ゴミ拾いの子どもたちの未来を変える給食
EXILE ÜSAさんは8~9月、国連WFPサポーターとして初めてホンジュラスを訪れ、支援現場を視察しました。ホンジュラスは貧困や経済格差のため、栄養状態の改善が著しく遅れています。ÜSAさんが見たホンジュラスの子どもたちを取り巻く環境と学校給食支援の現場をお伝えします。
収入1日5ドルの父、「娘は医者や弁護士に」
ホンジュラス西部・ラパス県にある巨大なゴミ捨て場。着古した洋服、空き瓶や缶など、多種多様なゴミが見渡す限り広がっていました。
大人も子どももその中で、売れそうなゴミを集めます。朝7時、すでにゴミ捨て場には数名の男性が大きな袋を片手にごみ山の中に立っていました。
そのうちの1人、25歳の男性は、3歳と1歳の娘を持つ父親です。小学校しか出ていない彼は、子どもたちには学校へ通い、将来ちゃんと働いてほしいと望んでいます。「娘たちには医者や弁護士になってもらいたい。でも貧しいから難しいと思います。今は小さな一部屋に家族で住んでいて、水道もトイレもありません」朝6時から夕方6時までゴミを集めても、1日5ドルほどしか稼げないといいます。
「教科書はナイフより大事」学びの場支える給食
前日に近くの小学校を訪れていたÜSAさん。校長先生から「生徒の多くが朝か夕方、ビンや缶などを拾い、業者に売って家計の足しにしています」と聞き、このゴミ捨て場を訪れました。「見た目も環境にも悪いけれど、これも人々の収入源になっているんですよね」と、状況の複雑さに思いを巡らせていました。
ホンジュラスは中米の最貧国の一つで、人口の約60%が貧困下で暮らしています。気候変動による干ばつの被害も深刻で、"ドライ・コリドー"と呼ばれる特に被害のひどい西部・南部は、十分な食料を収穫できていません。
ゴミ拾いで生きる多くの子どもたちにとって、給食は唯一、栄養が十分に摂れる食事です。そして、ともすれば終日ゴミ捨て場で過ごすことになりかねない子どもたちにとって、給食は学校へ通い続けるモチベーションになっています。校長のラウデス・アルキア先生は次のように語りました。
「給食のおかげで全員休まず学校に来ています。子どもたちの栄養状態も改善し、成績も向上しました。学校は子どもたちの健康を支え、人生で最も重要な、勉強や道徳を教えています。私はいつも『教科書は大きなナイフなんかよりも、ずっと価値がある。大事にしなさい』と伝えています」
地元野菜取り入れ栄養改善 欠席、退学も激減
学校給食を作るのは、ボランティアの母親たちです。国連WFPは、母親たちが安全で栄養バランスの取れた食事を作れるよう、研修を実施しています。
調理ボランティアの1人、ミカエル・バスケスさんは「朝食を食べてこない子どももたくさんいます。子どもたちが嬉しそうに給食を食べているのを見ると私も嬉しいです」と話します。
この小学校では2017年から、地元の小規模農家が育てた野菜を給食に取り入れ始めました。「野菜は小さく切ってスープに入れたり、炒めてみたりと工夫して給食に入れています。子どもたちは野菜の入った給食を喜んでいます」
野菜を取り入れた結果、栄養改善が進み、学校を休んだり退学したりする子どもも激減しました。
バスケスさんが子どもの頃、このような学校給食はありませんでした。お昼は牛乳やトウモロコシの粉を溶かした飲み物などしかなく、お腹をすかせて勉強続けたそうです。
また彼女は貧しかったため、小学校6年までしか学校に通えませんでした。4人いる子どもたちには、勉強を続けて専門的な職業に就いて欲しいと考えています。「これからも、子どもたちにできる限りのことをしてあげたいと思っています」
ÜSAさんは学校給食支援を振り返り、「保護者や農家の人たちなど、地元の人がみんなで子どもたちを支えている姿が素敵でした。嬉しそうに給食を食べていた子どもたちが、勉強に集中して自立する力をつけ、また村に還元してくれるという、いい循環ができているなと実感しました」と語りました。