パキスタンの洪水:政府が国連WFPへ緊急対応の支援を要請
国連WFPは、1000人近くが死亡し、3300万人が家を追われたパキスタンで、現地政府への支援を急速に拡大しています。
政府は、国家防災管理庁を通じて、非常事態を宣言し、被害の調査や洪水の被災者への人道支援の調整を行っています。
今回の洪水は2010年の被害より、大きな規模ですが、以前より「政府の対応能力が高くなっている」と国連WFPパキスタン国事務所のクリス・ケイ代表は話します。
BBCへのインタビューで、ケイ代表は、「こうした状況において、社会保障をの支援を提供しなければならない制度や体制からそれは明白です。」(無条件の現金給付による貧困削減を目指すベナズィール収入支援プログラム)
政府は、長年かけてデータベースを改善し、最も脆弱な人びとを特定し、洪水が発生する前に現金を支給することができるようになりました。
緊急時には、こうした制度が「必要としている人に最も迅速に、いくらかの現金支援を行える方法です。もちろんアクセスがあることが前提ですが、政府は多大な努力を重ねてきました」とケイ代表は続けました。
WFPのような国連機関は「情報を強化し、政府と共に、正確に誰が現金支援を利用できるようにするべきかを確認するため」の支援を行っています。現在は2万5000ルピー(112米ドル)の一回の現金支給が行われています。
「大きな額ではありませんが、確実に必要としているものを購入することができます。」
一方で、食料の輸送は、厳しい制約に直面しています。クエッタにある国連WFPの倉庫は、アフガニスタンに必要な食料を送る拠点となっていますが、木曜日に洪水によって孤立してしまいました。
職員は「通信手段が絶たれ、危険を知らせる術もなくなってしまいました。」
ケイ代表は、職員のうち何人かの家は流されてしまったと話し、「テントが切実に必要」となっていると続けました。
8月30日に国連は、1億6100万米ドルの支援の要請(Flash Appeal)を発表する予定です。そのうち国連WFPは、バロチスタン、シンド、パンジャブ、そしてカイバル・パクトゥンクワで100万人を対象に、重要な食料や現金支援を提供するために、3428万米ドルを必要としています。
ジュリアン・ハルネ国連常駐調整官兼人道調整官は、「気候変動に起因する大災害」を受けて、国際的な「負担の分担と連帯」を呼びかけました。
国連WFPは、被害の大きかったバロチスタンとシンドで、50万人近くに支援を届ける予定です。(国連WFPはすでにバロチスタンの5地区で4万2000人を支援)
しかし、洪水によって配給が停止しています。洪水で北西部にあるカラムの象徴的なホテルが金曜日に破壊されたほか、全国的なアクセスが制限されています。
カイバル・パクトゥンクワとパンジャブでは洪水が人びとの生活や生計手段を奪いました。100以上の橋と3000キロにわたる道路が崩壊、もしくは損傷し、80万頭近くの家畜が死にました。200万エーカーの穀物畑や果樹園も被害を受けています。
ハルネ常駐調整官は、被害を報告する地域が増えるごとに、病気や栄養不良が増加するとみられ、人道的状況はさらに悪化が予想されている、と話しました。
6月以降、モンスーンにの豪雨による洪水や土砂崩れによって、大規模な被害がパキスタン全土で出ており、過去数十年で「最も大きな困難」に直面している、とハルネは言います。
国連WFPのケイ代表は、人びとが「最も心配している」のは洪水による収穫への影響だと話します。
「パキスタンにおける今年の気候変動は、異常です。春がなく、冬から夏に突入しました。作付けした穀物の多くは効果的な発芽をする機会がありませんでした。」
「育っていた穀物が突然縮小し、期待されていた収穫のうち、ある程度は見込めなくなってしまいました。」
「そして今度は、収穫し、貯蔵できた穀物のうち大部分が流されてしまいました。今後の見通しは非常に心配です。」