南スーダン、深刻な食糧不足 ~FAO・WFP最新報告書で凶作や食糧価格高騰が明らかに~
国際連合食糧農業機関(FAO)とWFP国連世界食糧計画は合同で、南スーダンの作柄及び食糧事情に関する報告書を発表した。同国では何百万人もが年内にも飢餓状態に陥るとし、緊急の対応が必要であると訴えた。
(C)WFP/Mohamed Siddig
FAOとWFPは、南スーダン政府の農林省から要請を受けて、2011年の10月から11月にかけて、作柄及び食糧事情に関する評価事業を実施した。調査によれば、食糧不足に陥っている人々の数は、2011年の330万人に対し2012年には470万人へと急増しており、そのうち100万人の人々が非常に深刻な状況にあるとされている。
現在、同国内では紛争が続いているが、このまま紛争が長引き、さらに食糧価格が高騰し続けた場合、現在の倍以上の人々が非常に深刻な食糧不足に陥ると予想されている。
南スーダンにおける食糧不足は、穀物等の凶作や食糧価格の高騰、紛争、戦闘に伴う人の移動、また、避難先からたくさんの人が故郷に帰還した事など多くの要素が相まって発生している。
「この危機的状況には世界が一丸となって立ち向かう必要があります。事態が切迫するなか、WFPではできる限りの手を尽くしていますが、時間が足りません。」とWFP南スーダン事務所長のクリス・ニコイは訴える。またFAO南スーダン事務所長、ジョージ・オケーは「まずは、人々が安全で栄養豊富な食糧や、その他の生活必需品を確保できるようにしなければなりません。しかし食糧・栄養事情を安定させるには、飢餓と貧困の悪循環を断ち切る必要があります。農業や畜産活動などの再開を支えることでそれが可能になります。」と語る。
調査によれば、2011年における南スーダン全体の穀物生産量は、2010年に比べて19%低く、またここ5年間の平均生産量と比較しても25%下回っている。2012年には、47万トンの穀物が不足するとされている。これは、南スーダン全体で1年間に必要な穀物のおよそ半分の量に相当する。
この穀物生産不足の主な原因としては、2011年の農業シーズン初期に発生した雨不足と、長引く紛争による農業活動への影響があげられる。収穫量が減少する中、難民の帰還や紛争による人々の移動で需要は増しており、食糧不足状況をさらに悪化させている。
通常のように市場がうまく機能すれば不足分が補われるが、スーダンと南スーダンの国境地点の封鎖により、市場への食糧供給が滞っている。加えて、劣悪な道路状況や石油価格が上昇する中で長距離輸送しなければならないこと、また南スーダン通貨の下落などによって、食糧の市場価格は急騰している。
支援活動の実施
WFPは南スーダンで、2012年の緊急食糧支援活動として、270万人に食糧15万トンを届けることを目標としている。特に深刻な食糧不足に陥っている農村部の人々、子どもや授乳中の母親、住むところを奪われた人々や紛争で難民となった人々を中心に支援活動を行う。FAOとWFPは、状況の悪化に伴い食糧支援を必要とする人々は330万人まで増加する可能性があると見ており、今後の支援活動の拡大に向けて他機関と連携し、さらなる準備を進めている。今回の食糧支援に際し、現在1億6000万ドルの活動資金が不足しており、WFPは国際社会にさらなる協力を要請している。今後、状況が悪化すれば、必要額はさらに増えることになるだろう。
2011年、FAOと連携機関はおよそ16万5000の農家世帯に対し、農業用具や2400トンの種子を提供した。加えて人々がバランスの良い食事をとれるよう、5.5トンの野菜の種子も提供した。今年4月から始まる作付け期に備えて、FAOはさらなる支援を行う予定だ。南スーダン政府は、食糧購入における補助金支給プログラムの実施を要請しており、これにより人々の食糧確保と地域経済の活性化が期待されている。FAOは支援を行うにあたり、2300万ドルを要請している。