グアテマラ:食料不安が高まる中、希望を届ける国連WFP
ブレンダ・ロペスさん(仮名)は夫のジーンズの脚を裏返しにして、できるだけきつく巻き上げます。夫のフアンさん(仮名) はそれらを2枚のシャツといくつかの下着と一緒に小さなグレーのショルダーバッグに押し込みます。バッグのファスナーを閉めると、彼は鏡で野球帽を整え、ベッドの端に腰を下ろして、コヨーテ(中央アメリカで密入国斡旋業者を指す)からの電話を待ちます。
ウクライナ戦争による物価の高騰、気候危機の影響、長引く新型コロナウイルスの大流行が、すでに貧しい人々の生活をさらに悪化させ、ロペスさんが住むセラム村からの移住の波を後押ししているのです。グアテマラの山岳地帯、フエフエテナンゴ県にある人口525人の農村であるセラム村は、周辺の村と同様に最大67%の村民が慢性栄養不良に陥っています。その結果、フエフエテナンゴ県は現在、米国への出稼ぎ移住者が最も多い県の一つであり、送金総額は首都グアテマラシティに次いで2番目となっています。
「貧しさのために家族を残していくのだと思うと、悲しくなります。生きて帰れるかどうかわからないから、寂しさと同時に多くの危険に直面する恐怖を感じます」とフアンさんは言います。「人生は、戦う準備が整うのを待ってはくれません。貧困から抜け出すために、強くなり、戦う勇気を持ち、他の国へ出稼ぎ移住することを強いられるのです。」
エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラ、ニカラグアのいわゆる「乾燥回廊」の国々から米国への危険な旅をしようとする移民には、いくつかの方法があります。多くは、わずかな荷物を持って徒歩で移動するか、数百人、数千人の集団で移動する「キャラバン」に参加します。
しかし、グアテマラで最も定着しているのは、別のもっと狡猾な仕組みです。フアンさんとその家族が流砂のように引きずり込まれたのも同じ仕組みでした。フアンさんは自宅を担保に高利貸しから約1万3千米ドルを借り、コヨーテに金を払って、米国への不法入国を3回試みました。私たちが会ったとき、彼はすでに捕らえられ、米国から2回強制送還されており、今回、3回目の最後の試みに着手しようとしていました。もし失敗すれば、彼と彼の家族は住む家を失うことになります。
「出国する時、コヨーテと取引して、いくらか金を渡しました」とフアンさんは説明します。「すぐに強制送還されました。しかし、家族のために残したお金と、旅のためにいくらか持っていく必要があったため、借金は残ります。その借金を払い、さらに担保となる家を失わないために、私は再び出稼ぎ移住することにし、神がお許しになるまでこれを続けることにしました。これが借金と貧困から抜け出す唯一の方法です。」
自由の女神、ジェット機、高層ビルの街並み、その上にフロリダ州マイアミと書かれたカラフルな壁画が描かれ、壁までもが「アメリカンドリーム」を語るセラム村のような場所では、この罠にはまる人は少なくありません。
しかし、気候の極端な変化、飢餓、出稼ぎ移住という容赦ない悪循環に陥っているセラム村や中米の乾燥回廊に、これに代わる方法が生まれようとしています。国連WFPは、新しい農業技術を導入し、貯水池を建設し、気候の変化に適応するための幅広いプロジェクトを立ち上げています。
農家のフェリペ・コックスさんは、妻のリラ・ガルシアさんと4人の息子たちと暮らしています。ところが2021年末、不規則な降雨やハリケーンの被害により、農業を営むだけでは家族を養うことができず、彼はアメリカへの出稼ぎ移住を決意しました。しかし、国連WFPのプロジェクトに参加した後、彼は自宅で家族を支え、養うことができるようになりました。このプロジェクトは、フェリペさんとコミュニティの土壌保全と家庭菜園を支援し、からし菜、コリアンダー、ラディッシュ、カリフラワーなどの野菜が生産されています。また、これまで1年に1回しか収穫できなかったジャガイモに代えて、2回収穫できる新品種も手に入れました。
私はフェリペさんと彼の息子たちの後を追って急な坂道を登っていきます。息が切れ、高地のため心臓がドキドキしながらも、前を行く彼の子供たちの姿が見えなくなるまで見ていました。やっとの思いで追いつき、一息ついてふと思いました。ジャガイモの品種の違いだけで、こんなにも違いが生まれるのかと。フェリペさんと彼の息子たちは、豊かな土壌から一握りずつジャガイモを収穫しています。余った分を地元のマーケットで売れば十分に家族を養うことができます。フェリペさんは、もう家を出ることを考えなくていいのです。