コンゴ民主共和国でエボラ感染拡大:コロナとのウイルス二重苦
国連WFPは、致死性の高いエボラ出血熱が発生したコンゴ民主共和国の支援を行う準備が出来ています。
コンゴ民主共和国(以下、DRC)では既に新型コロナウイルスとはしか感染の両対応に追われている中、11度目のエボラ感染が発生しました。
エボラ出血熱は、「エボラ川」流域付近で1976年に初めて確認されたことが由来となっています。症状が出ている患者の体液等から感染し、近年発生時は接触歴があった患者の2/3が死亡しました。
「過去にエボラ流行歴があるDRCでさえ懸念する事態です。全て終息させるには、"ヘラクレス"級の力が必要です」と、国連WFPのDRCエボラ対応担当官は警戒感を高めています。
今回のエボラ発生は、DRC北西部赤道州のコンゴ川流域付近で、2018年にも9回目のエボラ感染が発生した地域です。24人の感染が確認され、うち13人が死亡した今回の発生源の州都ムバンダカ市は、首都キンシャサから船で1週間かかる場所にある重要な河港です。
赤道州での発生数は今のところ少数ですが、専門家はムバンダカ市、ワンガタ市、ボロンバ市等、州の広範囲に渡って感染が確認されたことを危惧しています。州都から数百キロ離れた地域へ医療関係者が行くのは容易ではないためです。
赤道州では舗装道路が45キロしか無く、米テキサス州の3倍以上の面積があるDRC全体でも、道路延長は6000キロ、舗装率も20%に留まっています。
国連WFPの人道支援航空サービスUNHASは、DRC西部にある首都キンシャサと東部のゴマ市からムバンダカ市への、医療関係者を含めた航空輸送支援を増やしました。
この度の感染拡大は、2014~2016年に11,310人もの死者を出した西アフリカエボラ出血熱流行時以来2番目に大きな流行となった10回目のエボラ出血熱の終結宣言が、6月25日に公式に出されるほんの数週間前に起きてしまいました。10回目の流行では、DRC東部の北キブ、イトゥリで3,400人が感染し、2,200人が死亡しました。紛争状態にある地域としては初のエボラ流行でした。
赤道州の郊外地域で感染拡大の兆しが見えるため、UNHASはゴマ市からMI-8輸送用ヘリコプターをムバンダカ市に向けて飛ばす計画を立てました。
「ヘリコプターの運用により、到達に2日かかっていた地域へ2時間でいけるようになります。」と国連WFPのDRC航空輸送担当者は言います。
公式ではDRCでの新型コロナウイルスの感染は6,000件とされていますが、検査数が少ないこともあり実際の数は増えると考えられているため、エボラ対応の関係者がそのウイルスを赤道州に持ち込まないよう細心の注意を払っています。全UNHAS利用者は、マスクや医療用手袋を使用し、ソーシャルディスタンスを保っています。搭乗前の検温も行われています。
前回2018年の赤道州でのエボラ流行時、国連WFPはWHOとDRC政府の支援を後援するロジスティック支援を行いました。この連携の目的は航空輸送支援と同時に、食料・栄養支援の実施でした。
終息までの約2年間、UNHASは46,000人以上の支援スタッフを乗せ、にヘリコプターや固定翼機を使い感染地及び周辺地域に支援物資を送り届けました。
空路が開かれたことにより、アクセスが難しい場所への支援が可能になりました。
国連WFPは、支援物資の保管や感染予防物資の管理等を通してWHOをサポートしました。
更にDRC東部での近年の大規模な感染事例を鑑み、国連WFPは食料及び栄養支援を感染地域に届けることで、感染の封じ込めを図り、また感染経路の特定のしやすい環境を整えました。
エボラ患者との接触歴があった人々には、週1回の診察時に、食料の配給を実施することを4週に渡り行いました。不要不急の外出を防ぐ狙いがありました。
検査を希望する人々には家族や友人に受診を促してもらい、感染者の早期発見につなげようとしました。
一部地域では食料支援を通して、エボラ対策への不信感を和らげる事が出来ました。