難民に力を:チャドからエルサルバドルまで、国連WFPがクリーンな調理器を提供
ナディファ・イブラヒムさんは、彼女の小さな泥の家で、最近支援された、ずんぐりとしたガスボンベとバーナーを誇らしげに披露します。これを使って彼女は地元産の濃いお茶を淹れポットに注ぎます。
スーダンのダルフール地方出身で、現在はチャド東部の難民キャンプに住むナディファさんは言います。「効率的だし、とても役に立ちます。それに薪を探しに行くときに殴られることもありません。」
「この違いは大きいですよ」と彼女は家族8人分の食事を作りながら付け加えました。「ガスからは灰が出ないし、薪も必要ありません」。
液化石油ガス(LPG)を熱源とするナディファさんの新しい調理器は、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が共同で試験的に実施しているクリーンクッキング構想の一部であり、チャド東部の6つの難民キャンプにある5,000以上の家族と数十の地元業者を対象としています。
チャドからエルサルバドルに至るまで、国連WFPは草の根レベルや政府レベルで、よりクリーンで環境に配慮した調理器を推進しています。これは、環境、健康、安全面において大きな効果が期待でき、世界で最も弱い立場に置かれたコミュニティのひとつで時間とコストの削減につながります。
ラファエラ・ベランカ国連WFPエネルギー問題担当首席顧問は言います。「近代的な調理器を使えば、人々はどれだけ生活が楽になるかを実感します。変化が起こるのはこの時です。」
「これは大きなジェンダー課題でもあります」と彼女は付け加えます。「この調理器により、農業のような生産的な活動のために女性の時間を解放できるからです。多くの小規模農家は女性なのです」。
太陽光やガス、あるいは単にエネルギー効率の高いかまどなどでも、クリーンな調理器の選択肢を広げることで、気候変動や環境危機と闘う国々に大きな変化をもたらすことができます。不足しがちな薪集めに伴う共同体間の争いや、特に薪集めに従事する女性への暴力を減らすことができます。
サハラ以南のアフリカだけでも、人々のエネルギー需要の60%以上が依然として木炭や薪を燃やすことで満たされているとアナリストは推定しています。木炭や薪は、時に致命的な呼吸器疾患やその他の病気に関連する有害な煙を発生させます。またアフリカの森林減少の約半分は、木材や薪のための樹木の伐採によるものであり、それが気候危機を助長しています。
太陽光を利用して、森林を守る
しかし、クリーン調理器を人々の生活に浸透させるには時間がかかります。例えばチャドでは、クリーン調理器を使っている住民はわずか3%であることが、国連WFPの調査で明らかになりました。
「調理には大量の熱エネルギーが必要なので、エネルギー効率を向上させる可能性は非常に大きい」とベランカ首席顧問は述べ、環境に優しいエネルギーが排出削減に与える影響について説明します。「例えば、学校に配備される施設用ストーブは、1台で年間平均40トンの炭素を削減することができます。」
広大な砂漠に難民のテントが広がり、木がまばらに生えているだけのチャド東部クヌウゴウ難民キャンプでは、ガスなどのよりクリーンなエネルギーが、この地域の伝統的な調理法(石を3つ置きその間に薪を並べ火を起こして鍋を温める) に代わる安価で、唯一の代替手段となる可能性があります。
「薪を集めるのにとても苦労しています」と、同じくスーダン出身で難民として長年生活してきたダル・アッサラム・ユスフ・アダムさんは言います。「牛の糞を使うこともあります。時にはそれさえないこともあります。」
国連WFPは学校にもクリーンエネルギーによる解決策を提供しています。たとえばモーリタニア南部では、国連WFPは6つの学校でガスコンロを試験的に導入し、1,500人近い子どもたちに心のこもった食事を提供しています。
他の地域では、国連WFPは太陽光を利用した解決策を提供しています。例えば、パートナーと協力して、ギニア南部の2つの小学校にソーラー調理器を導入しました。さらに、主に女性のキッチンスタッフに対して、より良い食料貯蔵と調理方法についてのトレーニングを行いました。
エルサルバドルでは、3つの大きな公立学校でソーラーキッチン一式を試験的に導入し、今年後半には数百人の生徒に国連WFPの食事を提供する予定です。資金が得られれば、国内の他の地域や他の国々にも展開する予定です。
「私たちは約3週間でソーラーキッチン1台を作ることができます。」と、カルロス・プラッツ国連WFP産業技師は、寄贈された輸送用コンテナを改修して作られたキッチンシステムについて話します。
持続的な変化
草の根レベルの変化とともに、国連WFPは各国政府と協力して、今後数十年の間に健康と環境に利益をもたらすことができる、より総合的な調理改革を実現しようとしています。
タンザニアでは木炭と薪の取引が急増し、世界で最も急速に森林減少が進む一因となっています。現在、政府の新たな計画では、10年間でクリーンな調理器と持続可能な代替エネルギーへの移行を目指しています。
国連WFPは市民社会グループと協力し、今年初めに会議を開催するなどし、持続可能でクリーンなバイオマスエネルギーの地域展開に関して具体的な選択肢を特定し、この長期計画に反映させようとしています。
「私たちは、投資改革とクリーン調理器の取り組みのための提言を行っている大統領委員会とのつながりを強化しました」と、ブライアン・ボガート国連WFPタンザニア事務所副代表は述べています。
国連WFPはまた、学校向けの太陽光発電による灌漑やストーブの開発など、国内の他のクリーンエネルギーによる解決策にも取り組んでいるとボガード副代表は話します。
「国連WFPの役割は、国家レベルでの問題提起と、私たちがサービスを提供する地域社会に解決策をもたらすためのプラットフォームを提供することです」とボガード副代表は言います。
食の安全保障とは、単に食べるのに十分な量を確保することではなく、人々の健康と人々が生活する環境を維持する方法で調理することも含まれる、とボガード副代表は付け加えます。
「もし私たちが食料消費だけに焦点を当て、その準備と生産に焦点を当てなければ、短期的な食の安全保障には対処できますが、長期的な食料不安を助長することにつながります。」