フィリピン:コロナ後の学校に子どもたちを呼び戻す、ファーム・トゥ・スクールの給食
学校のある日になると、ビサン小学校の前には100人の子どもたちが集まり、近くにある材料で作った2つの小屋と地元自治体から借りたコンクリートの建物からなる、3つの不釣り合いな構造の教室に駆け込みます。
「素敵というほどではないですけど、何もないよりはましですね」こう語るのは、ここタリサワの山岳地帯にあるバランガイ(村)の教師、メアリー・ジーン・ディガンさんです。この地域のもう一つの学校は数時間の距離にあるため、地域社会は教室を建設するために資金を出し合いました。「私たちが何とかしなければならなかったのです」と彼女は言います。
しかし、子供たちのにぎやかな足音が聞こえる日もありますが、そうでない日もありました。
「子どもたちは頭を下げたまま授業を受けていました。」メアリー・ジーン先生は話します。「授業に参加するどころか、手を挙げる気力すらありませんでした。朝食も夕食もとらず、一番最近の食事は前日の昼食という子もいました」。
このような飢餓と栄養不良に関する問題は、フィリピンの中でも最も貧しい地域のひとつである、南部のバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治区(BARMM)で重要な問題になっています。
数十年にわたる紛争が今なおBARMMのコミュニティを後退させ、命と生活を脅かしています。さらに気候変動も追い打ちをかけ、2022年末だけでも、10月に台風ペングが大災害をもたらし、その2ヶ月後には絶え間ない雨がさらなる混乱をもたらし、特に農業に大きな打撃を与えました。
政府の報告によると、栄養不足は依然として公衆衛生上の懸念事項であり、BARMMでは45%の子どもが発育不良、つまり年齢に対して低身長と分類されています。この数字は世界で最も高い発育阻害率のひとつです。
国連WFPの「Fill the Nutrient Gap(栄養のギャップを埋めよう)」分析によると、低所得と食料価格の上昇が主な要因で、この地域の58%の世帯が健康的な食生活を送ることができないことが分かっています。そのため、国連WFPはBARMM政府と密接に協力し、食料の確保/入手と生計維持の機会を支援しています。
2022年、タリサワでは、地元政府と国連WFPが推進する「ファーム・トゥ・スクール(農場から学校へ)」給食パイロットプロジェクトが開始されました。現在、ビサン小学校の100人の子どもたちは、地元で採れた食材を使った健康的で栄養価の高い食事をとっています。中には生徒の家の裏庭で採れた食材もあります。また、保護者も毎週ボランティアで調理を担当しています。
「学校のある日の朝は、10時から調理が始まります」と、保護者会の会長であるナイリーン・アノタードさんは言います。「一週間の献立は決まっていて、野菜をたっぷり使った栄養満点のメニューです。食事はいつも温かい状態で提供されます」。
米や野菜、鶏肉などの食材は、自治体が地域の農家から調達します。また、地元の保健師や栄養士が献立の作成に協力しています。地元の役人や専門家、そして保護者が一体となった学校給食は、まさに地域ぐるみの取り組みなのです。
「これは、ウィン・ウィンの関係です」と、ブレンダ・バートン国連WFPフィリピン事務所代表は言います。「地元で食料を調達することで、子どもたちは健康的で持続可能な食事を楽しむことができますし、地元農家は、政府が彼らの生産物を購入することで、確かな収入源を得ることができます」。
「子どもたちのために料理ができるのは嬉しいことです」と、キッチンを手伝っている保護者の一人、カケン・ウンドゥさんは言います。「支援がなければ、このような普通の食事すら余裕はなかったでしょう。」
今日のメニューは、ライス、鶏肉、緑豆です。教室の間にある屋外の仮設キッチンで、焚き火をしながら調理をします。
上手にできました。カケンさんの長女でビサン小学校に通うジョセリンちゃんは「マサラップ!(おいしい)」と言います。そして、「弟にも持って帰ってもいい?チキンが大好物なの」とおねだりします。
ファーム・トゥ・スクール給食プログラムの試みは、これ以上ないほど良いタイミングで行われました。2022年11月にパンデミック規制が解除された後、子どもたちは暖かい食事が待っていると知って、前より学校に来るようになりました。
「大きな変化がありました。子供たちが喜んで授業に参加してくれるし、エネルギーもあふれています。学校は活気を取り戻すことができました」と、メアリー・ジーン先生は話します。
国連WFPは、このプロジェクトを支援するために、フランス政府、国連WFP協会、および民間セクターの複数のパートナーから多大な寄付をいただいたことに感謝します。