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11歳のムンジャマにとって学校給食が大切な理由

, WFP日本_レポート

児童婚とシエラレオネの学校給食

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ムンジャマ・トマ、11歳(左), モハメド・マクファイ、12歳 (中央)、 ムンジャマ・カラマ11歳(右)は、日本とカナダ政府からの支援によるWFPの学校給食を楽しみにしている。WFP/Evelyn Fey

将来は看護師になりたい。 学校に行くことは私の夢です。-ムンジャマ・トマ

ムンジャマ・トマ(写真左)は、多くの11歳の子どもたちと同じように友達と遊んだり学校に行ったりすることが大好きです。 そして友達と同じように、彼女自身も大きな夢を胸に秘めています。

シエラレオネの地方で母親、父親、8人の兄弟姉妹と暮らしているムンジャマは、教育をほとんど受けたことのない大人達に囲まれて育ち、多くの家庭が貧困に陥いりやすいこの地域で生活しています。また、 ムンジャマは男女の不平等が組織的に存在し、児童結婚が広まっているこの国で女児であるという現実にも直面しているのです。

より良い将来を望むムンジャマは、自分の夢が学校の教室にあることを知っていますが、ムンジャマのような子どもたちが最後まで学校に通い、卒業できるよう両親から支援してもらうことは簡単なことではありません。高い食料危機率がジェンダーに悪影響をもたらすシエラレオネのような国だからこそ、学校給食は女児の成長・発達の場を平準化する火付け役になり、夢を実現するための可能性をもたらすのです。

「私は、8人の子供をもつ大家族です。時には、家族全員を養う余裕がなく、学費がかかる学校に通わせることに以前は苦労していました」

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ムンジャマと父親のアマラ、母親のビィンダ。Photo: WFP/Lynda Buckowski

家庭の食費を減らすためにとられる根本的な解決策として、学校を辞めさせるか児童婚があげられます。つまり、最も弱い立場なのは家族の中の幼い女の子であることが多いのです。これはムンジャマの家族に限ったことではなく、困難の時代においては男児が優先され、とられてきた方法なのです。5人の母親でありムンジャマの隣人であるマリアマスワライは、彼女自身の経験を思い出し語ります。

「私は、お金がなかったので学校に行ったことはありません。 その代わり小さなお店で働き、15歳で結婚しました。当時、人々は女児の価値を見ていませんでした。 教育は女性にとって重要と見なされていなかったのです」

教育機会の欠如はぞっとするような思考の停止をもたらし、このように幼い女の子はすぐに子育てと家事を条件とした不利な立場の社会に置かれます。より良い人生を送るという夢は、教育を受けていない母親という現実を前に即座に消え去るのです。これは、シエラレオネ全体で長く繰り返されていることで、今後その影響は明らかになっていくでしょう。ジェンダーの平等化が停滞し、人的資源が減少するだけではないため都市と地方の地域格差の是正にあらゆる努力がなされていますが、状況は芳しくありません。

女児が十分な教育を受けられない要因は数多くありますが、食料という1つの要素は軽視できません。 文化的慣習だけでなく、食料もシエラレオネスの少女たちの教育の可能性と将来において決定的な役割を果たしています。

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ムンジャマ(右)と友達のジーナ。学校にて。Photo: WFP/Francis Boima

子どもでも特に少女達は、問題解決するための具体的な介入を必要としています。 学校給食や学校での温かい食事の提供は、教育に対する障壁を取り除き児童期や青年期を通して栄養を与えられることによって、家族が娘を仕事や結婚よりも学校に送ろうと思う理由になり、脆弱な少女達を支援する非常に特別なセーフティネットになるのです。

このような貢献から、2018年にカナダと日本政府の支援を受けて、WFPは、学校に通うことが困難な脆弱な子どもたちの栄養状態の改善、家計負担の削減のためにシエラレオネの最も食料が不安定な2つの地区(プジュン地区と カムビア地区)で学校給食プログラムを再開しました。 ムンジャマと友人の住むヘレブ地区においても、学校給食の負担は世帯の収入の約10%に相当し、アマラ・トマのような父親の家計の負担軽減の手助けとなっています。

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小さな女子児童にとって学校給食は命綱になります。Photo: WFP/Evelyn Fey

試行初年度、WFPは29,000人以上の子どもたちに学校給食を提供し、そのうち14,000人以上が少女でした。 この取り組みに対しコミュニティからは好意的な反応が得られ、賛同した地元の母親支援グループが、学校の給食メニュー(キャッサバやジャガイモなどの緑豊かな野菜)に加えるための栄養価の高い食品を提供し、独自の発展のために学校菜園を始めました。

ムンジャマのような多くの大家族にとって、食卓での食事に代わるものではありませんが、学校給食は栄養バランスの取れた定期的な食事を子供に提供するのに苦労している親への助けにもなるのです。

この変化は地域の男性にも注目され、少女への教育は家計全体への投資とみなされるようになっています。 アマラ・トマは、娘に対する彼自身の願いと、貧しい家庭のための学校給食が役に立っていることについて述べています。

「娘が看護師になれれば、家族を支えることもできるでしょう。自分も妻も教育を受けていないのですが、 私は彼女がここで私と同じような人生を送ることを望みません。もし彼女が専門職に就けば、家族が良い暮らしができるようサポートすることができます。 学校給食は、家計の食費を支えてくれています」

栄養面においても、学校給食は子どもの精神的および肉体的発達に不可欠な栄養源を提供する機会となり、子どもたちの健康的な成長を支援しています。 学校給食に栄養強化食品を追加することで、特に若い女性によくある貧血を最大20%減少することができます。ムンジャマの学校の調理師であるジャニッシュ・ジョンは、このような栄養強化食品の追加や親から通学支援を受けた子どもたちの違いを見てきました。

「家族は魚と野菜を提供し、子どもたちのために給食を良くしています。 子どもたちの給食の時間に、彼らが幸せそうに日々健康になっていく様子を見ることができます」

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ヘレブ小学校のオーガスティン・ファレイ副校長。Photo: WFP/Evelyn Fey

また、教育については給食時の幸せそうな顔はもちろんのこと、教師は授業出席率の全体的な増加と子どもたちの学習効果の向上を報告しています。 ヘレブ小学校の副校長であるオーガスティン・ファレイ氏は、早期の改善兆候について述べています。

「給食事業が開始される前の子供たちは、夕方に1回食事を得られるのみであり、その一部を翌朝用に残していました。 今では、子どもたちは1日に2食得ることができ、授業の集中力も高まっています」

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ムンジャマ(中央)、親友のジーナ(左)とマリア(右)

学校の休暇が終わり新学期を迎えるムンジャマは、勉強については楽しみながら取 り組み、教育を継続することを固く決心しています。首都では、夏の学習コースを提供するラジオ広告が聞こえる一方で、ムンジャマと彼女の友達はそのような余裕はないため他の方法を見つけなければなりません。 しかし、彼女たちは逃れられない状況に立ち向かい、気が付かないうちに障壁を破っています! コミュニティのほとんどの大人よりも教育を受けており、ジェンダーの限界をすでに押し広げており、学校での毎日の給食でより強く賢くなっています。 少女たちを教育の場に残すことで、未来への力が約束されるのです。