ウクライナ戦争以前から過去最大のニーズ:食料危機に関する報告書
急性食料不安に陥り、緊急の命を救う食料支援や生計支援を必要とする人の数が憂慮すべき割合で増加し続けていることが、新しい調査により明らかになりました。
本日発表された「食料危機に関するグローバル報告書」は、食料危機が起きたあとに対処するだけではなく、根本原因への対応がこれまで以上に喫緊の課題となっていることを裏付けています。
急性食料不安は適切な食料を消費できないことによって生命や生活が緊急的な危険にさらされている状態であり、慢性の飢餓(十分な食料を長期にわたり摂取できないことで通常の活発な生活を保てない状態)とは異なります。
WFP国連世界食糧計画(国連WFP)を含む国連機関、欧州連合(EU)、政府および非政府組織の連合体である「食料危機対策グローバルネットワーク」が発行したこの報告書は、この課題の規模を明らかにしています。
食料不安を測定する世界標準である総合的食料安全保障レベル分類(IPC)によると、2021年には53の国・地域で約1億9300万人が危機的レベル以上の急性食料不安を経験しました。
これは過去最大であった2020年比で、約25%、3,800万人という劇的な増加を示しています。
このうち、エチオピア、マダガスカル南部、南スーダン、イエメンの57万人は急性食料不安で最も深刻なカタストロフィー(IPC/HCフェーズ5の壊滅的飢餓)に分類され、広範囲にわたる生活の崩壊や餓死を食い止めるための緊急の行動が必要とされています。
過去の報告書のいずれの版でも取り上げられた39の国と地域については、危機的、もしくはより深刻な(IPC/HC3もしくはそれ以上)食料不安に直面している人の数は2016年から2021年にかけてほぼ2倍になり、2018年以降も毎年上昇が続いています。憂慮すべき傾向の原因には、相互に作用している複数の要因があります。貧困や不平等といった根本的要因に加え、紛争、環境や気候危機、経済、健康・医療危機が挙げられます。
紛争は引き続き食料不安の最大の要因となっていると報告書は示しています。その分析には、ウクライナでの紛争の影響は含まれていませんが、ウクライナ戦争はすでに世界の食料システムが相互に繋がっていること、またその脆弱性を浮き彫りにし、世界の食料、栄養安全保障に深刻な結果をもたらすと指摘しています。
ウクライナ戦争:農地が戦場に―世界的な飢餓への影響に対する懸念
すでに深刻なレベルの急性の飢餓に苦しんでいる国は、東ヨーロッパでの戦争によってもたらされたリスクにさらされやすくなっています。とりわけこうした国は、食料や農業生産に必要な物資の輸入に大きく頼っていること、世界の食料価格のショックに脆弱であることが指摘されています。
報告書は、食料へのアクセスを解消し、長期的な悪化傾向を止めるために、最前線の人道対応として小規模農業へのさらなる優先化が必要であることを示しています。外部の資金の配分のための構造的変化を促すことで、長期的な開発への投資によって人道的支援を減らし、飢餓の根本原因に取り組むことができると述べています。
包括的で調整されたかたちで人道、開発、平和維持活動が提供されるように、連携したアプローチを強化していくこと、また意図しない結果としての紛争の激化を確実に避けていくことが強靭性と回復力を高めることにつながります。
EU、FAO、国連WFPと米国国際開発庁(USAID)、世界銀行は共同声明で次のように述べています。「構造的な農村での貧困、疎外、人口の増加、脆弱な食料システムといった食料危機の根本原因に持続的に取り組んでいくためには、予防、予見、注力を統合的に行うための大規模な行動が求められています」
国連WFPの数字
2022年 ― かつてないニーズが発生している年
- 国連WFPが活動する81カ国では、ウクライナ紛争が収束しない場合、急性飢餓が4700万人増加すると予測されています。これは17%という驚異的な急増で、サハラ以南のアフリカで最も高い上昇率となっています。
- 今年初め、国連WFPが支援する81カ国では、すでに2億7600万人が急性飢餓に直面していました。これは過去最大で、パンデミック前に比べて1億2,600万人増加したことになります。
- 国連WFPによると、38カ国で少なくとも4400万人が飢きんの瀬戸際に立たされており、世界全体の人道支援ニーズは増え続け、今日ではかつてないほど高い水準にあります。この数字は、2019年の2700万人から増加しています
- 約73万人が飢きんのような状況に直面しています(IPCフェーズ5)。このうち約40万人はエチオピアの一部のティグライ危機の影響を受けた人びとで、これは2011年のソマリアでの飢きん以来最も多い記録であり、残りはイエメン、南スーダン、ソマリアに住む人びとです。