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世界遺産、内戦と飢餓の舞台に

マリ、学校に通えない子どもたち
, WFP日本_レポート

マリ共和国、モプティ州にあるバンディアガラは、切り立った断崖とドゴン人の石造りの村、斜面に沿うように建てられた家々が独特の景観を生み出し、ユネスコの世界遺産に指定されています。2011年まではマリ随一の観光地でしたが、今は訪れる人もなく、内戦と飢えが子どもたちの生活を脅かしています。

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世界遺産の村は、内戦で観光業が崩壊してしまいました。 Photo: WFP/Cecilia Aspe

モプティ周辺の地域は近年、武力衝突と天然資源の乱開発によって、世界遺産どころか治安の悪化と政情不安ばかりがクローズアップされるようになりました。

マリが内戦状態に陥った2012年以降、観光業は崩壊。2011年には欧州から16万人が観光に訪れましたが、2015年には3万5700人へと激減しました。ホテル業やレストラン、ガイド、土産物の職人など、観光への依存度が高かったことから、地元経済も落ち込んでいます。人々は失業し、それ以上に希望を失いました。

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屋根の形が特徴的なドゴン人の家(右奥)

武装勢力の進出によって、子どもたちも学校に通えなくなってしまいました。モプティ州では現在、474校が閉鎖されています。これは国内にある学校の6割以上に相当します。

開いている学校の一部で、国連WFPは温かい給食を提供しています。飢餓状態を少しでも解消し、なるべく多くの子どもたちに、学校に留まり勉強してもらうためです。

「給食がなければ、学校に来る生徒などいなかったでしょう」。教師の1人は言います。「特に女の子は。給食のおかげで、今、クラスは男女同数です」

学校給食が、子どもたちに残されたわずかな希望をつなぎとめています。

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もちろん、大人も厳しい生活を強いられています。地元の女性支援組織「YAGTU」の創設者、フィフィは「仕事が少ないので、若者は首都バマコやセグーなど国内の都市部、隣国のコートジボワールへと移ってしまい、地域から有能な人材もいなくなってしまいます」と嘆きます。

このため、国連WFPは地元集落やYAGTUと協力して、荒れた耕地の再生や水資源の保全、農作業の効率化など、気候変動や災害に強い地域づくりを進めています。

石混じりの痩せた土と地質の劣化によって、バンディアガラで耕作可能な土地は全体の10%を切っています。

ただある集落は、土地再生の努力を重ねて20ヘクタールを再生し、豆の一種であるソルガムとエシャロットの栽培ができるようになりました。

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YAGTUの創設者フィフィ(右端)と、集落の人々

ドゴン族の土地は、マリで2番目にエシャロットの収穫量が多く、国内だけでなく海外の市場でも販売されています。貧しいへき地の家族にとっては、最大の収入源です。

国連WFPは、村人が市場に野菜を売りに行きやすくなるよう道路を修復したほか、貯蔵庫の整備や、農作業を機械化するための投資もしています。

「国連WFPが貯水池や野菜畑の修復を助けてくれたので、私たちは1年1回だったエシャロットの栽培を二毛作、三毛作に変えたいと思います。もし適当な量の雨さえ降れば…。そうすれば、若者は忙しくなって、移住どころではなくなりますよね」。村に長く住む女性は、そう期待します。

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しかし今年、モプティ州を含むサヘル地域は、例年以上に厳しい状態にさらされています。

昨年の植え付けの時期に雨がほとんど降らず、農作物は大きな打撃を受けました。内戦も食料事情をさらに悪化させています。

さらに、最も食料が不足する「リーン・シーズン」の6~9月に入って、厳しい干ばつがこの地域を襲っています。この結果、サヘル全域で約580万人、マリでは93万人を超える人々が、食糧支援を必要としています。また同国内では47万人を超える子どもたちが、中度の急性栄養不良に陥っています。

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国連WFPはリーン・シーズンの間、サヘル地域で、最も弱い立場の人々を飢餓から救うための支援を実施します。

サヘルの子どもたちを救うため、皆様のご支援をお願い致します。

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