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ウクライナ:「ここは小さなコミュニティですが、心はひとつです」

WFP国連世界食糧計画(国連WFP)とウクライナの町が提供する現金支援が、紛争で生活を破壊された家族を支えています。国連WFPのスタッフ、エドワード・ジョンソンがその家族を訪ねました。
, Edward Johnson
2人の大人と6人の子どもが一緒に座っている
ルスランさんとオレナさんは、何日もかけて安全な場所にたどり着きました。今は学校が一家の仮の住まいです。 Photo: WFP/Edward Johnson

セヴェリニフカの小学校の校長は、4月にすべての児童と教師を避難させました。彼らはまだ戻っていません。廊下に響く子どもたちのおしゃべりも、学校の鐘の音もない2日間の滞在中、かすかに聞こえたのは洗濯機の音と、2羽のオカメインコの鳴き声、そして時折聞こえるパグの鳴き声だけでした。

教室の机は、アイロン台や赤ちゃんの着替え台として使われています。小さな椅子はベッドサイドテーブルとして利用され、かつて算数の本が積まれていた場所には、メーブルという名のモルモットのための大きな青と白のケージが置かれています。

紛争によりウクライナ国内で避難している人は約710万人、近隣諸国に避難している人は約480万人(6月13日現在)。3月以降、ウクライナ中部の町セヴェリニフカには、続々と人びとが到着しています。ここは交通の便もいい牧歌的な地域で、評判も上々です。ウクライナ最大のラズベリーパイ(長さ18メートル)を作ったのがこの町で、住民たちはそれを4分で食べたといいます。

最近この町の評判は、その際立った寛容さで急上昇しています。8,000人の住民は、特に裕福というわけではありませんが、2,000人以上の避難民を自宅や学校に迎え入れました。理由は、それが正しいことと信じているからにほかなりません。現在、人びとは再利用された教室で寝泊まりし、生徒たちはオンライン学習に戻っています。

「自分たちがいつ彼らの立場になってもおかしくないと感じています」と、自治体行政の副責任者であるイエベンさんは言います。「だから今日、もし誰かを助けるチャンスがあれば、私たちのコミュニティのメンバーは皆、喜んでそうするのです」

到着した人たちは、ほとんど持ち物を持たず、大抵はバッグ1つで命からがら逃げてきた人たちです。それでも彼らはすぐに、衣服や洗面用具、そして重要なことですが、安らげる場所を手に入れることができるのです。

「ここは小さなコミュニティですが、心はひとつです」と校長のオレグさんは言います。

黒板の下には、住民から寄付されたベッドフレームやマットレスが置かれています。百科事典の本棚には、額に入った家族の写真、身分証明書、歯ブラシ、家の鍵など、人びとが家を出る際に身につけた私物が置かれています。

校舎の中央には食堂があり、セヴェリニフカの市民が交代で1日3食の食事を提供しています。食事は、学校の備品などと同様、地域からの寄付や、住民の寄付でまかなわれています。

ウクライナ流のおもてなしで、私でも3食いただきました。魚の衣揚げ、ディルポテト、野菜スープ、クッキー、そして飲み放題のラズベリーティーは、どれも栄養満点で心から満足できました。

新しい住民が到着すると、オレグ校長は彼らを市役所まで連れて行きます。そこでは、QRコードを読み取ることで国連WFPの資金援助を受けるための登録を行います。

2人の大人が隣り合うベッドに座っている
レナードさん(左)とアレクサンドラさんは、戦争が始まって以来、2度にわたって家を失いました。今ではこの教室を故郷と呼んでいます。 Photo: WFP/Edward Johnson

2018年にウクライナを離れた国連WFPは、今年ウクライナで再度活動を始めました。当面の優先課題は「私たちを必要とする人びとに確実に支援の手を差し伸べることです」と、緊急救援コーディネーターのマシュー・ホリングワース氏は説明します。

「私たちは、主に現金と食料の2つの方法で支援を行っています。5月に国連WFPは政府と協定を結びました。この協定は、私たちの支援を必要とする国内避難民やその他の人びとを特定する上で非常に重要なものでした。これにより、国連WFPは現金支給をわずか1カ月で6倍に増やしました」

「登録した人は、わずか72時間後に現金を手にし、食料だけでなく、薬や衣服も必要なだけまかなうことができるのです。また食料配給に関しては、一回限りの配給から、30日分の食料パッケージに移行したことも重要でした。国連WFPは現在、パスタ、米、油、肉の缶詰を提供しています。多くの家族がこれらの支援を頼りにしています。」

3児の母であるオレナさんは、激しい戦闘の中、安全なセヴェリニフカまで何百キロも車を走らせました。「子供たちのために洗剤やシャンプー、衛生用品を買いました。そして、残りは今のところ取ってありますが、この先どうなるかはわかりません」とオレナさんは語ります。

黄色いバスの前に立つ2人の大人
ルスランさんとオレナさんは、安全な場所を求めて運転したこのバスに、「バンブルビー」というニックネームをつけました。 Photo: WFP/Edward Johnson

「私たちはそのお金を住宅に使おうと思っています。住める場所を借りたいのです。この学校は一時的なものなので、自分たちの本当の場所を借りたいと思い、今部屋を探しています」

それぞれの家庭で必要なものが異なるため、国連WFPは現金による支援を行っています。そのお金は、彼らがそれぞれ必要とするサービスや商品の代金を支払う機会を提供するとともに、地元の企業や経済にも新たな通貨の注入をもたらします。

ウクライナでは3世帯に1世帯が食料不安に陥っており、ウクライナの東部と南部では2世帯に1世帯が食料不安に陥っている地域もあるそうです。現金は、最も助けが必要なときに、家族の食料の確保を強化するのに役立ちます。

国連WFPはこの3ヶ月間で活動を開始し、急速に規模を拡大し、紛争の影響を受けた家族に現金と食料を提供しています。6月末までに、国連WFPは毎月300万人以上の人びとの緊急なニーズに応えるための支援を行う予定です。

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