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自然災害における国連WFPの緊急支援

自然災害における国連WFPの緊急支援
, WFP日本_レポート

9月1日に開催された視察報告会 「三浦雄一郎が見たネパール震災〜国連WFPの支援現場〜」で行われた、元国連WFPアジア地域局長の「自然災害における国連WFPの緊急支援」と題した講演では、主にフィリピンで自ら指揮を執った緊急支援のエピソードを交えつつ、緊急支援の開始から終了、そして、次の自然災害に備える活動に関する包括的な話がありました。

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世界には全ての人が困らないだけの十分な食糧があるにも関わらず、貧困などが原因となって、約8億人もの飢餓に苦しむ人々がいます。

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©WFP お米の詰め替え作業を行う政府のボランティアさん

2013年末にフィリピンで発生した台風30号の後、私は国連WFPの緊急支援の指揮を執るために現地に入りました。国連WFPが緊急支援を行うとき、現地政府や軍隊、民間団体や他の国連機関と協力して支援を進めていきますが、まずは、国連WFPのスタッフを現地および世界中から雇用することから始まります。当時は、ソマリアやアフガニスタン、ネパールからのスタッフも含め、被災からの1カ月間で164名のスタッフを集めました。衣食住がゼロに近い状態から始まる支援活動、トイレットペーパーの支給から始まり、支援スタッフが現地の人たちのことだけを考えられる環境を整えます。結果、支援を必要としている300万人のうち、200万人には2週間目までに支援を届けることができました。

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1900年からの100年間に報告された自然災害のグラフを見ると、気候変動によると思われる災害がこの50年で急激に増加していることが分かります。普段からギリギリの状態で暮らしていう人々のもとに、自然災害が起こった場合、その復興には長期間を要します。それでも、人々は逞しく、自身が支援活動の指揮を執った2013年末に発生したフィリピン台風の後も、被災から1~2週間経つと、市場が立ちはじめました。今回のネパールでも同様に市場が商いを始めた地域を対象に、被災直後に配布する食糧を、市場で使える現金や食糧引換券などに切り替えるようにします。それにより、市場を中心に経済が回りはじめ、支援に頼らない、被災者の自立につながることを目指しています。

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国連WFPでは他の国連機関などと共同で、自然災害の発生リスクの高い国を対象に、緊急支援をより的確、迅速に行えるよう、調査の上で支援計画をあらかじめ立てるなど、支援活動のための準備を進めています。ネパールにおいても、以前から地震のリスクや栄養不良の割合の調査、交通網の示された地図の準備や、カトマンズ空港近くの人道支援物流拠点の設置などが進められており、震災1カ月前に完成したこの物流拠点が今回の迅速な支援活動に貢献しました。

最後に、国連WFPが世界で1年間に配布する食糧支援は、300万トン。それに対して、日本で、まだ食べられるにも関わらず捨てられてしまう食料が800万トンといわれています。世界の飢餓問題はもちろん、日本国内の問題にも目を向けていただければと思います。