ハイチ: 新型コロナウイルスによる食料品価格の高騰、そして豆が贅沢品になるまで
カリブ海に浮かぶ人口1,100万人のハイチでは、人口の半分近くが飢餓に直面し、5人に1人の子どもが慢性的な栄養不足に苦しんでいます。そのため支援のニーズは非常に大きいといえます。
国連WFPの発表によると、440万人のハイチ人が緊急の食料支援を必要としており、そのうち120万人が深刻な飢餓に苦しんでいます。
新型コロナウイルスの世界的大流行と、それに関連する規制によって悪化した食料価格の高騰が重要な要因です。
実際、国連WFPの最新レポート「一皿の食料のコスト 2020」によると、ハイチの労働者は1食に収入の35%を費やしています。これは、ニューヨーク州に住む人が昼食に74米ドルを支払うことと同等です。
そのため、私たちがインタビューをした2人の住民が話したように、ハイチの人びとがウイルス自体よりも飢餓を恐れている、ということは不思議ではありません。
ロゼナさんのケース
6人の子どもの母親であるロゼナさんは、安定した仕事を持っていません。
以前は小さな畑を耕していましたが、今では体が弱ってしまい、猛暑の中での重労働を続けることができなくなりました。
近所の人の洗濯物を取り次ぐことで、多い時には週に150〜200ハイチ・グールド(2〜3米ドル)の収入を得ることができます。しかし、彼女は最低でも1日に125グールド以下では生活ができないと言います。
「市場では、小さなカップ1杯のお米がかつては40グールドでしたが、今は50グールド以下では買えません」
昨年、ロゼナさんはご主人を病気で亡くされました。突然、高熱と激しい頭痛に襲われ、息を切らして倒れてしまったといいます。
ロゼナさんの家族の中で、肉体労働により収入を得ることができるのはご主人だけでしたので、家族の収入は途絶えてしまいました。
ロゼナさんが国連WFPや政府からの食料支援を必要とするのは今回が初めてです。
配布場所では、米と豆を各1袋、植物油を1本ずつ渡され、オートバイタクシーで持ち帰りました。
「国連WFPからもらった食料は、できるだけ手を付けず保存しておきます」と、ロゼナさんは言います。
「神様の助けがあれば、状況は良くなります。いつか、雨が降っても濡れない、より良い家を手に入れたいと思います」
食料価格は2020年末に低下したものの、現在は再び上昇しています。
特に、ハイチ人の70%が仕事や収入を失ったと報告されていることを考えると、最貧困層の人びとの生活はさらに困難になっているといえます。
2月、国連WFPは、新型コロナウイルスの世界的大流行の影響で経済的打撃を受けた70万人を支援するための大規模な食料支援プログラムの一環として、ドンドン地区の1,400世帯に米、エンドウ豆、植物油を配布しました。
レネさんのケース
レネさんは、自分の住むドンドン地区で、オートバイタクシーのドライバーをして生計を立てていました。しかし、交通事故に遭い、足を切断しなければなりませんでした。
それ以来、レネさんと妻のジョセリンさんは、3人の息子たちに栄養のある食事を与えることに苦心してきました。
失業率はこの1年間で32%と倍増していることから、ジョセリンさんが安定した仕事に就くことはこれまで以上に難しくなっています。
そこで彼女は、時間の許す限り、野菜やスパイスを買って売り歩くようになりました。
これにより、平均的な週には6米ドル(500ハイチ・グールド)、良い週には9~10米ドルの収入になります。
しかし、レネさんによると、米と黒豆だけで家族を1日養うには4米ドルかかるそうです。
そのため国連WFPからの食料支援はまさに生命線です。
二人は、近所の人たちの協力を得て食事をすることもありますが、自分たちが食べるものは自由に選べるようにしたいと思っています。
「もっとおいしいものが買えればいいのに」とレネさんは言います。「肉、野菜……いや、米や豆でさえ、たいていは私たちの手が届きません」
緊急資金
国連WFPは、政府と協力して、最も弱い立場に置かれたハイチ人90万人に食料と現金ベースの支援を行うため、緊急支援を拡大しています。
今年、国連WFPは最も弱い立場に置かれた23万人の人びとに食料や現金を提供し、国連WFPのヘリコプターで重要な支援と人道支援者を毎日遠隔地に運んでいます。
農村部だけでなく、食料難に苦しむ都市部であるポルトープランスやゴナイブでもこのような支援を行っています。
国連WFPは、2021年末まで人道的航空サービスを維持するために300万米ドルを必要としています。
国連WFPのドンドン地区での食料支援は、ハイチ政府が主導し、米州開発銀行の資金支援を受け実施されています。