ウクライナ避難民、モルドバで故郷の味と再会
タチアナさんは毎朝、日の出前に起きて、30kmほど離れたモルドバ中部の都市クリウレニにある職業訓練学校に通います。
彼女はこの学校の料理長として40年間働いてきたことを誇りに思っていますが、今年から同校がウクライナ戦争からの避難民を受け入れ始めて以来、自分の仕事が特別な意味を持つようになりました。
「私はいつも、食べる人に故郷を思い出してもらえるような料理を作ろうと心がけています。ここで幸せになってほしいからです」と、タチアナさんは温かい笑顔で語ります。
1992年のモルドバで発生した紛争からの退避という幼少期の体験を持つ彼女は、戦争によって自分の世界全体が覆される気持ちを知っています。そのため、現在世話をしている人たちに思いやりと謙虚さをお裾分けすることを自分の使命としています。
現在、40人の子どもを含む75人余りのウクライナ避難民が、国内にある69の避難民宿泊施設の一つであるこの学校の寮に住んでおり、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)はそのうち42の施設を支援しています。
厨房設備がない宿泊施設には、1日3回、ケータリングによる温かい食事が提供されます。クリウレニ校のように、政府認定の厨房設備を持つ施設は、地元の商店で食材を購入するための商品券を受け取り、その場で調理をすることができます。
これまで国連WFPは、温かい食事と商品券を合わせて、モルドバ国内の宿泊施設に収容されている避難民に100万食以上を配給してきました。
避難民への支援は、モルドバへの避難民流入に対する国連WFPの広範な対応の一環です。私たちはまた、彼らを受け入れている12,000以上のモルドバの家族に現金支給を行っており、3月以来、400万米ドル以上が現地経済に投入されています。
クリウレニ校にとって、国連WFPの支援は地元の方々の善意に頼らなくて済むことを意味します。
「地域から資金を集めなければならなかったので、とても大変でしたし、少し引け目を感じる時もありました」と、施設長のヴァシレさんは言います。「今は、この回数券のおかげで、完全に自給自足ができるようになりました」。
厳しい冬の到来を前に
ここでは、その日の献立を決めるのは、ここにいる避難民たちです。1日の終わりに、コックのタチアナさんたちが次の日に食べたいものを聞くので、食事はいつもバラエティに富んでいます。
「特に子どもたちに食事に飽きてほしくありません。彼らには栄養のある食事が必要です。そのため私たちは牛乳、野菜、トウモロコシ製品、肉、さらには新生児用の粉ミルクまでも買います」と、副料理長のヴィオリカさんは熱心にメニューを説明します。
看護師でもあるヴィオリカさんは、1歳から82歳まで幅広い年齢層の避難民の食事に対応するため、施設のスタッフに加わり、メニューのコーディネートを担当します。
紛争が始まった当初は150人ほどいましたが、その後、避難民がヨーロッパの他の地域に移動したり、ウクライナの自宅に戻ったり、親戚の家に引き取られたりして、その数は減少しています。
モルドバでは最近、国境周辺で小康状態が続いていますが、嵐の前の静けさのようにも感じられます。今年の食料や燃料価格の高騰により、非常に厳しい冬の到来が目前に迫ります。ウクライナでの戦闘が激化し、新たな避難民が流入する可能性もあります。
「戦争が一刻も早く終わることを願っています」と、施設長のヴァシレさんは言います。しかし彼は、今後数カ月でさらに多くのウクライナ人が到着すると予想しています。
「私たちはここでできるだけ多くの人を助ける用意があります」と彼は付け加えます。
職業学校としての機能を維持しながら最大250人の収容が可能なこの施設は、避難民を収容するための十分なスペースがあります。
毎月、学校には国連WFPの回数券が送られ、1人1日100レイ(約5米ドル)に換算されます。
「この回数券のおかげで、ここの難民は十分な食事をとることができます」とヴァシレさんは言います。
モルドバで国連WFPが提供する温かい食事は、日本政府と欧州委員会人道援助・市民保護総局(ECHO)からの寛大な寄付によって実現されています。