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エボラ流行、栄養不良の人々襲う【日本人職員に聞く】

, WFP日本_レポート

アフリカのほぼ真ん中に位置するコンゴ民主共和国(DRC)で今年に入って、エボラ出血熱が断続的に流行しています。5月~6月に西部で、現在は東部で流行し、9月24日までに101人が死亡しました。エボラ患者と接触があった人間も、約2000人に達しています。

国連WFPは患者だけでなく、患者に接触した人々へも食料を配り、彼らが食べ物を求めて各地へ移動することを防ごうとしています。さもなければ流行が拡大し、国境を越えたウガンダやルワンダへと流行が広がりかねないためです。

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国連WFP職員 浦 香織里さん Photo: WFP/Isabelle BAMUSAMBA

しかし紛争が慢性化してしまったDRCには寄付が集まりづらく、食べ物が必要な人々へ、必要最低限の食料を届けることも難しくなっています。南アフリカ地域事務所で、DRCの緊急支援などを担当する浦香織里が、現状を語りました。

紛争深刻化、大量の難民が流出

浦さんはDRCについて「私の担当する地域で、最も大変な状況にある国。特に子どもの栄養状態が悪く、首都から車で30分も離れれば、骨と皮ばかりにやせ細った子がいたるところにいるほどです」と話します。

南アフリカ地域事務所は、タンザニアやアンゴラ、ザンビアといった南部アフリカを管轄しています。中でもDRCはここ1,2年で、過去20年間に及ぶ内戦が南部のカサイ地域に飛び火し、さらに深刻化しました。

これまでに計78万2000人が周辺国に逃れ、アンゴラやウガンダなど、従来はDRC難民がいなかった国にも流入しています。さらに、故郷を追われ国内避難を強いられている人々も、440万人に上ります。

しかし「DRCの紛争はあまりにも長期化したため、メディアですっかり取り扱われなくなり、寄付も減ってしまっています」と、浦さん。タンザニア、アンゴラなどでは資金不足のため、DRC難民への配給食料を通常の半分に減らす事態も起きています。

「傷を治さず、絆創膏貼るだけ」支援にジレンマも

浦さんが、アンゴラに逃げてきたDRC難民の女性と話した時の事です。女性は逃げる時に子どもたちとはぐれ、まだ出会えずにいました。難民キャンプに住み、仕事をする機会も得られず「国連WFPの食料がなければ、生きていけません」と話したといいます。

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Photo: WFP/Isabelle BAMUSAMBA

一方で「配給の直後は良いのですが(次の配給の直前である)最後の4週目は食料が足りなくなり、大変です」とも語りました。

「大多数の難民は彼女のように、食料支援に頼って暮らしています。でも、(DRC難民を受け入れている)どの国を見ても資金不足が目立ちます。支援が行き届かないのは本当につらい」と、浦さんは嘆きます。

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Photo: WFP-Jacques_David

しかも、こんな苦しい状況にも関わらず、この女性は偶然出会ったおばあさんを「かわいそうだから」と引き取り、一緒に暮らしていました。自分の事だけですら大変なのに、赤の他人と暮らすおおらかさに、浦さんは心を打たれたといいます。

彼女たちは母国へ帰ることはできません。帰国してもまた襲われ、危険な逃亡生活に逆戻りする恐れがあるからです。浦さんは話します。

「私たちは、紛争を直接解決することはできません。このため私たちがしている食料支援は、傷を治さず絆創膏を貼っているだけだという無力感にとらわれることもあります。他の支援国と違い、紛争の続くDRCに関しては、まだまだ明るい未来を描くことができません」

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DRC難民から話を聞く浦さん。Photo: WFP/Isabelle BAMUSAMBA

国連WFP、エボラ患者と感染集落へ食料支援

そんな中でのエボラ発生に、浦さんら国連WFPの職員は神経をとがらせています。

「今回の流行で一番心配なのは、都市部で患者が出ていることです。これまでは山奥や過疎地で発生することが多く、封じ込めも比較的容易でした。しかし今年5月の流行は人口100万人規模の街で、首都キンシャサとの人の行き来も多く、川を経由して隣国との交易もある場所でした。現在の東部での流行も人口23万人、67万人という都市部で発生し、100万人規模の都市が間近にあります。」

西部の流行ではは初めて未承認ワクチンの予防接種が行われ、その効果もあって流行は収まりました。しかし「ああ良かったと思っていたのに(東部で)再流行し、非常に困っています」と浦さんは言います。

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WFPは国連の「輸送のリーダー」として、エボラ流行地域での航空・陸上輸送を拡大。医療スタッフや医薬品、薬を貯蔵する冷蔵庫やテントなどを運んでいます。

また患者だけでなく、感染者の出た集落の住民にも食料を届け、住民が食べ物を求めて移動することを極力防ごうとしています。

栄養不良の子を襲う感染症

浦さんは「DRCではエボラ以外にも多くの感染症が、毎年のようにいろんな地域で流行します」と説明します。今年もカサイ地域で、コレラが流行しているそうです。

DRCでは、460万人もの子どもたちが栄養不良に苦しんでおり、そのうち220万人は重度の急性栄養不良に陥っています。紛争に加え、エボラやさまざまな感染症が、弱い立場の子どもたちをさらなる苦境へと追い込んでいます。

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Photo: WFP/Jacques_David

浦さんは、日本の支援者に対して「まずは十分に食べられず、苦しい思いをしている人が世界にたくさんいるということを知ってほしい」と訴えます。

「知ってもらえれば、日本でできることはいろいろあります。寄付も一つの手段ですし、支援団体も沢山あるので、活動に参加するという選択肢もあると思います」

浦 香織里

国連WFP 南アフリカ地域局 プログラム・政策オフィサー(緊急支援、現金等による支援担当)

2001年に米国の大学を卒業、2002年英London School of Economics国際関係学修了。投資銀行から国際NGOに転じ、緊急人道支援携わった。その後国連WFPギニアビサウ事務所、モザンビーク事務所、西アフリカ地域局、ローマ本部などを経て、2014年より現職。夫と2人の娘を連れて赴任している。

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