エチオピアからの難民を支援する南スーダンのポップアップ・マーケット
市場には、伝統的な形式のお店からオンラインのファーマーズマーケットまで、さまざまな形や大きさがあります。南スーダンでは、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)がゴロム難民キャンプで「箱の中の小売店」を展開し、地元ビジネスを促進するとともに、難民が好きな食品を購入できるよう支援しています。
首都ジュバの南西約21kmに位置するゴロムには、2,200人の難民が11の村に暮らしています。このキャンプは、エチオピアのガンベラ州から避難してきた難民を受け入れるために、2011年に設置されました。
難民のための新しい市場を作るため、国連WFPはキャンプ内に移動可能保管コンテナを設置し、金属製の構造物をドア、窓、換気、セキュリティ対策を施した店舗やブースに作り変え、キャンプ住民が快適に買い物できるようにしました。
また、国連WFPは現地でサプライヤーを選定し、食料の安全性や品質、現金管理、顧客サービスなどに関する訓練を行いました。
「国連WFPとの仕事はとても気に入っています」と、国連WFPがゴロムに食料を運ぶために契約したサプライヤーの一人のムルサル・サマテルは言います。「絶え間なくお客さんが来てくれます」 ― 顧客は購入したものに自信を持っています。
公正で安定した価格を保証するため、国連WFPは各商品について、現地の市場レートを基にした毎月の固定価格を交渉しています。また、国連WFPの現場と市場の監視院が定期的に市場を監視し、食料が常に適切な量、種類、品質で入手できるようにしています。
この「箱の中の小売店」の取り組みは、ゴロムキャンプの難民コミュニティで大人気となり、住民はもはや国連WFPの食料配給だけに頼らなくなっています。
エチオピアからの難民であるアリエットにとって、3人の子どもたちのために朝昼晩と家庭料理を用意することほど当たり前なことはありません。しかし、状況が変わってからは、選択の自由は贅沢で手の届かないものとなりました。
「私は戦火を逃れ、安全を得るために自分の国から逃げてきました」と、アリエットは言います。「ここに来たときは、基本的な環境は整っておらず、まるで野宿しているような気分でした。しかし、時が経つにつれて、より快適な生活が送れるようになりました」
アリエットの家の向かいには、キャンプで暮らす何千人もの難民のニーズに応えるため、さまざまな食料や必要なものを販売する小売店が立ち並んでいます。新しくできたお店はキャンプに活気を与え、放課後の子どもたちはお店のまわりで遊んでいます。
アリエットをはじめとする難民の家族は、国連WFPの現金支給を利用して食料を購入できるようになり、人びとに選択肢と安価で多様な食生活を提供し、その過程で地域経済も支えることができるようになりました。
「これらの店ができる前は、毎月食料配給を受け取っていました。今は、家族や子どもたちのために好きなものを選んで買い、料理することができます」と、アリエットは言います。
トウモロコシ粉、米、豆は、アリエットと彼女の隣人たちが好んで買う最も人気のある食料です。この国連WFPの取り組み以前は、この街の難民はソルガム、レンズ豆、植物油、塩しか手に入れることができませんでした。
国連WFPは、人びとが必要な物資を入手しやすくする一方で、地域の市場経済を活性化させ、影響を受けた人びとを支援する小売ネットワークを立ち上げ、難民の生活に平常を取り戻させるような革新的な解決策を探しています。
国連WFPは可能な限り、食料支援ではなく現金支援を提供することで、人びとが欲しいものを購入する選択肢を与え、地域経済を強化することを目指しています。
「今、私たちは、人びとがより安く、より良い食料を入手できるよう、市場にプラスの影響を与えられるという証拠を得ており、南スーダン全体でこれを継続したいと考えています」と、国連WFP南スーダン事務所イノベーション責任者であるデイビッド・トーマスは述べています。
今年、国連WFPは「箱の中の小売店」プロジェクトを、南スーダンのレイク州、ワラップ州、北部バール・エル・ガザール州の少なくとも3つの新しい地域に拡大する予定です。これにより、より多くの人びとが国連WFPから現金支援を受け取ることができ、また、当面の必要なものを優先的に選択することができるようになります。
同様の取り組みにより、アリエットのように、より多くの親が家族に多様な食事を提供できるようになり、彼らの生活に家庭の味を取り戻すことができるのです。
難民への現金支援は、欧州委員会人道援助・市民保護総局(ECHO)、カナダ、ドイツ、スウェーデン、スイス、英国、米国の各国政府からの寛大な寄付によって実現しています。