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【日本人職員に聞く】紛争と干ばつに悩むエチオピア 「しのぐ」支援から「立ち向かう」支援に

国連WFPエチオピア事務所 プログラム統括 浦香織里さん(後編)
国連WFPエチオピア事務所で働く浦香織里さんのインタビュー。
後編では、母として、女性として、そしてWFP職員として支援活動を行う、浦さんの人となりや食料支援にかける想いに迫ります。
中吊り広告から動き出した人生。母となり、WFP職員となった今

浦さんが国際協力の道を意識するに至ったのは、高校生の時、登下校中の電車の中で目にした、ある中吊り広告がきっかけだったと言います。

「最初は、英語も得意だった訳ではなくて。でも、高校の交換留学先のアメリカから帰ってきた時にその広告を見て、あっこれは面白そうだな。これはいいかもと思って」

人を助ける仕事がしたい、と漠然と考えていたこと、そして留学を経て強みと変化しつつあった英語という要素がマッチして、これをやりたいと思ったのだそうです。

そんな浦さんは現在、13歳と11歳のお子様を含むご家族と離れ、1人エチオピアで食料支援に励んでいます。「家族と離れるのはやっぱり大変です。でも大切な仕事だし、とても大きなことを任されている。簡単に辞める訳にはいかないですよね」 と、浦さんは言います。

WFP職員としてキャリアを積んでいる最中とはいえども、お子様への心配事は消えません。

「子供って、ちょっとしたことでも何か問題があると大変ですよね。特に下の子が、よく吐いてしまったりして。お医者さんに診てもらってもなかなか良くならなかったりすると、すごく心配になってしまいます」。

しかし、医者にかかれるだけでも恵まれているのだと浦さんは続けます。

「エチオピアには、子供をお医者さんに診てもらうことができない人々がいっぱいいます。乳幼児の死亡率も高い。こうした悲しみを乗り越えているお母さん達のことを考えると、胸が張り裂けそうになります」。
 

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Photo: WFP
たくましさの裏に隠された試練。彼女の目に映る人々の姿とは

医療サービスもまともに受けることのできないエチオピア。そこで活動する浦さんは、エチオピアの人々は皆、「たくましい」と語ります。

エチオピアのソマリ地域でも、ヘルスセンター(現地には設備の整った診療所がないため、病気の際に人々が行くのは、「ヘルスセンター」と呼ばれる保健所)の職員に対する給料さえも支払われておらず、WFPが給料を支払ってくれないかと頼まれたこともあるのだそう。

このような状況では、多くの子供たちはヘルスセンターに行くことすら出来ていません。生まれてすぐ亡くなる子供たちも多いといいます。生まれてからも、日本であれば助かるような病気で亡くなってしまう子供も少なくありません。

「そんな厳しい状況の中でも生きている、(支援を求めて)私のもとにやってくる子供たち。この子達は、ここに来るまでに幾つもの病気からも立ち直り、苦境を乗り越えて存在している。私を含め先進国の人たちがアフリカに来るとすぐ病気になったりしますが、耐性のない私たちと比べると、本当にたくましいなぁ、と思います」。

だからといって、支援が必要でない訳では決してありません。

そういえば、この3か月間WFPから食料が来てないなあ。そう思っているうちに、子供たちが病気になってしまった。保健所に連れて行こうと思ったけれども、保健所の職員さんたちは紛争に駆り出されてしまい、そもそも人がいない。治療ができず、支援物資も入らない。どうしよう、どうしようとしているうちに我が子を失ってしまった。

こうしたことが日々起こるのが、浦さんが目の当たりにするエチオピアの状況なのです。
 

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Photo: WFP
 思いをはせる。そうすれば、状況は変わるんじゃないかと思う。

飢餓というのは、ただお腹が空いている状態とは異なり、死に直結する状態のことを指します。飢餓状態になると、病気にかかる確率も上がってしまいます。
医療サービスが充実していないエチオピアで病気になるリスクは、まさに「死」を意味しているのです。

飢餓により厳しい状況に陥っているのはエチオピアだけではありません。浦さんは以前活動していたレバノンでは異なる大変な状況を見ることになったと話します。
「シリア人難民の支援をしていたのですが、レバノンは難民の受け入れ体制が整っていなかったため、難民の方々は支援がなければかなり危険な状況でした」
そうした状況の中、支援を切らなければならないという報告をした時は、非常に心苦しい思いをしたといいます。

「私には持病もあるし、そもそも健康であっても仕事が出来るとは限らない。せめて子供たちには良い未来が待っていればと思うけれど、ここでは難民である以上、働くことができる業種は非常に限られてるし…私たちには、未来なんて全くないのよ」。

難民の方にこのように言われてしまった浦さんは、支援できる人数には限りがあり(資金が用意できなければ)全ての人を支援できるわけではないことを改めて思い知ったといいます。

しかし浦さんは、「このような状況にある人たちに思いをはせる人が増えたら、こうした状況はなくなっていくんじゃないかなと思うんです」と語ります。

日本にいると、遠くの国で苦しみの中にいる人々に思いをはせる、というのはなかなか難しいかもしれません。

「最近は、ヨーロッパということもあり身近に感じるからなのか、多くの方がウクライナに支援を寄せて下っています。でも実は、アフリカでもこうした状況は同じ。このような状況に置かれている人たちの気持ちになってみることがあってもいいのかなと思います」

 

浦 香織里さん
Wesleyan University卒業後、London School of Economics国際関係学修了。投資銀行業務に従事した後、NGOにて主に緊急人道支援に従事。国連WFPギニアビサウ事務所、国連WFPモザンビーク事務所、在カメルーン日本大使館、国連WFP西アフリカ地域局、JICAセネガル事務所、国連WFPローマ本部、WFP 国連世界食糧計画(国連WFP)南部アフリカ地域局を経て、2020年から現職。

 

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