局面を一変させる
コンゴ共和国の人里離れた場所にある健康センターから、栄養に関するデータを集めることは困難な問題として、よく知られていました。
医療従事者は、日誌を毎日手書きで記入しています。彼らは月に1回、地域担当官に提出するために情報をレポートにまとめ、可能限りの輸送手段を使って届けています。地域担当官は、地域毎にデータを取りまとめたうえで、概要を首都ブラザビルにある官庁局長に送ります。データの遅れは、通常5週間あるいはそれ以上にも及びます。
分析され共有されるころには、情報はすでに古くなっています。時には、情報が伝達の過程で失われてしまうこともあります。
関係者全員にとって、それはフラストレーションの溜まるプロセスでした。
現在、意欲的な国連WFP栄養課のスタッフと社会福祉のためにデータ活用を行う世界的NGOであるチャリタブル・アナリティクス・インターナショナル(CAI)のチームが、コンゴ政府と共にこの状況を変えるために活動しています。
世界銀行のデータによると、コンゴでは移動通信機器を所有している人の割合は、100人中、96人に上ります。通信環境は優れており、多くの人がスマートフォンを持っています。これが、最新の情報を運ぶ新たな手段の鍵となるのでしょうか。
Meza(メザ):局面を一変させるテーブル(表)
「Meza(メザ)」という解決策は中央アフリカの多くの言語で「テーブル(表)」を意味する言葉から名づけられ誕生しました。医療従事者はスマートフォンで日誌の画像を撮影し、専用のWhatsAppの番号に送信します。メザは、OCRを使って日誌を「読み込み」、データを機械によって読み取ることのできる整理された表に分類します。これで分析可能な状態となるのです。
現在、メザの試験プロジェクトがコンゴ共和国において実施されています。メザのチームは57人の医療従事者に対して、それぞれカスタマイズされた日誌(1冊は子供用、もう1冊は妊婦用)およびスマートフォンを提供しました。提供されたスマートフォンは診療所ごとに1台ずつです。週毎の通信料も提供し、各地域に適したネットワーク通信事業者(Airtel/MTN)を活用しています。国連WFPが緊急食料支援を実施している、プールおよびボウエンザ地域からの医療従事者は次のトレーニングを受けました。日誌およびスマートフォンの使用方法、週に1度の日誌の撮影、および専用のWhatsApp番号への送信です。
MMSからWhatsAppへ
メザは当初、マルチメディア・メッセージング・サービス(MMS)という電話回線を使ったサービスを用いて動作するよう計画されていました。医療従事者にとって電話回線にアクセスする方がデータ接続よりも容易であろうと考えられていたのです。しかし、地方のプロバイダーがMMSを提供しておらず、また特にコンゴでは孤立した地域においてはWhatsAppの接続環境がより広範囲になっているため、よりよい選択肢であることが判明しました。さらにWhatsAppのメッセージング・プラットフォームは、より勢いがあり、特に若い人びとの間で普及しているため、医療従事者たちが交流し情報を相互にやり取りする「メザ」グループを作ることが期待されます。
次のステップ
このアイディアには強い伝播力があることが判明しました。医療従事者たちは、データをより早く送れる可能性に大きな関心を持っています。誰もが自分が送信したデータが状況を改善することを望んでいるのです。また、提起されたアプローチは、彼らの労力を削減することにつながります。
今や、医療従事者たちは訓練を受け、重要なツールを与えられています。そのため、今後メザチームは、週ごとのデータ送信をチェックし、直接または地域スーパーバイザーを通じ、データを必ずしも定期的に送っていない、もしくは、困難に直面している診療所のフォローアップを行います。最も顕著に発生する問題についてはビジュアルガイドを通じて、メザのトレーニングを受けている職員に対し、WhatsAppを通じて共有されます。
とりわけ、データの正確性をモニターし保証するため、OCRの信頼性を評価することに焦点が当てられます。
大局的視野
コンゴ共和国において、5歳未満の子供たちの異なる形態の栄養不良は、深刻な公衆衛生上の問題を形成しています。発育阻害(年齢に比べて低身長)は21.3パーセントに及びます。さらに過体重(5.9パーセント)、および鉄分、ビタミンAならびにヨード不足も同時に発生しています。6カ月から2歳までの子供の6%しか最低限の多様性要件を満たした食事を摂取できていません。
性別と年齢によって分類された、栄養状態のリアルタイムデータの送信を確保するために、メザは栄養プログラムの正確な対象絞り込みと同時にコストの効率性、有効性及び公正性に貢献することを目指しています。