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気候変動をどう乗り越えるか:2022年の干ばつ、洪水、異常気象

(ボリビアの山岳地帯に住む先住民アイマラ族の女性の情熱と思いに励まされた国連WFPの異常気象対策)
, Jenny Wilson, Peyvand Khorsandi
ボリビアの最高峰、標高6.542mのサハマに立つチョリータのリアさん(左)と母親のドラさん(右)Photo: WFP Bolivia
ボリビアの最高峰、標高6.542mのサハマに立つチョリータのリアさん(左)と母親のドラさん(右)Photo: WFP Bolivia

国連WFPの重要サポーターの中でも最高地点に到達できるのは、チョリータ・エスカラドーラス・マヤと呼ばれるボリビアの山岳民族の女性です。彼女たちは民族衣装に身を包み、先住民アイマラ族(そして現在は国連WFP)を代表する存在として活躍しています。

先日、国連の重要サポーターに任命されたこの女性たちは、先住民女性の社会的地位向上のメッセージの発信、伝統食の生産や消費の推進を担い、アルティプラノと呼ばれる高地の聖なる山々が気候変動により変わりつつある現状を当事者の視点で伝えます。

エクアドルのコロンビアとの国境近くに位置するプンタ・デ・ミグエルの生態系を守る役割を果たすマングローブで牡蠣の殻を集めるローザさんPhoto: WFP/Giulio d'Adamo
エクアドルのコロンビアとの国境近くに位置するプンタ・デ・ミグエルの生態系を守る役割を果たすマングローブで牡蠣の殻を集めるローザさんPhoto: WFP/Giulio d'Adamo

チョリータのリーダー、アナ・リア(リタ)さんは「様々なコミュニティーに出向き、自分たちの経験を話し、食の重要性を伝え、若者に自分たちの作物を大切にし、その特徴を理解してもらいたいと考えています」と話します。

リタさんは若い時に登山を始め、女性として、また現在も差別に直面する民族グループの一員として、困難を乗り越えてきました。

母親のドラさんはベテラン登山家で、山岳ガイドの夫が案内する旅行者に、高地で伝統食を振る舞う山岳料理人として山でのキャリアをスタートしました。

ニジェールのモーンリーの乾燥地帯に掘られた、雨水を活用するための半円型の窪み。国連WFPは弱い立場に置かれた1,128世帯を支援し、833ヘクタール以上の土地を回復させた。Photo: WFP/Evelyn Fey
ニジェールのモーンリーの乾燥地帯に掘られた、雨水を活用するための半円型の窪み。国連WFPは弱い立場に置かれた1,128世帯を支援し、833ヘクタール以上の土地を回復させた。Photo: WFP/Evelyn Fey

2022年を振り返る時、チョリータ・エスカラドーラス・マヤは世界中に励ましを与える存在と言えるでしょう。

彼女たちが幾多の困難を乗り越え、アイマラ族の女性や人々の苦しみに対する関心を喚起してきたように、世界も気候変動という、立ちはだかる山を目の前にしているのです。 


2022年の主な出来事

2022年は、類のない干ばつ、洪水、酷暑といった気候災害にしばしば紛争が重なり、世界中の様々な地域に甚大な影響が及び、未曾有の飢餓の年となりました。

全世界で過去最多の3億4900万人が深刻な食料不足に陥り、100万人が食料不足の国際基準における「壊滅的な状態」(フェーズ5)に直面しています。

ウクライナ戦争は一部地域のみならず世界中に大混乱を引き起こし、食料や肥料の供給は遠くコロンビア、エチオピア、イエメンといった国でも途絶しています。

アフリカの角で続く干ばつにより作物が甚大な被害を受けるケニア北東部ガリッサ郡の国連WFP配給センターで月々の食料配給を受け取る家族Photo: WFP/Martin Karimi
アフリカの角で続く干ばつにより作物が甚大な被害を受けるケニア北東部ガリッサ郡の国連WFP配給センターで月々の食料配給を受け取る家族Photo: WFP/Martin Karimi

パキスタンは容赦のない豪雨に見舞われ、何万人もの人々が避難を余儀なくされ、国土の3分の1が水に浸かりました。アフリカの角では、4期連続で雨季に雨が降らず、人々はぎりぎりの状態に追い詰められ、飢きんの脅威が差し迫っています。

