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中東で紛争激化の中、WFPは食料供給を続けるために行動しています

中東での紛争が激化する中、世界食糧計画(WFP)は、ここ数年で最も複雑な緊急対応の一つを展開しています。私たちはカイロにいるフィールドサポート責任者のアイマン・ソウェイラム氏に、供給網が大きく混乱している状況にもかかわらず、WFPがどのように緊急支援の食料を輸送しているのか、そして同機関がどのようにしてこれほど大規模な緊急事態に備えてきたのかについて話を伺いました。
, Suzanne Fenton
People carry WFP food parcels inside a distribution site, as organized assistance reaches households affected by ongoing conflict in area today safely.
現在の紛争以前から、レバノンはすでに紛争と経済危機により緊急の食料支援を必要としていました。これはWFPとUNICEFが、ベイルートからルメーシュへ食料を輸送するオペレーションでも同様です。 Photo: WFP/Mohammed Awadh

WFPが直面している最大の課題は何ですか?

WFPが直面している最大の課題は、世界の輸送市場が混乱していることです。イランとオマーンの間にあるホルムズ海峡は湾岸地域で唯一の海上通路ですが、現在閉鎖されています。また、船舶はエジプトにある重要なスエズ運河を避けて航行しています。この状況により大きな滞りが生じ、とりわけ燃料費が大幅に上昇しています。これは、世界的な規模でトラック輸送や海上輸送の業務に影響を及ぼしています。加えて、私たちは現在、オマーン南部のサラーラ港にある21,000メートルトンの小麦を搬出するための作業を進めています。

航空輸送もまた、通常のルートで大きく混乱しています。これほどの規模で、空港が閉鎖されるとは想定していませんでした。1か国か2か国が自国の領空を閉鎖することには慣れていますが、複数の国が、しかもドバイやドーハといった主要な地域拠点を閉鎖することはこれまでありません。今回の危機は世界の食料価格を押し上げており、脆弱な立場の人々に深刻な影響を与え、より多くの人々を食料不安へと追いやっています。これは、COVID-19の流行とウクライナ戦争の開始後に起きた2022年の世界食料危機を思い起こさせる状況です。

この規模の危機では、まずどのような初動対応が必要になりますか?

危機発生初日、WFPのサプライチェーン専門家のチームが、緊急時に不可欠となる栄養価の高い食品(特に命の危険にさらされている子どもたちにとって極めて重要な食品)を、これまでの主要輸送ルートであるイランを経由せずに、欧州からアフガニスタンへ届ける方法の検討を始めました。これは非常に難解な作業です。

スエズ運河を通ることもできず、南アフリカの希望峰を回ることも不可能です。なぜなら、そのルートでは約20日もの追加時間が必要になり、私たちにはその余裕がないためです。そこで私たちは、海路、河川、道路、フェリー、鉄道、トラックといったさまざまな手段を組み合わせた複数のルートを分析しました。その結果、地中海、黒海、カスピ海を経由する輸送ルートを設計し、食料支援を滞りなく届け続ける体制を確保しました。

供給ライン(パイプライン)を止めることは絶対にできません。止めてはいけないのです。

Shoppers select fresh vegetables at a busy market.
2026年2月、ガザのディール・アル=バラで食料を買い物する女性。中東での紛争が食料価格を劇的に押し上げています。Photo: WFP/Maxime Le Lijour

紛争発生から約1週間が経ち、WFPの対応はどのように進展していますか?

私たちはトルコに拠点を置き、多数のサプライヤーを抱えるこの地域向けに、緊急対応用の備蓄をすでに準備していました。紛争発生後72時間以内に、レバノンへ25,000個の即食のパッケージを送付しました。1つで1家族が2週間食べつなぐことができます。

またシリアでの活動拡大を進めるとともに、レバノンからの国境移動を監視し、人々がトルコやイラクへ避難し始めた場合に備えて、イランとのすべての国境についても注視しています。並行してデータ分析や配送ルート設計、AIを活用した調達・物流のシステムを導入し、代替ルートを早急に見つけるためにパートナーと連携して取り組んでいます。

このような時期に、WFPのサプライチェーン業務が極めて重要であるのはなぜですか?

