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置き去りにされる南スーダンの子どもたち

新型コロナウイルスの脅威、そしてバッタの大量発生により、何千もの命がますます危険にさらされており、それをくい止めるため世界は行動を起さなければなりません。
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2才のニャン・ナイエクは、南スーダンで深刻な飢餓と栄養不良に苦しむ130万人の子どもたちの一人です。 Photo: WFP/Gabriela Vivacqua

2才のニャン・ナイエクは、南スーダンの首都・ジュバのアル・サバーハ病院の床にぐったりと横たわっています。彼女の目は半分閉じ、腕の力は弱すぎて、継母が与えようとする水の入ったカップをつかむこともできません。ニャンが筵(むしろ)の上を何とか這って動こうとすると、痛ましいほどに細い体に、その明るい青色のワンピースは大き過ぎます。

幼いニャンのこの虚ろな瞳は、まさにこの国の厳しい状況を物語っています。

南スーダンは、2011年にスーダンから独立し人口1,100万人の国として建国されましたが、6年にわたる内戦に見舞われ、栄養不良や深刻な飢餓の増加と戦っています。急性栄養不良になり治療が必要な5才未満の子どもが昨年は86万人でしたが、今年は130万人もいます。

「ニャンは生きようと戦っています。この子が助かるよう祈るだけです」と、ニャンの父親の二番目の妻である継母のケミシャは言います。生母は紛争の最中に家出してしまい、継母はその後ずっとニャンの世話をしてきました。

今年4月に発表された「食料危機に関するグローバル報告書2020年版」は、世界で深刻な飢餓や栄養不良と戦っている数百万人の窮状を浮き彫りにしています。この報告によれば、紛争に苦しむ地域で生活する人々は、資源が限られているため充分な量の食料を得ることができず、重度の急性栄養不良に苦しんでおり、その数は2018年には7,400万人でしたが、2019年は7,700万人以上に増加しました。

南スーダンは、広範囲の急激な飢餓と栄養不良の度合いが厳しい22の国の一つに数えられます。さらに悪いことに、聖書に書かれた大災害に匹敵するような2つの異常事態の同時発生、すなわち、新型コロナウイルスの世界的流行とバッタの襲来によって、脆弱な南スーダンの人々はさらに厳しい飢餓へと追い込まれつつあります。

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南スーダンの人々は、常にありのままの自然、そして気候変動に翻弄されています。Photo: WFP/Gabriela Vivacqua

新型コロナウイルスの広がりを防ぐため、現在、首都ジュバを含め都市部も農村もともに厳しく封鎖されています。

脆弱なインフラしかなく基本サービスへのアクセスが制限された国において、混乱した暮らしが続けば、壊滅的な状態になり得ます。衛生設備の不足と、さらに衛生についての母親たちの認識不足が、不十分な保育や病気の流行につながっています。

多くの子どもたちが、体を洗ってもらえず、きれいな飲み水もなく、非常に粗悪な食事しか食べさせてもらえないため下痢になります。この報告書によると、昨年、2才未満の子どものうち、最低限の基準を満たすのに足りる量の食べ物を与えられたのは、わずか7パーセントしかいなかったということです。

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食事を分け合うニャル村の子どもたち。 Photo: WFP/Gabriela Vivacqua

ニャンは、慢性の下痢だけでなく、これらすべての被害を受けています。彼女はものを食べても戻してしまいます。

ケミシャは最善を尽くしていますが、自分の子どもも4人いて、生き残るため家族に食べさせるため仕事を探しに出かけ、ニャンはたびたび放っておかれます。ニャンに栄養のある食事を食べさせることは非常に困難です。ケミシャには栄養のある食べ物を買う余裕がほとんどないからです。

南スーダンでは、食料の値段が高過ぎるので、基礎的栄養のある食事一回分を料理するための材料を買えるだけのお金を貯めるのに何日もかかってしまいます。また、人口の半分以上、すなわち約650万人が、毎年の5月から7月にかけて、収穫期直前に最も食料が足りなくなる時期(リーンシーズン)に、厳しい食料不足に直面します。その時期は食料が尽きてしまうか、あるいは多くの人にとって値段が高過ぎるのです。

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空中投下は食料支援を届ける最後の手段です。これは南スーダンのニャル村の近くで1月に行われたものです。 Photo: WFP/Gabriela Vivacqua

ケミシャがニャンを病院へ連れて行った時、医者たちはその2才の女の子が衛生状態の悪い環境で生活しているのではないかと疑いました。彼らが思った通りでした。ケミシャはきれいな水や適切な衛生設備を安定的に利用することができないのです。

「生活は厳しいです。」ケミシャは、ニャンの顔からハエを払いのけながら言います。「子どもたち皆を食べさせていくのは大変です。」

国連WFPは、人命救助のための食料支援で南スーダンの500万人の人々を支えています。それには、学校給食や、子どもと妊産婦の栄養不良の予防・治療のための特別な栄養食品も含まれます。

今年は南スーダンにとって重要な年になるでしょう。新国民統一暫定政府によって平和が強固なものになることを国民が望んでいるからです。しかし、新型コロナウイルスの脅威がこの駆け出しの国家に迫る中、その対応でこの国が最初のハードルで倒れていまうのではないかと恐れている人もいます。今まさに世界は、南スーダンの人々が必要な食料を確保できるよう国連WFPを支援するなどして、一歩を踏み出すべきです。

この危機的事態に、国連WFPが支援活動を続けることができますよう、ご協力何卒よろしくお願い致します。

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