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黒海穀物イニシアティブ:国連WFP向けの穀物を積んだ輸送船がウクライナを出港、戦争開始後初めて

世界的な食料危機の中、飢きんに立ち向かうWFP国連世界食糧計画(国連WFP)にとって、アフリカの角へ向かう1隻のチャーター船は特別な意味がありました。
, WFP Staff Writers

ロシアとの戦争が始まって以来初めて、国連WFP向けのウクライナ産穀物を積んだ最初の輸送船が、今朝(8月16日)、黒海に面するオデーサ州ユージヌィのピフデンヌイ港を出発しました。

国連WFP向けの小麦約2万3千トンが国連のチャーター船ブレイブ・コマンダー号で出航し、壊滅的な飢餓に2千万人以上が脅かされている干ばつ地帯のアフリカの角に向かっています。

この船は、エチオピアで最も食料を必要としている人びと、例えば北部で起きた紛争ですべてを失った老夫婦テスファイエさんとティルハスさんのような人びとや、動物の死骸や干上がった畑が残る厳しい干ばつに見舞われた南部の人たちに届けることを目的としています。

3月、国連WFPの配給拠点でウクライナ産の小麦を受け取るエチオピアのダバトの人たち。
3月、国連WFPの配給拠点でウクライナ産の小麦を受け取るエチオピアのダバトの人たち。Photo:  WFP/Claire Nevill

デイビッド・ビーズリー国連WFP事務局長は、「黒海の港を開港させることは、世界の飢餓を救うために今できる最も重要なことです」と述べています。

「世界の飢餓を食い止めるには、ウクライナから穀物船を送り出すだけでは十分ではありませんが、ウクライナの穀物が世界市場に戻ることで、この世界的な食料危機がさらに悪化するのを食い止めることができるかもしれません」

アフリカの角は、ウクライナの食料輸出がほぼ完全に停止したことで大混乱に陥った多くの地域のひとつに過ぎません。国連WFPをはじめとする人道支援機関は、ウクライナの黒海の港を出入りする最も重要な海上交通が再開され、最貧困層を直撃している世界的な供給途絶の緩和に役立つことを期待しています。

8月16日、2万3千トンの小麦を積んで、ユージヌィのピフデンヌイ港を出港するチャーター船ブレイブ・コマンダー号 Photo: WFP/Anastasiia Honcharuk
8月16日、2万3千トンの小麦を積んで、ユージヌィのピフデンヌイ港を出港するチャーター船ブレイブ・コマンダー号 Photo: WFP/Anastasiia Honcharuk

「ウクライナは世界一の一次産品の供給国でした。昨年、私たちはウクライナで88万トンを購入しました」と、マリアンヌ・ウォード国連WFPウクライナ副緊急調整官は述べます。

「世界中で4億人の人びとがウクライナ産の食料に依存していたのです」

「ウクライナの産品が手に入らないということは、世界の食料価格や飢餓に大きな打撃を与えます」

今回の穀物輸送は、世界的な飢餓が進む今、かつて「穀倉地帯」であったウクライナの食料を再び市場に投入し、次の収穫に向けて穀物サイロを空にするための重要な一歩となるものです。

国連WFPは以前から、ウクライナ紛争の「波及効果」が世界の広い範囲をこれまで以上に脆弱にし、新たな人道的危機を助長すると警告してきました。例えばスリランカでは、物価の高騰により人口の4分の3が食事の量を減らさざるを得なくなっています。

出航準備をするレバノン船籍のブレイブ・コマンダー号で記者会見するマリアンヌ・ウォード国連WFPウクライナ副緊急調整官。
出航準備をするレバノン船籍のブレイブ・コマンダー号で記者会見するマリアンヌ・ウォード国連WFPウクライナ副緊急調整官。Photo: WFP/Antoine Vallas

「国連WFPの国別事務所の94%が、ウクライナ危機の影響による食料および栄養ニーズの上昇を報告している」と、国連WFPは先月の報告書で述べ、最も脆弱な場所での社会不安の増大と避難民の増加の見通しを示しています。

食料、燃料、肥料の価格高騰は、紛争、気候変動、新型コロナウイルスの大流行など、すでに壊滅的な影響を及ぼしているものと重なります。ウクライナ戦争が始まる前から、国連WFPは2022年が前例のない支援のニーズが発生する年になると警告していました。

アフリカの角への出航にむけて船に積み込まれる穀物。
アフリカの角への出航にむけて船に積み込まれる穀物。Photo: WFP

需要が供給を上回っているのが現状で、「国連WFPは、最も飢えた人を救うために、その次に飢えた人を犠牲にすることを余儀なくされている」と同報告書は述べています。

国連WFPは、可能な限り支援を拡大する一方で、最も必要としている人びとを優先し、それ以外の人びとへの食料配給と現金支援を減らす必要に迫られています。

現在、82カ国で過去最高の3億4500万人が深刻な食料不足に直面しています。45カ国では5000万人が飢きんの淵に立たされ、人道的支援なしには生命を維持することすらできません。

この中には、アフガニスタン、エチオピア、ソマリア、南スーダン、イエメンの一部で、すでに壊滅的な飢きんまたは飢きんに似た状況に直面している90万人近い人びとが含まれます。

国連WFPは、小麦、小麦粉、植物油、エンドウ豆、栄養強化食品など、配布する食料のコストが毎月2710万米ドル増加している中、2022年にはこれらの物資を1億5200万人に届けるために222億米ドルを必要としています。

最も憂慮すべき飢餓のホットスポットと言われるソマリアでは、食料価格の高騰と過去40年間で最悪の干ばつにより、9月までに700万人以上が深刻な飢餓状態に陥り、年末には5歳未満の子どもの半数近くが深刻な栄養不良に陥るおそれがあります。


5歳のモハメッド君のように、支援の手が間に合わなかった子どももいます。彼は、国内避難民の家族が食料を求めてソマリアを長く旅している間に力尽き、浅い墓に埋葬されたのです。

「私たちが家を出る決心をしたのは、ここには干ばつと飢え以外何も残っていなかったからです」と、母親のミドさんは国連WFPに語ります。「私たちは牧畜民で、牛やラクダを飼っていましたが、一頭残らずすべての家畜を失いました。水もなく、子どもたちの食べ物もなく、お金を得る手段もありませんでした」

ウクライナからの穀物が、同じように惨禍の中で生きて行こうとする多くの人々に届けられようとしています。

一方、ウクライナでは、紛争から半年が経過し、飢餓が深刻化しています。3世帯に1世帯が食料難に陥っており、東部と南部の一部では2世帯に1世帯が食料難に陥っています。

昨年、世界の飢餓と闘う活動のために、穀物の3分の2を国連WFPに供給したウクライナにおいて、国連WFPは7月だけで290万人に食料と現金支援を行いました。

謝辞: 今回の小麦の輸出は、民間部門と政府部門との強力な連携の産物であり、特に民間部門は、国連WFPの世界的な食料危機への対応において鍵となります。今回の輸送は、米国国際開発庁の人道支援局からの緊急支援金、国連WFPの長年の支援者であり元親善大使のハワード・G・バフェット氏の基金、オーストラリアの慈善団体アンドリュー&ニコラ・フォレストのミンダルー財団からの多額の寄付がなければ実現しなかったでしょう。

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