 私たちのパートナー団体や支援対象となる人びとは、WFPを頼り、そして信頼してくださっています。WFPができないようであれば、人道支援セクターの誰にも実行できないと彼らは理解しています。近年、私たちはデジタル計画、在庫管理、ルート計画、追跡システムといった分野に多くの力を注いできました。この取り組みによって、より効率的に、そして安全かつ期限どおりに食料を輸送・配布できるようになっています。こうした能力は、今回のような大規模な緊急事態においては言うまでもなく不可欠です。

WFPが主導するロジスティクス・クラスターでは、現地にいるすべての人道支援団体との調整を行い、物流施設を共同で使用し、十分なノウハウがないパートナーにはサービスを提供し、専門的な知見を共有しています。今回の対応では、シェルターや救援物資、衛生キット、水・衛生用品など、他の重要な支援物資を提供するパートナー団体に代わって、WFPが調整を担っています。

この規模の緊急事態をどのように予測し、計画しているのですか?

備えこそが、成功する緊急対応の第一歩です。私たちは「緊急事態が起きるかどうか」ではなく、「いつ起きるか」を前提にしています。毎年、サプライチェーンのチームは各国の道路、港湾、空港、その他の施設を調査・マッピングしています。人道支援コミュニティは、こうした評価結果に依存しています。

今回の緊急事態に向けて、私たちは6か月前に運用計画を策定しました。深刻度の異なる3つのシナリオに基づく計画で、現在の状況はその中で最も深刻なレベルに該当します。WFPは欧州連合(EU)の資金によって運営される「緊急事態備蓄基金」を管理しており、この基金のおかげで緊急事態の発生直後から即座に食料支援を届けることができます。現在も、支援対象となる人びとに向けて食料が輸送されています。

この緊急事態が続いた場合、WFPはどのように活動を適応させますか?

私たちは引き続き規模を拡大していきます。2週間以内に倉庫の数を増やし、輸送ルートを増やし、道路を走るトラックの数も増やす予定です。また食料の受け入れを開始し、必要に応じて現地市場で利用できる現金支給やバウチャーの提供も可能になる見込みです。

必要とあれば、UNHAS(国連人道航空支援サービス)を通じて、独自のフライト運航による支援到達も行えます。これは、世界的なCOVID-19対応の際にも実施した方法で、当時はすべての航空会社が運航停止する中、WFPが最大の運航主体となりました。

今後は、輸送回廊の拡大や船舶・航空機の増便、さらには鉄道輸送も視野に入れています。WFPには鉄道でアフガニスタンに支援を届けた経験があり、過去にはトルコからイラン、トルクメニスタンを経由してアフガニスタンへ到達しました。現在は、カスピ海を横断しコーカサス地域を通る新たなルートの可能性を検討しているところです。

 

A WFP logistics worker guides cargo being lifted by crane onto a ship.
2024年にイエメンのアデン港で、トラックへのコメ袋の積み下ろしを監督するWFPスタッフPhotos: WFP/Alaa Noman

最初にこの危機のことを聞いたとき、あなたはどこにいましたか?

土曜日の朝で、私はローマで息子をサッカーの試合に連れて行っているところでした。すると、携帯電話の通知が鳴り始めました。すぐに通常の緊急事態ではないと悟りました。最初の段階から事態は急速に悪化し、世界的な影響が出始めていたため、迅速に対応規模を拡大し、状況を先取りする必要があると感じました。どんな緊急対応でも、最初の数日は、その後の対応の進み方を左右する極めて重要な期間なのです。

皆が安定を求めてあなたに視線を向けるなか、どのように冷静に指揮を執るのですか?

私はウクライナ、パレスチナ、トルコ・シリア地震対応といった大規模な緊急事態に多く携わってきました。その経験は心に残り、確実に自分に影響を与えます。トルコでは、人びとがごく普通の生活から、わずか数分で命を守るための支援を必要とする状況へ追い込まれていく様子を目の当たりにしました。こうした場面では、「迅速に、しかし確実に」対応しなければならないという大きな緊張感を感じます。

パニック状態になることは何の助けにもなりません。パニックに陥れば身動きが取れなくなり、正しい判断ができなくなるからです。もちろん決断は素早く下しますが、それは十分な情報に基づいた判断です。

ドナーやパートナーに向けて、どのようなメッセージがありますか?

WFPは全面的に動員されていますが、十分な資源があれば、さらに多くの支援を行うことができます。今私たちに最も必要なのは、サプライチェーンという命綱を維持するための迅速な支援です。

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