南スーダン:少女たちの学校生活を支える学校給食
南スーダンの東エクアトリア地方にあるトリトのグレース・コミュニティ・スクールの一日は早く始まります。生徒たちが到着するよりもずっと前の朝6時半、先生や料理人たちはあわただしくその日の準備を進めています。
学校の給食室では、昼食の準備のためにたくさんの鍋を火にかけます。まだ早い時間ですが、料理人は403人の生徒全員分の大きな鍋をかき回しながら、穀物や豆類を朝からじっくりと炊き上げていきます。
朝7時半ごろ子どもたちが到着すると、学校のあちらこちらで楽しそうなおしゃべりをする声が聞こえ始めます。
10代後半のジェニファーさんは初等科の最終学年に在籍し、将来は医療関係の仕事に就き、できれば助産師になって母親たちを助けたいという夢を抱いています。
「私の好きな科目は理科です。先生がとても好きで、だからその道を進みたいと思います」と彼女は語ります。
ジェニファーさんのように毎朝授業に参加することは、世界の多くの人が当たり前のこととして受け止めています。しかし、ここ南スーダンでは、毎日出席できることは非常に稀です。
この国は世界で最も識字率の低い国のひとつで、文字を読むことができる人は3分の1にすぎず、280万人の子どもたちが学校に通っていません。
世界的な食料危機は、この国では痛切に実感されています。ウクライナ戦争以前に比べ、トリトでは配給食料のコストが70%上昇しています。トウモロコシや小豆など、一部の主食は最大140%上昇しています。
農作物が洪水や干ばつで壊滅的な被害を受け、食料価格がさらに上昇したことで、生徒たちの家族もまた、気候危機の影響になすすべもなく、苦しい状況が続いています。
また、国内の一部地域では紛争が続いているため、子どもたちを学校に送ることが難しくなり、中途退学率も高くなっています。
特に少女たちの間で、途中退学は多く見られます。多くの少女は、14歳ほどで結婚し、すぐに子どもを産むことが期待されています。そして、退学を余儀なくされます。
2018年には、15万6千人以上の女子生徒が初年度に入学しましたが、最終学年まで残った生徒はわずか5千人余りです。また2020年の報告書によると、南スーダンでは40%の少女が18歳までに結婚しています。
しかしジェニファーさんは、これを当然のこととは受け止めていません。
「早婚には何のメリットもないと思います」と彼女は言います。「家族にとって何がベストなのかを理解し、迷信の罠に陥らないためには、教育が重要です。多くの家庭では親が教育を受けておらず、どのように子どもを育てればいいのか分からないことが問題なのです」
南スーダンの都市部では、国連WFPとユニセフの共同プロジェクトの一環として、レジリエンス、就学率、栄養状態を改善する目的で学校給食が提供され、生徒が学校に通い続けるための重要な励みとなっています。
多くの学生にとって、この一食が生命線となる場合があります。この食事がなければ、彼らの生活は大きく変わっていたでしょう。栄養価の高い唯一の食事であり、親にとっても子どもを学校に通わせる励みになっています。また、家庭でのプレッシャーから解放され、勉強に集中できるようになる生徒もいます。
社会人1年生のジェームズさんも、この学校の生徒の一人です。
「私は父を亡くし、家族にはあまりお金がありません。ですから、私はボダボダ(オートバイ)の運転手として働いて、自分の授業料を払いながら、家族を支えています」と彼は言います。
学校で給食を食べ、兄弟たちも給食を食べることができたので、ジェームズさんの悩みは1食分減りました。そして、将来のことを考える余裕も生まれます。
「南スーダンでは、医療サービスが不十分なために多くの人々が苦しんでいるので、私は自分のコミュニティを支えるために医師になりたいと思っています」と彼は語ります。
彼のような意欲的な学生にとって、学校給食という支援は非常に貴重であり、それは彼自身にとどまらず、家族や地域社会への貢献にも波及することになります。
南スーダンの学校給食は、ドイツ開発銀行KfWが国連WFPとユニセフに資金を提供することで実現し、同国の都市中心部の55万人を4年間共同で支援しています。国連WFPは今後も学校給食や栄養支援、レジリエンス強化のための活動を続けていきます。