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COP27への道:台風ライから1年、フィリピンが学んだ教訓

フィリピンは現在台風シーズンを迎えている最中ですが、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)フィリピン緊急支援調整官が、近年で最も強い台風の影響と、今後必要とされることを振り返ります。
, Hannes Goegele

本記事は、2022年11月6日から18日までエジプトのシャルムエルシェイクで開催されるCOP27サミットに向け、国連WFPが毎週お届けしている気候変動に関する連載の一部です。

新型コロナウイルスの規制解除を祝うはずだった昨年のクリスマスの数日前、ミンダナオ島とビサヤ諸島に住むフィリピン人家族の生活は一変してしまいました。

台風22号で最も大きな被害を受けたブルゴスの町を歩く少年。Photo: WFP/Ivan Torres
台風22号で最も大きな被害を受けたブルゴスの町を歩く少年。Photo: WFP/Ivan Torres

島の南部と中部に位置する彼らのコミュニティは、北半球に上陸した史上3番目の強さを誇る台風に見舞われました。2021年に発生した超大型の台風ライ(フィリピン名「オデット」)は、1,200万人以上の人々に影響を与え、一晩で数百人が死亡し、数千人が家を失いました。

この台風の被害はもっと壊滅的であった可能性があります。犠牲者が比較的少なかったのは、最近改善された早期警報システムと、地域社会や政府による予防対策のおかげです。しかし、上陸から1年近くが経過し、2022年の台風シーズンを迎えても、この台風ライの長期的な被害から回復できない人が多数います。

台風ライへの緊急対応は、今後につながる重要な教訓となります。フィリピンは、毎年平均20の暴風雨や台風に見舞われ、今日では世界で最も災害の多い国と言われています。

このような異常気象は、次第に破壊力を増し、予測不可能になってきています。例えば、台風ライは数時間のうちに「熱帯性暴風雨」から「超大型台風」へと勢力を拡大しました。上陸後、この台風はこれまで台風が発生しにくかった地域に向かいました。

超大型の台風ライによって壊滅的な打撃を受けたシャルガオ島。Photo: WFP/Ivan Torres
超大型の台風ライによって壊滅的な打撃を受けたシャルガオ島。Photo: WFP/Ivan Torres

この9月、フィリピンは比較的大きな被害を受けずに済みました。台風ライと同様、台風ノル(フィリピン名「カーディング」)は数時間のうちに超大型台風に発達し、上陸時には勢力を弱めながらも、強風と豪雨をもたらしました。しかし、それでも台風は破壊の爪痕を残していきました。

気候変動と直接的に関連付けることはできませんが、太平洋沿岸に住む何百万人ものフィリピン人漁民や農民にとって、悪化する気候危機の影響はますます現実のものとなっています。

フィリピンにおける国連WFPの緊急調整官として、私は当局や人道支援パートナーと緊密に協力し、救援活動を拡大しています。私たちの目的は、緊急支援物資を動員して、弱い立場にある家族に健康的な食事を提供し、持続可能で長期的な回復を確保するために、彼らの家や小規模ビジネスの再建に貢献することです。

台風ライ、そして台風ハイエンからの教訓

フィリピン南部のディナガット島とシャルガオ島という最も被害の大きかった2つの地域で、台風ライの高潮と突風による被害の最初の映像は、これまでに記録された中で最も強力な熱帯低気圧の1つである2013年の台風ハイエンの壊滅的な影響を私に思い出させるものでした。

ハネス・ゲーゲレ国連WFPフィリピン緊急調整官。Photo: WFP/Haelin Jeon
ハネス・ゲーゲレ国連WFPフィリピン緊急調整官。Photo: WFP/Haelin Jeon

台風ハイエンの高潮は、沿岸部のコミュニティを守るために建設された防潮堤を粉々に破壊しました。沿岸の家々を完全に破壊し、最も頑丈な家屋の屋根さえも吹き飛ばしました。送電線と移動式電波塔は倒れ、ココナツ農園は見渡す限り跡形もなくなりました。

