サイクロン・モカ:差し迫る雨季と資金不足に直面する被災者たち
サイクロン・モカがミャンマーとバングラデシュの沿岸部に甚大な被害を残してから約二週間、さらに過酷な現実が迫っています。この地域は気候危機と食料危機の影響を非常に受けやすく、特に状況が深刻化する雨季をもうすぐ迎えるためです。
国連世界食糧計画(WFP)が両国のサイクロン被災者数万人に緊急食料支援を提供している最中にも新たな脅威が迫っています。資金不足による人道支援の削減です。
「今回のサイクロンは、すでに極めて不安定な状況下にあった数百万人の人びとの生活状況をさらに悪化させました」国連WFPアジア・太平洋地域副代表のアンシア・ウェッブ氏は言います。「私たちは、雨季の前に彼らが日常を少しでも取り戻すための資金を緊急に必要としています」
サイクロンの被害を受けたミャンマーのラカイン州では、国連WFPがサイクロン通過後に実施した緊急食料支援により、すでに10万7000人以上の人びとに支援が届けられました。現在、支援を最も必要としている80万人に食料を届けるため、急ピッチで支援を拡大しています。
「私たちのチームは、サイクロンが上陸する前に現地に入りました」国連WFPミャンマー国事務所のスティーブン・アンダーソン代表は話します。「24時間体制で、困っている人がどこにいても支援が届けられるよう、できる限りのことをしています。」
お米を買うお金がない
国連WFPの食料支援は、最も弱い立場にある人びとに届けられています。飢餓と栄養不良はミャンマーとバングラデシュの両国で、日常生活の一部となっています。
6年前にミャンマーから逃れてきた約100万人のロヒンギャ難民が暮らすバングラデシュのコックスバザール難民キャンプでは、10人に4人以上の子どもが慢性的な栄養不良に陥っており、約半数が貧血状態にあります。彼らは生活を国連WFPなどの人道支援機関に頼っています。
ミャンマーでは、サイクロン・モカによって、紛争や政治・経済危機によってすでに深刻化していた飢餓がさらに悪化しています。実際、ラカイン州でサイクロンによる被害を最も受けた人の半数は、紛争で避難してきており、早急な支援がなければ極度の飢餓に陥る危険性があります。
「サイクロンで発生したがれきが水中に漂っていて、私たちはもう釣りに行けません。米を買うお金もありません」と、国内避難民キャンプに住み、10人の子どもがいるマ・ニョニョは話します。
サイクロンによって食料価格は高騰し、わずかな食料の備蓄も流されてしまいました。「お米や乾燥唐辛子さえも残りませんでした」と彼女は言います。
マ・ニョニョをはじめ、同州のサイクロン被災者にとって、国連WFPの食料支援(米や高カロリービスケットなど)は無くてはならないものです。
「お米をもらって本当に助かりました、ビスケットもとても嬉しいです」子どもたちも甘い味を楽しんでいると彼女は言います。
国境を越えたバングラデシュのコックスバザール難民キャンプ及びバサンチャール難民キャンプでは、サイクロン通過直後、国連WFPは数千人の人びとに温かい食事と緊急食料支援を配給しました。この支援は、キャンプで暮らす全てのロヒンギャ難民を対象にした通常の食料支援に追加して行われました。
サイクロン上陸に先立った支援
バングラデシュはサイクロン・モカの直撃は免れましたが、それでもサイクロンは広範な被害をもたらしました。難民キャンプでは、何千もの仮設シェルターが全壊したり、一部損壊したりしました。また、キャンプに暮らす多くのロヒンギャ難民は、清潔な水やその他の重要なライフラインを利用できなくなりました。
しかし、バングラデシュでのサイクロンの被害は、もっと深刻なものになっていた可能性もあります。
「サイクロンが上陸する前に、人びとをシェルターに避難させるための協力があり、多くの命が救われました」と地域局副局長のウェッブ氏は言います。「国連WFPバングラデシュでは長期にわたって、現地政府とともにこうしたシェルターが機能し、早期警報システムが整備されるよう活動してきました。」
上陸に先立って、28,000人以上のバングラデシュ人に配布された国連WFPの緊急現金支援も、サイクロン・モカの被害軽減の役割を果たしました。
「この災害に先立ってもらったお金で、食料を買うことができ、とても助かりました」コックスバザール南部の都市テクナフに住む3児の母ラシーダ・ベガムは言います。
同じくテクナフに住むサムジダ・ベガムは、国連WFPの現金支援の一部を家族6人分の食料購入に充てました。
「私の自宅は暴風で壊れてしまいました」残った現金の一部で家を修理するつもりだと彼女は言います。
資金不足
資金不足によって、ミャンマーとバングラデシュ両国での国連WFPの支援活動は瀬戸際に立たされています。3月には、コックスバザール難民キャンプに住む難民への食料バウチャーの金額を1人あたり月12米ドルから10米ドルに削減せざるを得なくなりました。
「早急かつ寛大な寄付がなければ、6月には食料バウチャーをわずか8米ドル(1食あたり10セント以下)まで、さらに減額せざるを得なくなります」と国連WFPバングラデシュ国事務所のドム・スカルペリ代表は話します。
「コックスバザール難民キャンプに暮らす人びとは、国連WFPが提供するもの以外には食料へのアクセスがないため、私たちはより一層心配しています」とウェッブ副代表は言います。「働いて給料を得ることも、自分で作物を育てることも許されていないため、生活を人道支援に完全に頼っているのです。」
ミャンマーでも、国連WFPは数百万ドルの資金不足に直面しており、サイクロンで最も被害を受けた人びとを支援するためだけでも2350万米ドルが必要とされています。
もう時間がありません。モンスーンの雨は差し迫っており、両国にさらなる苦難と飢餓をもたらす可能性があります。
国連WFPは2023年、サイクロン・モカで最も大きな被害を受けた人々を含め、最も飢餓に苦しむ人びとに支援を届けるために、バングラデシュで5600万米ドル、ミャンマーで6000万米ドルを緊急に必要としています。