ヨーロッパの国々でも、気温が過去最高を記録するなど、極限気象の影響が出ています。

とはいえ、大きな打撃を被るのは、自分たちを守る手立てを持たない最貧国です。エジプトで開催されたCOP27では、弱い立場の国々の生活、作物、住居を気候変動の影響から守るための損失・損害救済基金を設立することが採択されました。

ラテンアメリカとカリブ海地域のハリケーン

9月には2つのハリケーンがキューバとドミニカ共和国を襲いました。キューバ北東部ではハリケーン「イアン」により3万6千軒以上の家屋が被害を受け、52万9千人以上が食料不足に陥りました。ハリケーン「フィオナ」はドミニカ共和国の約80万世帯に被害をもたらしました。

この地域で国連WFPが予測型対策として早期警戒メッセージの発信と現金支援を行ったのは初めてでした。

ソマリア:干ばつにより家を離れ、国を移動する危険な旅を続けるミドさん一家Photo: WFP/Samantha Reinders
ソマリア:干ばつにより家を離れ、国を移動する危険な旅を続けるミドさん一家Photo: WFP/Samantha Reinders
アフリカ西部の洪水

アフリカ西部では19カ国で豪雨と洪水により500万人が被害を受け、死者数は数百人に上り、生活が壊され何万人もの人々が避難生活を余儀なくされています。

100万ヘクタール以上の農地が被害を受け、この地域全体で食料危機がさらに深刻化しました。

国連WFPは、被害を受けた人々が生計を取り戻せるよう、食料と現金を支給する形で緊急食料支援を行いました。同時に、国連WFPでは人々がこの周期的な苦難に対する備えを強化し、悪循環から抜け出せるよう、より長期的な目線でソリューションを構築しています。

アフリカ南部の暴風雨

アフリカ南部は2022年の最初の数カ月だけで少なくとも6回の度重なる猛烈な嵐に襲われ、890人以上が亡くなりました。4月に発生した熱帯暴風雨「ジャスミン」はマダガスカルだけで5千人に被害を及ぼしました。

深刻な干ばつから時を経ずして発生したこの嵐により、マダガスカルの人々は食料も収入も失い、復興や対策に取り組む間もなく次々と様々な極限の気候現象に襲われる様が示されています。

極限の天候で何百万人もの人々が食料不足に陥るマダガスカルのトゥリアラ州ベティウキでキャッサバの手入れをする農家のナイマさんPhoto: WFP/Volana Rarivoson
極限の天候で何百万人もの人々が食料不足に陥るマダガスカルのトゥリアラ州ベティウキでキャッサバの手入れをする農家のナイマさんPhoto: WFP/Volana Rarivoson

乾燥状態が続いた後の突然の豪雨では、非常に乾燥した地面が過剰な水分を吸収できず洪水の危険性が高まります。

国連WFPはこの地域の各国政府と連携して緊急支援を提供し、森林再生などの自然を活用した対策や保険により、人々が異常気象への対応力を強化できるよう支援プログラムを拡大しています。

ネパールの洪水

ネパール西部では10月に豪雨による急速な水面上昇により、洪水や土砂災害に見舞われ、何百軒もの家屋が被害を受けました。

国連WFPでは、洪水予報の早期警戒メッセージを発信するほか、人々が食品を調達し、安全な場所に避難し、住まいの防災を強化できるよう現金を支給するなど、事前対策を講じました。この方法は地域の人々を保護できるだけでなく、緊急対策における時間と費用を節約することで、国連WFPがより多くの人々に貢献することにつながります。

アレッポ南部のタルダマンの自宅で母親を手伝うために学校をやめざるを得なかったジハード君。ここ数年の雨不足で作付けが難しく、人々は移住を余儀なくされているPhoto: WFP/HussamAlSaleh
アレッポ南部のタルダマンの自宅で母親を手伝うために学校をやめざるを得なかったジハード君。ここ数年の雨不足で作付けが難しく、人々は移住を余儀なくされているPhoto: WFP/HussamAlSaleh
 
シリアの干ばつと水不足

シリアでは10年以上にわたり紛争が続いており、気候危機が食料不足をさらに悪化させています。

降雨量が少なく干ばつが発生し、全国で困難な状況がさらに深刻化しています。今年は、雨が少なく不規則で、天水栽培による小麦や大麦の80%以上が育ちませんでした。

中東の水不足は世界でも特に深刻です。この地域には世界人口の6%が住んでいますが、世界の淡水供給量に占める割合はわずか1%です。

国連WFPの気候変動への対応

 

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