台風ライはさらに破壊的であり、台風ハイエンよりも100万以上の家屋に被害を与えました。台風ライがもたらした数十億ドルの損失はフィリピンのGDPの約1.45%に相当し、台風ハイエンによる損失よりも0.45%大きいものでした。

発生当初から、台風ライは明確なメッセージを伝えました。それは、「現場に立つことが急務だ」というメッセージでした。私は、災害管理の専門家を呼び集めて、中核となる国連WFPの対応チームを拡大しました。国連のために他の場所で働いている優秀なフィリピン人を呼び戻し、彼らのスキルと専門知識を母国で活用することができたのです。

私たちは最悪の事態に備えていました。台風ライに先立ち、国連WFPはフィリピン当局と協力して、災害地域にインターネット接続を提供するために2つの専門モバイルユニットを派遣しました。これにより、当局と人道支援隊員は、最も被害の大きかった地域から、破壊状況や主要なニーズに関する重要な情報を伝達することができました。

国連WFPは台風ライの対応のため、シャルガオ島に緊急物流拠点を設置しました。Photo: WFP/Ivan Torres
国連WFPは台風ライの対応のため、シャルガオ島に緊急物流拠点を設置しました。Photo: WFP/Ivan Torres

私たちは、台風ライの発生直後から、スリガオ市、シャルガオ島、ディナガット島の被災地に緊急物流拠点を設置し、フィリピン政府の対応をサポートしました。

その直後の数週間、国連WFPはフィリピン政府を支援し、米、ツナ缶、穀物飲料、台所用品や石鹸などの生活必需品が入った50万食分以上の食料パックを、被災した地域へトラックで運びました。

それから1年経った今でも、多くの人が人道的支援を必要としています。これまで国連WFPは、30万人以上の人々に米、現金、食料引換券を提供し、その他にも数万人の早期回復に向けた支援を行ってきました。これらの支援は、農民や漁民が生計を立て直すために不可欠であり、同時に地域経済や市場を活性化させるものでした。現在、これらの復興支援は終わりに近づいています。

前を見つめて

国連WFPは、緊急事態が発生すると真っ先に対応し、最も遠隔でアクセスしにくい場所にいる人々に救命のための食料支援を行います。このような活動ができるのは、政府関係者、緊急対応者、民間セクター、ドナーなど、さまざまな関係者と緊急事態の前後で築いてきた長期的なパートナーシップと相互信頼があるからです。

緊急活動では、迅速かつ大規模な支援を行うことが求められます。長期的な視野に立ち、最も弱い立場にある人々への支援を持続可能なものにすることも重要であり、これには継続的な取り組みが必要です。

国連WFPの食料支援で、新鮮な農産物を選ぶ男性。Photo: WFP/Zuhaina Abubacar
国連WFPの食料支援で、新鮮な農産物を選ぶ男性。Photo: WFP/Zuhaina Abubacar

台風ライから得た教訓は、将来の気候変動に適応するための実践的で実用的な解決策は、最も孤立し弱い立場にあるコミュニティこそ必要であることを示しています。

そのためには、輸送時間や物流コストを削減する必要があります。強力な災害管理機関と社会的保護のメカニズムを確保する必要もあります。そして、フィリピンの人々がより安全に暮らせるように、地域の能力、予防的な行動、持続可能なシステムにもっと投資する必要があるのです。

国連WFPはそれを実現するために、フィリピン政府およびパートナーとより緊密に協力していきます。

先日、私はシャルガオに戻ってきました。被害を受けたココナッツ農園や荒れ果てた護岸は、台風ライの破壊的な力をまざまざと思い起こさせるものでした。自然は再生し、人々は回復していきますが、変化を永続的なものにするためには、さらに多くのことを行う必要があります。

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