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人道支援における現金支援の力とは

国連世界食糧計画の新たな現金支援ポリシーが困難に直面する人びとの未来をどのように支えているか
, Gabrielle Menezes
Reham in Supermarket
リハームさん。ヨルダンの首都アンマンのスーパーで。Photo: WFP/Gabi Menezes

毎月、ヨルダンに住むリハームさんは国連世界食糧計画(国連WFP)から受け取った現金の大半をお母さんに渡し、家族の食料品を買うために使っています。そして、その残りの少額を、教師になる夢を叶えるために貯金しています。

ウクライナでの紛争から逃れたサーシャさんとジュリアさんは、国連WFPから受け取っている現金を家賃や娘の食料を購入するために使っています。

この2つのストーリーは、いかに現金支援が最も困難な状況にいる人びとを支え、彼らが支援を必要としなくなる未来を築くためにどう役立っているかを伝える例です。

国連WFPの新たな現金支援ポリシーは、これまでの10年間の経験に基づき、人びとに現金支援を届けるための最もよい方法や長期的な経済的な自立や女性のエンパワーメントを進める上での基礎を築くベストプラクティスを提示しています。現金支援は国連WFPの予算のうち35パーセントを占めており、昨今のデジタル技術や電子マネーの台頭により、国連WFPは支援の届きにくい場所に住む人びとにもお金を送金する新たな手段を得ました。

2022年、国連WFPは72か国の5,600万人以上に33億ドルの現金を支給しました。2009年の現金支援額がおよそ1,000万ドルだったことを考えると、これは大幅な増加です。しかし、現金支援の本当の力は、金額以上の価値があります。

動画:現金支援が持つ力
 

人びとに選択肢を与える

キシンバさんと家族はコンゴ民主共和国で起こった紛争から逃れてきました。彼女たちがもともと住んでいた土地に戻った時には、家は全焼し、農作物も全滅していました。しかし、現金支援のおかげで、彼女は受け取ったお金の一部を家の修理に使うことができました。

Kisimba in a field
コンゴ民主共和国のトゥンワ地域にあるキシンバさんの畑で。Photo: WFP/Arete/Fredrik Lerneryd

「食料と現金であれば、私は現金を選びます。全てを失ってしまったからです。現金であれば、自分たちが必要としている物に対応できます」と、キシンバさんは言います。

国連WFPが支給している現金のほとんどは食料に使われています。しかし、国連WFPは、人びとが家賃や医療費など、食料以外の緊急なニーズがあることも認識しています。国連WFPは現金支援の使い方について、彼らが最も必要とする使い方をすると信頼し、その選択を尊重しています。

現金支給を受け取ってから最初の8ヶ月で、キシンバさんの家族は必要な分の農作物を育てることができました。最終的に、彼女は畑に農作物を植え替えるために新しい人を雇い、家畜を購入することができました。

女性の経済的エンパワーメント

現金支援における最も興味深い変化の一つは、国連WFPが女性への支給を優先していることです。女性の経済的自立なくしては、世界の飢餓に終止符を打つことはできません。女性の手元により多くの現金を渡すことは、国際経済に数兆ドル追加することに繋がり、理にかなっています。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、人道的な現金支援を直接女性に支給することで1億人の女性を貧困から助け出すことができると推測しています。貧困が減少すれば、飢餓も減少します‐これは国連WFPのミッションです。

干ばつに見舞われたソマリアでは、ハリマさんが電子マネーで毎月支給されたお金の一部を貯金し続け、ことができました彼女はこの貯金と融資を得て、彼女と家族が住む難民キャンプで小売店を立ち上げ、成功させることができました。

ソマリア:ハリマさんのインタビュー動画

国連WFPは他の女性たちにもハリマさんのように経済的自立を実現してもらいたいと、自分名義で作られた銀行口座の開設を勧めています。自分名義での銀行口座の開設は、融資や貯蓄といった他の金融サービスを利用するための入り口となり、小さなビジネスの立ち上げといった可能性も与えます。

このポリシーを通じて期待されることは、女性が自分名義の口座を持てるよう国連WFPが支援することで、彼女たちは政府や海外で働いている家族から、あらゆる種類の送金を受け取ることができるようになるということです。



国連WFPが女性に対する現金支給を行う理由

公共システムの支援

レバノンの首都ベイルートでは、アリスさんと家族がレバノン政府の社会保障制度を通じて現金を受け取っています。国連WFPは政府と協力して、およそ100万人に社会支援を提供しています。アリスさんにとって、支給日までの日々は大変なものです。

WFP cash Alice
ベイルートに住むアリスさんと子ども。

 Photo: WFP/Gabi Menezes

「自分が無力で、時々息苦しくなります。家には何もなく、子どもたちはお腹が空いたまま眠る夜もあります。私はそんな時、ただ政府からお金が支給されるのを待つしかありません。」と彼女は言います。

レバノンにおける国連WFPの活動は、いかに私たちが各国政府と手を携えて、その国の社会保障制度を支援することが増えているかを示しています。国民の生活を保障することは政府の責任ですが、国連WFPは専門知識を活かして支援することができます。

2022年、65か国の政府が国の現金支給プログラムの立ち上げや強化のために、国連WFPに支援を要請しました。 

10年以上にわたる現金支援の活動は、現金支援における世界のリーダーとしての国連WFPの評価を確固たるものとしています。国連WFPは支援が行き届きにくい場所に住む人にも人、お金を届ける専門知識を培ってきました。政府、民間企業、また他の国連機関とのパートナーシップのおかげで、現金支援は新たな段階に移行することができ、人々が自立して生活できるような変革をもたらすことができます。

電子マネーを受け取っているシリア難民の一人はこう言いました。「強さとは、自分で自身を助けることであり、自立することであり、そして他の人に手を差し伸べてもらう必要がないことです」

国連WFPの現金支援についての詳細はこちらから

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