なぜ中東紛争が過去最悪の飢餓をもたらす恐れがあるのか
- 中東の紛争で人びとが避難を余儀なくされ、食料へのアクセスが大幅に制限されているため、飢餓が拡大しています。
- 供給網の混乱や燃料・輸送費の高騰により、世界的に食料価格が上昇しています。
- WFPは食料および現金支援を拡大するとともに、生命を救う援助を届け続けるために供給網の迂回ルートを確保しています。
中東で何が起き、そして世界の飢餓にどのような影響を及ぼしているのか
中東各地で起きている紛争は、急速な人道危機を引き起こしています。暴力が激化する中、市民は避難を余儀なくされ、生計手段は断たれ、食料へのアクセスも、一夜にして困難になっています。多くの人びとにとって、これは長年の経済的困難や紛争、避難生活にさらに追い打ちをかけるものであり、飢餓を防ぐ余力はほとんど残されていません。
その影響は、暴力の被害を直接受けている地域にとどまりません。中東は世界のエネルギー供給、輸送、貿易システムにおいて重要な役割を果たしています。燃料供給や海上輸送ルート、市場が混乱すると、その影響は外側へと広がり、地域をはるかに超えて飢餓リスクを高めています。
情勢悪化はこの地域の食料アクセスに、どのような影響を及ぼしているのか
紛争は食料安全保障に、即座にかつ具体的な形で影響を及ぼします。
- 避難:人びとが仕事や土地、市場から切り離されます。レバノンでは大規模な避難が深刻だった経済危機をさらに悪化させており、すでに何百カ所もの避難所が開設されています。
- 供給ライン: 治安の悪化やインフラの損壊により、食料が店に届きにくくなり、人びとが食料にアクセスすることが困難になっています。ガザでは最近の情勢悪化によって、食料アクセスが著しく妨げられ、国境閉鎖がさらに供給を圧迫しています。
- 価格の急騰: 国境や市場の混乱によって食料価格、特に生鮮食品の価格が急激に上昇しています。限定的にアクセスが再開された地域でも、依然として価格は高く、供給は制限されたままです。イランでは食料インフレが高いため、人びとが新たな衝撃に耐える余力がほとんど残されていません。
なぜ中東の紛争は、地域外の飢餓にまで影響を及ぼすのか
今回の情勢悪化は、世界の燃料供給と海上輸送の中心となる地域で起きています。これらのシステムが混乱すると、食料や燃料、さらには肥料などの物資を輸送するコストが劇的に上昇する可能性があります。
人道支援のサプライチェーンは、新型コロナウイルス感染症やウクライナ戦争以来、最も深刻な混乱に直面しています。主要な海上回廊における安全保障上のリスクにより、すでに遅延やルート変更が発生しており、命を救う食料支援を届けるための輸送コストも急激に上昇しています。
燃料や輸送のコスト上昇は、食料システム全体に波及し、中東から遠く離れた地域の市場における価格上昇を引き起こしています。
なぜ世界で最も脆弱な国々が最大のリスクにさらされているのか
食料や燃料、肥料を輸入に大きく依存している国々は、世界的な価格変動の影響を特に受けやすい状況にあります。サハラ以南アフリカの一部地域では作付期に入った農家が、栽培に必要な作業ができない可能性があり、その結果、収穫量の低下や食料価格の上昇につながるおそれがあります。わずかなコスト増でも、脆弱な人びとは危機に追い込まれかねません。
中東の情勢悪化による波及効果は、アジアの一部地域にも及んでいます。多くが輸入に依存し、すでに家計の購買力が逼迫しているためです。アフガニスタンでは今回の緊急事態が、パキスタンとの紛争や2025年に発生した2度の大地震など、脆弱な人びとに重くのしかかる複数の危機にさらに追い打ちをかけています。情勢の悪化が続けば、イランにいるアフガン人が帰国を余儀なくされ、その結果、帰国先で食料へのアクセスに苦しむ可能性もあります。
こうした圧力が重なり、より広範な世界的食料危機が強まっています。紛争、気候変動による極端な現象、経済的ショックが重なり合うことで、飢餓は過去最悪の水準へと押し上げられているのです。
WFPは中東紛争とその影響に、どのように対応しているのか
WFPは豊富な緊急事態の経験を生かし、非常時の対応計画を立て、備蓄食料を使って迅速に対応を始めました。たとえばレバノンでは、今回の紛争が始まって最初の2週間で、23万人に対して食料と現金を組み合わせた支援を行い、100万食以上の温かい食事を提供しました。
影響を受けている各国で、WFPは状況に応じた食料や現金による支援を行っています。レバノンやイランでは、市場は機能していても避難やインフレが人びとの購買力を低下させています。人びとが地元で食料を購入し、基本的な食生活を維持できるよう、現金支援を拡大しています。一方、アクセスが著しく制限されているガザでは、引き続き最も脆弱な人びとに向けて食料支援を提供しています。
WFPの活動で極めて重要なのは、人道支援のサプライチェーンを世界規模で維持し続けることです。その中心となるのが、現地で活動するすべての人道支援団体との調整、施設の共有、サービス提供、専門的助言の共有であり、WFPは人道ロジスティクス・クラスターの主導機関としてこれを担っています。輸送ルートが制限される中でも、WFPは輸送経路の再設定、代替回廊の特定、優先度の高い物資配送によって対応を進化させており、コストの上昇や混乱にもかかわらず、必要とする人々に命を守る食料を確実に届けています。
情勢悪化が続いた場合、どのようなリスクがありますか
情勢の悪化が続き、燃料価格が高止まりした場合、世界の飢餓に及ぼす影響は深刻なものとなり得ます。WFPの分析によると、食料と燃料の価格上昇、そしてサプライチェーンの混乱によって、新たに4,500万人が深刻な飢餓に追い込まれる可能性があり、世界全体では記録的な3億6,300万人に達するおそれがあります。
同時に運営コストの上昇と極めて深刻な資金不足が、人道支援の対応にさらなる負担をかけています。WFPの輸送コストはすでに急騰しており、その結果、限られた資源では購入・配送できる食料が減少しています。
予測可能なアクセス、安全に守られたインフラ、そして緊急の資金が確保されなければ、世界で最も脆弱な地域のいくつかで達成されていた飢餓対策の成果が急速に崩れかねません。今すぐ行動を起こし、食料へのアクセスを守り、避難を余儀なくされた人びとを支援し、人道支援のサプライチェーンを維持することで、より深刻な世界的飢餓危機を防ぐことができます。