襲い来る砂漠化、懸命の緑化活動
西アフリカ、サハラ砂漠の南側に位置する「サヘル地域」の国々は、地球規模の気候変動に伴い、厳しい干ばつや砂漠化の脅威にさらされています。特に収穫直前の6~9月ごろは「リーン・シーズン」と呼ばれ、最も食料が足りなくなる季節です。
中でも今年のリーン・シーズンは、過去4年で最悪の食料不足に見舞われています。このため国連WFPはサヘル地域を、最も緊急性が高い「レベル3」地域に指定し、支援規模を拡大しようとしています。
サヘル地域にあるモーリタニアは国土の4分の3が砂漠に覆われ、残されたわずかな土地も砂に侵されつつあります。人々は暮らしを守るため、砂漠化をせき止めようと懸命の緑化活動を続けています。
「私たちの生活は、植物がここで育つかどうかにかかっている。だから木々を愛し、守るのです」
モーリタニア南部のある集落の村長、タリベ・セルマン・カマラは力を込めてこのように語りました。
「村は進む砂漠化によって、危機的な状況にさらされています。村民は一人残らず危機に巻き込まれているのです」
別の村の議長を務めるマータラ・オウルド・ムバラクも訴えました。
モーリタニアでは2001年までの約40年の間に、南へ200㎞も乾燥地域が広がり、1970年以降、15万平方㎞が砂漠になったと推定されています。
さらに近年、南部に残されたわずかな緑地でも、砂漠化がじわじわと進んでいます。
繰り返し起きる干ばつで土地が荒れて農作物の収穫が減り、人々の生活を脅かしています。収入が減って貧困に陥り、食料を買うことができなくなった農家もあります。人口の4分の1は、十分な栄養と食事を摂れていません。
砂漠化に歯止めをかけるため、南部の集落は土壌の固定や植栽に取り組んでいます。
砂漠化は、極端な乾燥によって土壌から水分が失われ、植物が育たなくなる現象です。主な原因は気候変動による少雨や急激な温度変化ですが、人間も家畜を放牧しすぎるなどして、砂漠化に一役買っている場合があります。
緑化の過程は2段階に分かれます。まず機械を使って砂丘を網で覆い、砂を固定しますが、これは一時的な対策にすぎず、4~6カ月ごとに網をメンテナンスする必要があります。
2段階目は、木などを植えて土地を安定させます。植えた木々は時間の経過とともに根を張り巡らし、恒久的に砂を固めてくれます。木を植えた場所は家畜の食害を防ぐため、フェンスで囲います。これまでに28万本の苗木が植え付けられました。
ある集落の村長は「少しずつ成果が見え始めています」と話しました。「全村民が総出で緑化作業に取り組み、これまでに村の周囲の土地50ヘクタールを安定させることができました。今後も規模を拡大する計画です」
国連WFPは同国の環境・持続的開発省と共同で、住民による緑化の取り組みを支援しています。2017年8月までに525ヘクタールを安定化し、今年はさらに300ヘクタールに木を植える計画です。