女は考えています。

教室でのセンさん。一緒にいるのは生徒たちがかわいがっている野良犬。 Photo: WFP/Edward Johnson
教室でのセンさん。一緒にいるのは生徒たちがかわいがっている野良犬。 Photo: WFP/Edward Johnson

「人々が女の子は台所仕事をするものだと思っているなら、それは正しくありません。女の子が学校に行き、将来の職を得られるようにすることは大事なことなのです」とセンさんは話します。 

退学から3年後、家業が繁盛していたこともあり、センさんがそろそろ復学させてほしいと両親を説得したところ、両親は承諾してくれました。

「私の夢は叶いました」。

カンボジアの教育制度は、近年改善されてきたとはいえ、多くの子どもたちが学習を習熟させるにはまだ支援が必要です。就学の準備が不十分なことに加え、授業の質が低く、出席も不規則で、結局退学してしまうというケースがよくあります。

全日制の学校を退学する児童の数は、全就学児童の半数以上に及びます。その多くは、センさんと同様の事情が原因となっています。

女の子のやる気を引き出す
カンボジアの女子児童たち。教育が貧困の連鎖を断つためのカギに。  Photo: WFP/Vanna Sokheng
カンボジアの女子児童たち。教育が貧困の連鎖を断つためのカギに。  Photo: WFP/Vanna Sokheng

国連WFPはカンボジア政府と協力し、ジェンダーの平等、質の高い教育へのアクセス、栄養価の高い食事、カンボジアの就学前の幼児および初等教育児童への社会的支援を推進しています。

カンボジアの社会保障政策の管理・運営を担当する政府機関、国家社会保障評議会(NSPC)のナリス・チャン事務局長は「学校給食は、カンボジアの人的資本の育成、特に最貧困層の子どもたちの能力開発に寄与しています。教育を受ける機会を得ることは、世代を越えて続く貧困の連鎖を断ち切ることにつながるのです」と語っています。

センさんは、教師としての月給で、以前は手の出なかったオートバイも買えるようになりました。 Photo: WFP/Edward Johnson.
センさんは、教師としての月給で、以前は手の出なかったオートバイも買えるようになりました。 Photo: WFP/Edward Johnson.

時間の経過とともに、国連WFPとカンボジア政府は協力し、学校給食支援を少しずつ、国による完全運営へと移管させてきました。最初の大胆な取り組みは2014年に導入されました。地元農家から農産物を調達する、より地域の状況に即した「地元産」の学校給食モデルを展開し、このプログラムをより実用的で、国内で実施可能なものにしました。この取り組みは、食品の品質と安全性を保証するだけでなく、地域社会による運営を促し、地域経済を支える効果も持っています。 

センさんは教職だけでなく、他の教師や保護者数人と一緒に学校給食委員会の委員も務めています。その目的は、「子どもたちが健康的な食事をとり、学習に集中できるようにすること」だそうです。

どの地域でもこうした状況が可能なわけではありません。世界では毎日、何百万人もの子どもたちが空腹で登校し、集中力や学習能力に悪影響を及ぼしています。

センさんのように、何百万人もの子どもたち、特に女子生徒が、畑仕事や家事を手伝わなくてはならないため、学校に通えていません。

さらに、紛争の影響を受けている国々では、女子生徒が中途退学する確率は、政情の安定した国の同年齢の生徒よりも2.5倍も高いのです。

しかし、少なくともセンさんのコミュニティーでは、学校給食や地域の取り組みが変化をもたらしていることが分かっています。

「現在、女の子は台所仕事をするものだと考える人はいません。私たちは、少女たちが今後仕事を辞めることなく、続けられるような知識とスキルを学ばせたいと考えています。私たちは、これからも少女たちのやる気を引き出していきます」。センさんはそう話しています。

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