解説:飢餓撲滅に貢献する国連WFPのサプライチェーン

国連WFPの推計では、貧困、紛争、異常気象などの複合的な要因により、すでに74か国で190万人が飢餓に陥り、3億4,300万人が深刻な飢餓に直面しています。国連WFPのトラック部隊は毎日、数百隻の船舶や航空機と共に飢餓の最前線に立ち、世界中で何百万人もの人びとに命を救う食料支援を届けています。
国連WFPの中核は、そのサプライチェーンにあります。国連WFPは、はるかな遠隔地や過酷な環境下で生活する数百万人の人びとのニーズに応えるため、計画、調達、輸送、および配送の最適化を実行しています。国連WFPは、コンゴ民主共和国、ハイチ、ミャンマー、スーダン、ガザ地区など、アクセス上の問題に随時対応しながら、紛争の影響を受ける緊急事態下で生活する人びとへ食料を輸送しています。

危険にさらされている数百万人の命を救うため、国連WFPのあらゆる意思決定はデータに基づいて行われ、効率的な計画と支援の提供に役立っています。国連WFPは、地域コミュニティの能力強化と連携を通じて支援がニーズに合致するよう努めるとともに、サプライチェーンを通じて強靭な食料システムの確立に貢献しています。
国連WFPのチームはパートナー組織と協力し、最先端の専門知識とイノベーションを活用してより迅速な対応を実現し、世界中の人道支援コミュニティをリードし、優れたサプライチェーンを構築しています。

2024年には、サプライチェーンを担当する4,600人以上のスタッフ(その90%が現場で活動)が、支援を必要としている1億5,200万人を支援するために昼夜を問わず働きました。では、サプライチェーンはどのように機能しているのでしょうか?
将来を見据えて
緊急時に人びとに食料を届けるには、まず計画を立てることから始まります。これは、特定の状況に合わせて必要な食料の種類と量を事前に見極めることを意味します。そして、それに基づいて国連WFPは信頼できる供給業者からどのように食料を調達するかを決定します。
2024年、国連WFPは約200万トンの食料を調達し、そのうち59%は支援対象とする地域内で調達されました。支援対象地域にできるだけ近い場所で食料を購入することで、効率性が向上し、コストを抑えることができます。国連WFPは、約1,000の地域パートナーネットワークと連携し、支援物資を届け、最も弱い立場に置かれたコミュニティに物資や食料が安全に届くよう努めています。

国連WFPは、世界600か所の倉庫と物流拠点からなるネットワークで食料備蓄機能を維持しています。スーダン、アフガニスタン、イエメンにある倉庫には、最大で100万袋の食料を保管できます。
災害発生時の迅速な対応
緊急事態が発生した場合、国連WFPのサプライチェーン専門家は72時間以内に現地に急行し、緊急食料ニーズを迅速に評価し、必要な量を調達するために必要な供給ルートを確立します。2024年には、エチオピアとアフガニスタンに30万トン、南スーダンに17万5000トンの食料を供給しました。これは、供給量に基づくと、最も大規模な3つのサプライチェーン活動であり、膨大な量の物資を扱う多数のチームの調整、国境を越えた輸送の管理、そして支援物資の途切れない供給を確保するための輸送隊の編成が必要でした。
地域密着型ソリューション
緊急支援に加え、国連WFPのサプライチェーンは、人びとが日々飢餓と闘う上で極めて重要な役割を果たしています。農業用種子や研修、農機具に至るまで、あらゆるノウハウとツールを提供する長期的なプログラムを通じて、国連WFPは地域社会の自立を長期的に促進し、支援への依存を軽減することを目指しています。

「地産地消」の要素を取り入れた学校給食支援はまさにそれを実現します。学校給食の食材を地元の農家から調達し、地域の生産能力を高め、収穫後のロスを削減することで、サプライチェーンのコストを削減し、地域経済を活性化させながら、子どもたちに新鮮な食事を提供しています。

緊急事態地域での現地調達が不可能な場合は、支援対象に近い国から物資を調達します。例えば、ガザ地区とイエメンのパン屋に供給される小麦はウクライナから、スーダンの温かい食事に必要なソルガムはお隣の南スーダンから調達しています。国連WFPはまた、地域の商店に必要な品質の高い物資を供給し、人びとが地域社会で必要なものを購入できるように支援しています。
安全と品質のためのテクノロジー
食品の安全は私たちの最優先事項です。安全でなければ、それは食品ではありません。国連WFPの食料は、支援を必要とする人びとに届くまで、陸、空、海を越えて何百キロも移動します。食料品の安全性、栄養価、そして高品質を保証するために、私たちのチームは生産、加工、包装、保管、配送に至るまで、各段階を厳格に監視しています。

デジタルを活用した問題解決として、バッグマーキングを実施しています。これにより、商品に専用のコードを刻印し、現地のパートナーへの配送中および配送後に、そのカテゴリー、日付、配送先を追跡することが可能になります。
どの食品をどこに送るかの計画から、輸送中の物資の追跡まで、データ駆動型のシステムによって、私たちは迅速かつ柔軟な対応力を維持しています。リアルタイムの物流マップ、監視ツール、情報共有プラットフォームは、現地のパートナー組織との連携を促し、業務効率の向上に貢献しています。
国連WFPのパートナー・コネクトは、紙ベースのプロセスをデジタル化し、データの品質と情報フローのギャップを改善する信頼性の高い報告プロセスのプラットフォームです。


国連WFPはFOSTER(Food Safety and Quality Terrain「食品安全・品質領域」)と呼ばれるデータベースを通じて、食品検査など食品の安全性と品質のさまざまな側面を管理し、農場から人びとの食卓に至るまでの食品の安全性と追跡可能性の向上を実現しています。
パートナーとともに
国連WFPは、政府、NGO、民間セクターと連携し、効率的な支援の提供と長期的な開発を支援しています。
国連WFPの支援の75%は、現地NGOとのパートナーシップによって提供されています。これらの組織は、多くの場合、地域社会に深く根ざしており、貴重な現地の情報とアクセスを提供することで、支援物資が遠隔地に届き、地域のニーズに合致したものとなる上で重要な役割を担っています。

また私たちは、緊急時に人員を派遣したり、装備を提供したり、専門知識やイノベーションを提供して人道支援活動を支援、強化してくれる、さまざまなパートナー組織と協力しています。
専門知識の共有
大規模な緊急対応が必要な際には、複数機関による調整の枠組みの中で、国連WFPが主導する物流チームが力を発揮します。国連WFPは、パートナー組織に代わって人道支援物資の調達、保管、配送を行う世界的な拠点ネットワークである国連人道支援物資備蓄庫(UNHRD)と、人道支援従事者を危機地域へ輸送する国連人道航空サービス(UNHAS)も運営しています。2024年には、1,600のパートナー組織の重要なサプライチェーン・サービスを支援しました。


限りある資金と資源で、安全で栄養価の高い食料を何百万人もの人びとに迅速かつ丁寧に届けるには、細心の注意を払い、精度を重視したオペレーションが必要です。私たちのオペレーションは、効率性を追求した設計思想に基づき、すべての出荷、配送、そして協調的な取り組みを重視しています。60年以上の経験に基づき、常に改善と革新を模索してきた国連WFPのサプライチェーンは、物資を確実に届けるために構築されています。私たちには、任務を遂行するための人材、ツール、そしてパートナーが揃っているのです。