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国連WFPによる地産地消の学校給食が、エクアドル農村部に栄養を届けるまで

2023年に始まった栄養改善プログラムがエクアドル全土で拡大中
, Aditi Sadotra
カルロス・モントゥファル中学校の生徒たちのために、サンラファエル地区の地元農家から調達した新鮮な食材を使って、健康的な温かい給食を調理するミリアム・レベロ・カストロさん。Photo: WFP/Esteban Barrera
カルロス・モントゥファル中学校の生徒たちのために、サンラファエル地区の地元農家から調達した新鮮な食材を使って、健康的な温かい給食を調理するミリアム・レベロ・カストロさん。Photo: WFP/Esteban Barrera

マーサ・ソラノさんは毎朝2時間かけて通勤します。彼女が乗ったバスは曲がりくねった山道を進んでいきます。コロンビアとの国境に近いエクアドル北東部のカルチ県にある農村地域、サンラファエルの中心部に着くまでには、ゆっくりと考える時間が取れます。

ソラノさんは、国連WFPの支援を受けるカルロス・モントゥファル中学校の教師です。この学校には157人の生徒が通っています。

「多くの生徒が空腹で登校してきます。両親が仕事で朝早く家を出てしまうため、子どもたちは両親が夜遅くに帰ってくるまで食事をとらずに過ごすことも多いのです」と話すソラノさんの言葉には、熱意と心配が込められています。

エクアドルでは、5~9歳の子どもの21%、10~14歳の子どもの40%が朝食をとらずに登校しています。カルチ県では、子どもの慢性栄養不良率は23%となっています。

国連WFPの統計によると、病気や痛みで学校を欠席する生徒の42%は、栄養価の高い食べ物を入手できないことが原因であることが多く、エクアドルで栄養価の高い食品を入手できる世帯の割合はわずか50%にとどまっています。このことが、学習だけでなく、子どもたちが大人へと成長することを妨げていることが知られています。

エクアドル農村部のサンラファエルにあるカルロス・モントゥファル中学校で、国連WFPが支援する学校給食の効果について証言するマーサ・ソラノさん。 Photo: WFP/Gonzalo Ruiz
エクアドル農村部のサンラファエルにあるカルロス・モントゥファル中学校で、国連WFPが支援する学校給食の効果について証言するマーサ・ソラノさん。 Photo: WFP/Gonzalo Ruiz

 

国連WFPは昨年、エクアドル政府と協力して、栄養不良と貧困の程度が深刻な農村部を対象として地産地消の学校給食支援を開始しました。

このプログラムは、幼児期から初等教育段階の生徒を重点的な対象としています。

地産食材を使用するということは、農村地域の学校が地元の農家から新鮮な食材を調達できるということを意味します。これにより、子どもたちは地元産の食材で作られた栄養価の高い食事を食べることができ、農家は確実な収入源を得ることができます。

この取り組みについて、ソラノさんは「たった2カ月で、目覚ましい変化がみられたのです。これまで定期的に病気になっていた子どもたちが今では元気になり、学業成績も向上しています」と語りました。

国連WFPは今年、エクアドルの17の県で学校給食の提供を普及させ、対象となる子どもを現在の1000人から30,000人に増やすことを目指しています。

伝統的な食べ物

ソラノさんは、このプロジェクトの成功は、教師や両親、保育者、地元の小規模農家(ソラノさんが教えている生徒の家庭の多く)といった地域住民の一丸となった努力にかかっていると認識しています。

「私たちは大きな家族となり、子どもたちのためにみんなで力を合わせています」とソラノさんは語ります。


カルロス・モントゥファル中学校の保護者組織のリーダー、ラミロ・ベナビデスさんは小規模農家です。

「トマトやピーマン、タマネギなどの収穫サイクルの短いものから、アボカド、マンダリンオレンジ、レモンのようなサイクルの長い果物まで、さまざまな作物を栽培しています」と話すべナビデスさん。

「幸運なことに、ここには肥沃な土地があります。私たちは親として、食料の提供や給食の調理に積極的に貢献しています」

学校の食堂で温かい給食を食べるダニエラちゃんとクラスメートたち。 Photo: WFP/Gonzalo Ruiz
学校の食堂で温かい給食を食べるダニエラちゃんとクラスメートたち。 Photo: WFP/Gonzalo Ruiz

このような献身的な取り組みは、学校コミュニティーのウェルビーイング(心身の健康)を確保しながら、小規模農家の生計を支えるというこのイニシアティブの原動力となっている協働精神にまさに欠かせないものです。

この学校給食支援では、地域の違いに合わせてそれぞれの学校の調理室で作る給食の献立を変え、地元産の豊富な農産物を最大限に活用しています。また、学校給食を通じて、古くから伝わる伝統的な食べ物の消費を復活させることも目指しています。

これから提供される給食へのコミュニティー内での期待感を高めるために、毎週の献立表は校内で目立つように掲示されています。これらの献立は、国連WFPの栄養士によって普及された知識を使い、細心の注意を払って計画され、一回の給食それぞれに適切な量のタンパク質や炭水化物などの必須栄養素が含まれるように配慮されています。

エクアドル、カルチ県サンラファエルの学校で、昼食後に遊ぶ子どもたち。 Photo: WFP/Esteban Barrera
エクアドル、カルチ県サンラファエルの学校で、昼食後に遊ぶ子どもたち。 Photo: WFP/Esteban Barrera

この計画プロセスでは、学校コミュニティー全体が情報を共有し、積極的に関与しています。

国連WFPの栄養士フェルナンダ・サンドバルは「生徒の食生活を多様化することで、彼らは身体的・認知的発達に不可欠な栄養素を幅広く摂取できるようになり、幼少期から健康的な食習慣を身に着けることができるのです」と述べています。


ソラノさんは笑顔で、「ある生徒が私のところに来て、『先生、あなたの言うとおりでした!』と言ったのです」と振り返り、「私はそら豆には記憶力を高める効果があることを生徒に伝え、私は勉強するときにいつもそら豆を近くに置いていたということを話したのです」と述べました。

ソラノさんによると、その生徒は「以前はそら豆が嫌いで、食べたいとは思いませんでした。私は悪い成績しか取れず、何も理解できなかったのですが、テストの前に試しに食べてみたら、成績が上がったのです」と話したそうです。


学校給食支援は大きなメリットをもたらすものであり、優れた投資としての役割を果たすものです。学校給食に使われる1ドルが平均9米ドルの経済的リターンを生み出します。

国連WFPの学校給食支援は教育成果の向上に貢献しており、就学率が平均9%向上したとの調査結果もあります。また、栄養不足にも対処しており、貧血の有病率を最大20%減少させています。

ソラノさんは、今後も生徒たちの生活に変化をもたらすという固い決意を持っています。将来を見据えた彼女の希望はただ、学校給食支援が今後も次世代の人々の心に栄養を与え続けてほしいということです。

国連WFPがエクアドルで実施している地産地消の学校給食支援は、日本の皆様からのご寄付、末日聖徒イエス・キリスト教会、マスターカード財団、ライオンズクラブ財団、Fundación Favoritaからの資金援助を受けています。この学校給食支援は、カルチ県、チンボラソ県、サンタエレナ県、マナビ県で実施されています。また、国連WFPは、資金調達に寄与している分権自治政府や教育省とも協力し、一丸となって、適切な栄養摂取による機会の提供に努めています。

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