経済危機のスリランカで妊婦を支援する国連WFP
32歳のドゥシャンティさんは、コロンボのクッピヤワッタ妊産婦診療所で国連WFPの食料引換券を受け取る列に並んでいる妊婦の一人で、その列はどんどん伸びています。
「最近、私たちの生活はより厳しくなっています」と、診療所の外にあるコンクリートのベンチに他の女性たちと座って彼女は言います。「燃料不足や食料価格の高騰など、誰もが経済的苦境に直面しています。でも、私たち妊婦はもっと大変なんです」。
1948年の独立以来最悪の経済危機は、食料価格を90%上昇させ、燃料不足を引き起こし、生活と主要なセーフティネットプログラムを混乱させ、ドゥシャンティさんをはじめとする何百万人もの人びとを食料不安に陥れました。
国連WFPは、高騰する価格や穀物生産の減少、ウクライナ戦争の余波、主要物資の調達に必要な政府資金の不足から、同国で前例のない全国的な食料危機が発生すると警告していました。
現在、630万人、つまりスリランカ人の10人に3人が食料不安に陥っています。3分の2近くの家庭が、食事の量を減らしたり、栄養価の低いものを食べたりといった好ましくない対処法に頼っているのです。
妊娠中や授乳中の女性、5歳未満の子ども、障がい者などは、最も大きな影響を受けています。
実際、経済危機や新型コロナウイルスの流行で苦境が深まる以前から、スリランカの女性と子どもたちは、他の中所得国の同世代の人たちよりもはるかに高い割合で栄養不良に苦しんできました。
国連WFPは340万人に食料支援を行うことを目標としており、この対応に6,300万米ドルを必要としています。これには140万人分の食料、現金、食料引換券による支援が含まれます。
国連WFPはまた、既存の社会セーフティネットプログラムを支援する計画で、全国学校給食支援を通じて100万人の子どもたちに支援を行っています。またドゥシャンティさんのような妊娠・授乳中の母親と幼児に栄養強化食品を提供する政府プログラムを通じて、さらに100万人のスリランカの人びとに手を差し伸べています。
「弱い立場にある人びとやコミュニティに焦点を当てることは、人道危機を回避するための優先事項です」と語るのは、国連WFPの緊急対応活動の中心となっているインドゥ・アベイラットネ活動部長です。
コロンボの診療所に通う他の多くの妊婦と同様に、店で15,000スリランカ・ルピー(40米ドル)相当の食料品と交換できる国連WFPの食料引換券は、日雇い労働者の夫とともに高齢の両親の世話をするドゥシャンティさんにとって、待望の収入源となりました。
食料引換券の配布が始まると、ドゥシャンティさんたちは診療所の階段を上って1階のホールで自分の番を待ちます。多くは若く、初めての妊娠を経験している女性たちです。
クッピヤワッタ診療所のウデニ・デマタパクシュ特別看護師長は、「これまでは妊婦や授乳中の母親に『スリポーシャ 』を与えていました」と話します。スリポーシャの配給は、妊娠中や授乳中の母親、幼児に栄養強化食品を提供する主要な栄養支援プログラムですが、デマタパクシュ特別看護師長は、「1月以降、スリポーシャの配給は行われていません」と話します。
「現在、私たちは妊娠中の母親に(国連WFPの)食料引換券を配布していますが、これはとても貴重なものです」とデマタパクシュ特別看護師長は付け加えます。
スリポーシャの配給は、経済危機の影響を最も大きく受けた政府の支援プログラムの一つです。資金不足により中断を余儀なくされ、かつてこの制度に頼っていた女性や子どもたちにとって、健康と栄養面で重要なライフラインが途切れてしまいました。収入減やインフレと相まって、最も弱い立場に置かれた人たちの栄養不良のレベルがさらに上昇する可能性がありました。
さらに、クッピヤワッタ診療所の助産師の一人であるタルニさんは、妊婦たちが皮肉な現実に直面していることを指摘します。妊婦は、自分と胎児の健康のために食べるべき栄養価の高い食品のリストを渡されますが、これらの主食のほとんどを購入することができないというのです。
「多くの家庭が料理をしなくなり、質の悪い食事をいろいろなところから買ってきて、それを食べるしかないのです」とタルニ助産師は言います。「今は大変な時期なので、お母さんたちのことが心配です」。
国連WFPの食料引換券を受け取った女性たちは、その使い道を明確に決めており、以前は当たり前に購入することができた基礎食料品を購入すると言います。ある女性はパパイヤを買う予定だと言い、今ではパパイヤは食べたいけど買えないフルーツになってしまったと言います。「私は国連WFPの食料引換券でレンズ豆や果物などの健康食品を購入する予定です。私だけではなく、生まれてくる赤ちゃんのために」と、ドゥシャンティさんは言います。