小規模農家が新しい市場を開拓
深刻な干ばつの影響に苦しむ、アフリカ東部の「アフリカの角(Horn of Africa)」地域。国連WFPは同地域のケニアで、干ばつに強い農業を推進しています。灌がい施設の整備とともに、小規模農家から学校給食の食材を購入することで安定収入を支えています。
誇れる父親になりたい
ジャクソン・アクレ(44歳)はケニア北部のトゥルカナにある小規模農家組合の一員です。この組合は国連WFPの支援により、かんがい施設を導入しました。
ジャクソンは若い頃に視力を失ったため、自分で農作業をすることができませんが、合計1.8ヘクタールある土地の収穫高をあげるため、日々熱心に取り組んでいます。二人の妻だけでは人手が足りないため、畑で働いてくれる人を雇っています。ジャクソンには14人の学校に通う子どもがいますが、一番上の子どもは今年中学校を卒業します。ジャクソン自身は、きちんとした教育は受けられませんでしたが、子どもたちを大学まで行かせられるぐらい畑の収穫を増やしたいと話します。
彼は視力を失っても、何をしたいのかははっきり見えています。「地方行政には農業の機械化を進めてほしい。耕したり掘ったりがもっと早く簡単になりますから」とジャクソンは期待をしています。
地元の野菜を学校給食に安定供給
「私たちは学校給食用に、ソルガム豆200袋、ササゲ豆200袋を国連WFPへ卸しています」と話すのは、組合の事務員をしているシルベスター・エカイです。「組合としてまとまって卸すのはこれが初めてです。従来は地元の市場で生産物を個別に売っていました」
国連WFPは地元での食材調達を推進しており、既にバリンゴ、トゥルカナ、そして西ポコットの3地域で実施されています。目的の一つは、地元の食材を使って子どもたちの食事を多様化することです。トゥルカナ地域では、ササゲ豆とソルガム豆は入手しやすく栄養価が高いため、降雨量の影響を受けがちなトウモロコシやその他の豆の代用品とされています。
国連WFPとの事前契約は、ジャクソンが所属する組合の生産物の売り先を保証するとともに、小規模農家にとっては学びの機会と安心につながっています。彼らは今後他のマーケットも開拓していきたいと意気込んでいます。
「組合として収穫物を販売するのは良いことです。私たちは共同で市場を探せますし、より好条件で価格交渉ができるからです」とジャクソンは言います。「国連WFPはシーズン開始時に契約を結んでくれるため、収穫物の販売先があることが安心に繋がっています。」
生徒たちに安全で栄養のある食事を
小規模農家組合は、その他様々な支援を受けています。例えば、水分計や秤、麻袋を縫うための機械や製粉機などの機材提供、生産物のロスや汚染を防ぐためのトレーニングなどがあります。
「ここで私たちが育てた食物が自分たちの子どものために使われるなんて、親としては嬉しい限りです」とシルベスターは言います。「地元で収穫されてから学校へ届くまではほんの短い間しか保管されていないため、安全な食材だと保証できます。」
災害に強い農業を確立するために、国連WFPはトゥルカナ地域の小規模農家に対し、適正な保存庫の建設や、収穫物の安全性と品質を保つための取り扱いのトレーニングも行っています。組合は、農作物を学校給食だけでなく、市場にも販売できるほど成長しました。
地産地消給食の多様化
「我々は文化的に受容可能でケニア北部の気候に合った農作物を生産できるよう、農家の人々を指導しています。」と、トゥルカナの国連WFPの農業オフィサーのガブリエル・エカーレは話します。「給食の調理担当者にレシピや調理方法を教えることで、栄養豊富なおいしい食事を提供できます。」
国連WFPは2018年10月、給食事業をケニア政府へ正式に移管しました。現在は中央省庁や地方自治体と共に、給食の献立に新たにソルガム豆やササゲ豆を導入するための取り組みを行っています。この連携事業は国連WFPの組織の能力強化及び技術支援の一環として、移管後もケニア政府に提供しています。