南スーダンに広がる絶望の3重苦: 紛争、気候変動、飢餓
ニャンチエ・チョンさんは、絶望の連鎖に陥っています。慢性的な暴力のために何度も家を追われ、洪水で家や作物、家畜が破壊された今、5人の子どもの母親である彼女は再び家を追われています。
チョンさんの苦境は、紛争、気候変動、飢餓の連鎖に陥っている南スーダンの多くの家族に共通するものです。
今年の5月以降、南スーダンでは38万人が洪水の被害にあっています。被災者の約75%はユニティ州とジョングレイ州で、季節性の早い雨のために河川が堤防や土手を越え、農地や貴重な収穫物を含む集落全体が水没しました。
何千人もの人びとが高台に避難しましたが、深刻な食料不足、清潔な飲料水の不足、蚊が媒介する病気の脅威に直面しています。中には木の葉を食べて飢えをしのぐ人もいます。
「堤防を作ろうとしても壊れ、作物を植えようとしても洪水で流され、たくさんの牛も失いました」と語るのは、ジョングレイ州アヨド郡の村、ゴルワイの自宅から逃げてきたチョンさん。
チョンさんと子どもたちは、5日間かけてアヨドの町まで歩いて行きましたが、道が通れないこともあって、困難で疲労する道のりでした。着るもの以外は何も持たず、可能な限り薪を集めて売って旅を乗り切りました。
WFP国連世界食糧計画(国連WFP)の緊急チームは、状況を把握するためにアヨド郡に派遣されました。これまでに7万人以上の脆弱な立場にある人びとに緊急に必要な栄養支援を行いました。
食料不安や栄養不良の深刻さや大きさを分類する世界共通の尺度である最新の総合的食料安全保障レベル分類 (IPC)では、アヨド郡はIPCフェーズ4の地域に分類されており、これは緊急事態の食料不安にあることを意味しています。
洪水による家屋、収穫物、家畜への被害や避難民の発生などの影響は、すでに脆弱な人びとの食料不安をさらに悪化させる恐れがあります。
国連WFPは、カトリック救援事業会 (Catholic Relief Services)や開発のためのキリスト教ミッション (Christian Mission for Development (CMD))と協力して、5歳未満の子どもや妊娠中・授乳中の母親の栄養不良を治療するための栄養補助食品を提供し、緊急のニーズに応えています。
「食料不足は大きな問題であり、この地域の栄養不良の主な原因となっています」と、CMDの栄養アシスタントであり、毎日洪水で避難した子どもたちを何十人も見ているクエス・ガイ・ボルは語ります。「家族は食べ物を買うことができず、多くの授乳中の母親も栄養不良で、赤ちゃんにも影響が出ています。」
季節的に洪水が多い国で、国連WFPは長期的な課題にも対応し、ジョングレイ州の地域コミュニティを巻き込み、洪水で決壊した堤防の修復や、家族が家に戻りや生計を立てられるように道路建設を行っています。
ジョングレイ州の州都であるボル市では、国連WFPがボランティアと協力して数ヶ月間、200箇所の堤防の決壊箇所と、洪水で被害を受けたボル ― バイディット ― ジャレ ― マビオル道路の93kmの区間を修復しました。これらの修復により、2020年の洪水で家を失った13,000人が家に戻ることができました。
今回の洪水は、2011年の独立以来、最悪の飢餓の危機に直面している南スーダンにとって、すでに困難な時期におこりました。人口の60%に相当する724万人が食料不安に陥っています。
国連WFPは、2021年に南スーダンで530万人以上に、緊急、栄養、生計支援プログラムを通じた食料・栄養支援を行う予定です。
国連WFPのジョングレイ州での緊急対応は、欧州委員会、イギリス、日本、アメリカからの寄付によって可能となっています。