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ケニア:障がいを抱えて暮らす、ある農家が成功への道筋を探し当てるまで

国連WFPの研修を受けた、ある起業家が、人びとの偏見と気候変動による打撃を乗り越え、コミュニティのリーダーとなりました。
, Lisa Murray, Patrick Mwangi
 WFP Kenya/Arete/Fredrik Lerneryd
多様なスキルを持つ農家のジェームズ・エシニエンさん。すべての卵を一つのバスケットに入れないようにアドバイスします。 Photo: WFP Kenya/Arete/Fredrik Lerneryd

ジェームズ・エシニエンさんの父親は、彼が2歳の時に彼を介護施設に送りました。ジェームズさんが生まれつき持っていた片足が不自由という障がいを「呪い」だと考えていたからです。

それから10年後に彼は家族のもとに戻りましたが、父親の考えは変わっていませんでした。「父は私を追い出し、私は近くの学校に避難しました」と、エシニエンさんは振り返ります。エシニエンさんはケニアのトゥルカナ郡にあるカクワニャン村に住んでいます。この地域では深刻な干ばつにより、家畜を飼って生計を立てていた多くの牧畜業者が、作物の栽培に切り替えています。

「学費の工面に苦労しましたが、アルバイトと貯金でなんとか1年生と2年生を修了するまで通うことができました。しかし、お金が底をつき、退学せざるを得なくなりました」とエシニエンさんは話します。

幸いにも、村の貯蓄貸付組合に積み立てた資金で、彼は中古のオートバイを購入しました。彼は、そのオートバイで人びとの雑用を引き受けたり、タクシー事業を行うための運転手を雇いましたが、残念ながらその運転手は「約束通りに[私の取り分]を支払ってくれませんでした」と彼は振り返ります。それでもめげずに、彼は現金収入を得るためにオートバイの運転を学びました。

自立のための懸命な努力にもかかわらず、エシニエンさんは依然として「障がいがあることや学校を卒業していないことに対する仲間からの批判」に直面していました。

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干ばつに見舞われたケニアの一部では、多くの牧畜業者が家畜の飼育から作物の栽培に切り替えています。 Photo: WFP Kenya/Arete/Fredrik Lerneryd

2021年、彼は井戸から自宅までパイプで引かれた水を使って「小さな家庭菜園」を始めました。やがて、家庭菜園で作ったもののうち余った野菜を地域の人びとに売り始めました。そして偶然、国連WFPに出会いました。「国連WFPのチームは私を励まし、農業のアドバイスをくれました。国連WFPはフェンスや配管、5,000リットルの貯水タンクも提供し、土地の整備を手伝ってくれました。」

エシニエンさんは、人生を立て直すために彼がしてきた努力の一例を話してくれました。「父を説得して2.8エーカーの土地を分けてもらい、国連WFPはその土地をさらに開発してくれました。」

「私が心に刻み付けていることの一つは、障がいが私の将来を決めるわけではないということです。片足が動く限り、私は外に出て働き続けます。」

ケニアでは気候変動による異常気象が頻発しており、多くの牧畜業者が限界に達しています。2021年から2023年にかけて、ケニアは過去40年間で最悪の干ばつに見舞われ、5年連続で雨季に雨が降らず、また記録的な洪水にも見舞われました。

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国連WFP職員と農業研修に参加するエシニエンさん。農業以外にも、数多くのビジネススキルを身につけました。 Photo: WFP Kenya/Arete/Fredrik Lerneryd

家畜が干ばつで死んだり、洪水で流されたりする中、何千もの牧畜業者は、家族を養うための別の方法を模索しました。エシニエンさんの村では、かつて不毛の土壌に魔術をかけて肥沃な土地に変えたとして非難したエシニエンさんのような農家に、多くの人が助言を求めました。

国連WFPがマスターカード財団と提携して実施した若者向けイノベーション・チャレンジに参加したエシニエンさんは、気候変動に強い農業技術、事業開発、灌漑設備について学びました。

ケニアの人口の3分の1は若者で占められています。その多くは失業しており、その多くが地方から都市部への移住を余儀なくされています。

エシニエンさんは「農家サービスセンター」としての研修を受けるために選ばれました。この研修では、地域の農家と市場や供給品を結びつける、信頼できる農業起業家を育成します。

彼は、国連WFPが後援するビジネス開発、リーダーシップ研修、気候変動対応型農業研修に参加したケニア人の5万8000人のうちの1人でした。彼は国連WFPから提供されたタブレット端末を使用して対面およびオンラインのセッションに出席し、他の若い指導者とつながり、彼らから農業の成功事例を学びました。

国内の別の乾燥地帯であるマクエニへの旅行中、彼は車椅子を使う農家に出会いました。「彼の農場は緑がとても豊かでした」と彼は言います。「他の若者に仕事の指示をする彼を見て、私はこう思いました。『私の一本の足は動き、車椅子にも乗っていない。なのに、なぜこの人よりも多くのことができないのだろうか』」

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「ザイ」と呼ばれる穴を掘るエシニエンさん。これにより、スイカなどの作物を栽培できます。 Photo: WFP Kenya/Arete/Fredrik Lerneryd

エシニエンさんは、ザイ(水分を保持し、植物の根に水を導くために掘られた水溜め)でスイカなどの作物を育てる方法や、家禽の飼育など、さまざまな技術を学びました。

損益のモニタリング、質の高い原材料の調達、より大口の買い手の発掘などのビジネススキルを身につけたおかげで、彼の収入はわずか2年で1日あたり約1.50ドルから35ドルに増加しました。

家族を養いながら、妻の教育費を払い、エシニエンさん自身の勉強も続けることができ、現在は農業の学位取得を目指して勉強中です。

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家族を養うことで、エシニエンさんは地域社会の模範となる存在となっています。 WFP Kenya/Arete/Fredrik Lerneryd

以前は障がいを理由に彼を拒絶していた家族が「今は私を訪ねてきて、私を人間として見てくれてます」と彼は言います。

プロジェクトに参加して以来、彼は15のグループの女性(200人以上)に養鶏などの気候に優しい農業ビジネスについて指導し、作り手と買い手を結び付け、融資や資材調達先との連携を支援してきました。

彼の努力のおかげで、彼の村は干ばつが襲っても人道支援に頼る必要がなくなりました。「以前この地域は、乾季には砂漠のようでした」と彼は言います。「しかし、今は変わりました。私は皆に言います。私たちは村を立て直し、成長させることができると。」

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